薔薇と百合と菊
――右翼陣
最前列。
マダム、リリィ、マリーの三人が並び立つ。
その正面。
土煙を上げながら、ゴブリンライダーの群れが迫る。
「まずは――集めます」
マリーが一歩前へ出る。
巨大な盾を、地面に打ちつける。
「――ウォークライ!!」
ガンッ!!
響き渡る衝撃音。
同時に、雄叫び。
その声に反応し――
ゴブリンライダーの視線が、一斉にマリーへ向いた。
「来なさい」
ドドドドドッ!!
突進。
激突。
だが――
ゴンッ!!
弾かれる。
巨大な盾に、次々と叩きつけられ。
ゴブリンもウルフも、跳ね飛ばされていく。
それでも止まらない。
次々とぶつかる。
だが――
マリーは、微動だにしない。
「行きますわよ〜」
リリィが、ふわりと前に出る。
突く
「一閃。」
突く
「二閃。」
突く
「三閃。」
突く
「――死線。」
無駄のない動き。
狂いのない軌道。
ゴブリンの喉を。
ウルフの心臓を。
正確無比に、貫いていく。
その姿は――まるで舞踏。
血の上で踊る、優雅なダンス。
「貴方がたに、この死線は超えれませんよ。」
……一拍。
ドサッ
ドサドサドサッ
遅れて。
一斉に崩れ落ちる。
「あら、マダムはお年かしら?」
「まだ、のんびりしてるわよ」
リリィが微笑む。
「ホッホホ――って、おいコラ餓鬼!!」
マダムの口調が崩れる。
「誰が年寄りだ!! こちとらまだ現役だぞ!!」
「まぁ、こわい」
「マダム、お口が汚いですわ」
「……ゴメンあそばせ」
咳払い一つ。
何事もなかったかのように、淑女へ戻る。
その間にも――
マリーが引き付け。
リリィが削り。
確実に、敵を一箇所へと“集約”していく。
そして。
「――行きますわよ」
マダムが、軽く膝を曲げた。
次の瞬間。
――跳んだ。
あり得ない高さ。
重厚なドレス。
高いヒール。
それらすべてを無視するかのように。
空へ。
「――メテオ」
巨大なハンマーを、振りかぶる。
そして――
投げた。
――ドゴォォォンッ!!
着弾。
爆発。
魔導士の魔法を凌駕する衝撃。
土が弾け、空気が震え、衝撃波が広がる。
その中心にいたゴブリン群は――
跡形もなく、消えた。
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「は……はは……」
「何だよ今の……」
「魔導士の一撃より上だろ……」
冒険者達が呆然と呟く。
「……あんな格好で、なんで飛べるんだよ」
マダムのドレス。
骨組みで膨らませたバッスル。
高いヒール。
どう考えても、戦闘向きではない。
リリィも同様だ。
身体に密着したマーメイドドレス。
足の可動域は制限されるはずなのに――
その動きは、誰よりも優雅。
マリーに至っては。
身の丈ほどの大盾。
人が扱える重量ではない。
だが――
「ハンッ」
マダムが鼻で笑う。
「お姉様が言ってるでしょ?」
三人が、同時に微笑む。
「「「綺麗は我慢よ」」」




