バーサーカー
ーー左翼
「アハァ……♡」
鈍い音と共に、ゴブリンの体が弾け飛ぶ。
蹴り一発。
骨ごと砕け、肉が地面に叩きつけられる。
「んっ……?」
血煙の向こう。
アイリスは、ぴたりと動きを止めた。
奥――
黒い塊のような軍勢。
その中心に。
「ナイトと……キングかしら?」
「ンフッ♡」
口元が歪む。
「ちょっとは楽しめそうねぇ」
――走る。
地面が抉れる。
一直線に、王へ。
ゴブリンナイトが前に出る。
盾を構え、隙のない陣形。
キングが、短く指示を飛ばす。
「へぇ……」
ガンッ!!
斧が叩きつけられる。
だが。
ドンッ――
流された。
完全に。
「……今の、流した?」
目が細くなる。
「技術まであるのねぇ」
次の瞬間。
槍。
剣。
横薙ぎ。
四方から同時に殺到する。
「でも――」
ニヤリ。
「甘いのよ」
ブンッ!!
もう一振りの斧が、唸る。
遠心力。
回転。
迫る刃を“ねじ伏せて”弾き飛ばす。
骨が折れる音。
腕ごと吹き飛ぶゴブリン。
血が、霧になる。
「ンフッ♡いい連携」
キングが手を上げる。
陣形が変わる。
包囲。
逃げ場を潰す動き。
「あら……」
一瞬、感心したように笑う。
「頭いいじゃない」
――その時。
影が落ちた。
上。
ワイバーン。
「うわっと♡」
急降下。
爪が迫る。
「小鳥ちゃんまで来たのねぇ――」
次の瞬間。
ドスドスドスドスッ!!!
空中で、止まる。
ワイバーンの体が。
無数の矢に縫い止められている。
一拍遅れて――
墜落。
ズドォォン!!!
地面が揺れる。
「……ンフッ」
アイリスは一瞥する。
「空は気にしなくていいみたいね」
――ピオニー。
「じゃあ」
視線を戻す。
真っ直ぐに。
王へ。
「メインディッシュ、いただくわ♡」
グルンッ!!
斧が回る。
両手。
回転。
空気が裂ける。
そのまま――
体ごと回る。
コマのように。
加速。
加速。
加速。
「――大車輪!!」
突っ込む。
ナイトが前に出る。
盾、重ねる。
壁。
だが――
ドゴォン!!
踏み砕く。
盾が凹む。
腕が潰れる。
そのまま――
“踏み台”
跳ぶ。
「邪魔♡」
空中でさらに回転。
遠心力が臨界を超える。
視界の中心に――キング。
「もらったぁ♡」
ズガァァァンッ!!!
斧が、叩き込まれる。
頭部。
潰れる。
砕ける。
飛び散る。
脳漿と血が、噴水のように吹き上がる。
一瞬、時間が止まる。
そして――
ドサァ……
王が崩れ落ちた。
「ほら」
血に濡れた顔で、笑う。
「頭潰せば、あとは雑魚でしょ?」
――その瞬間。
ゴブリン達の動きが、止まった。
統率が、消える。
「さぁて♡」
斧を担ぐ。
「後片付け、始めましょうか」




