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菖蒲と牡丹と桜


――左翼陣


先頭に立つのは、アイリス。


その後方にミトマの冒険者達が構えている。


さらにその後方――即席の櫓の上。


ピオニーが静かに弓を構えていた。


冒険者達には、事前にギルドから厳命されている。


――花園のメンバーの前に立つな。

――取りこぼしを確実に狩れ。


(……取りこぼし、ね)


誰もが思っていた。


この数で、“取りこぼし”などで済むはずがない。


――ドドドドドッ!!


森の奥から、土煙を巻き上げて迫るモンスターの軍勢。


先頭は――


ゴブリンライダー。


ウルフに跨り、武器を振りかざしながら突進してくる。


数も、速度も、厄介極まりない。


---


――ドォンッ!!


次の瞬間。


爆音と共に、前列のゴブリンが吹き飛んだ。


魔導士達による一斉詠唱。


魔法の雨が降り注ぐ。


数は減る――だが、まだ多い。


その中へ。


一人、飛び込んだ。


「きたわ、きたわ、きたわぁ〜♡」


アイリス。


その目は――完全に“逝っている”。


両手には、常識外れの巨大なバトルアックス。


本来なら、一人では持つことすら困難な代物。


それを――二本。


軽々と振り回す。


クルリ。


クルクルと。


まるで踊るように回転しながら――


ゴブリンを、粉砕する。


肉が裂け、骨が砕け、血が舞う。


その回転は、やがて旋風となり。


周囲のゴブリンを吸い込み、巻き込み、叩き潰していく。


「素敵よぉ♡ もっと見せてぇ〜!」


「貴方達の……血の雨をぉ♡」


---


そのすぐ近く。


サクラは――ただ立っていた。


両手に刀を持ち、微動だにせず。


……次の瞬間。


消えた。


「――瞬歩」


「――無拍子」


気づいた時には。


すでに背後にいる。


「あらあら……死に目に、わっちの美しい姿すら見えぬとは……かんにんしておくんなし」


――ブシュッ


遅れて。


首が飛ぶ。


一体、二体ではない。


通り過ぎた軌跡にいたゴブリンが――


一斉に。


同時に。


首を失った。


---


その時。


空から、影が落ちる。


無数の矢。


サクラの周囲へ――雨のように降り注ぐ。


だが。


一本も、当たらない。


いや――


当てていない。


「…………ボウ家弓術」


櫓の上。


ピオニーが、淡々と呟く。


「【千手打ち】」


放たれる矢は、一人の射撃とは思えない数。


十人、いや、それ以上。


だがその全てが――


無駄なく、ゴブリンへと吸い込まれていく。


サクラは、その中を駆ける。


斬り、避け、潜り抜ける。


その動きに合わせるように――


矢が飛ぶ。


腕の隙間。


体の軌道。


視線の先。


全てを読み切り、配置される矢。


一本も無駄がない。


そして何より――


ピオニーのいる位置は。


本来、弓の届く距離ではない。


彼女の得物。


巨大弓【ワキュウ】による――


超遠距離狙撃。


サクラの斬撃と、ピオニーの射撃。


二つが重なり。


まるで――


サクラ一人が、広範囲を殲滅しているかのような。


完璧な連携が、そこにあった。



「………何なんだあの人達!」


「あんな格好で何でそんなに動けるんだ!」


特にサクラに至っては重い上に動きが制限される遊女の着る派手な「キモノ」だ。しかも「3枚刃の高下駄」動ける訳がない。でも目で追えない程早い。


ピオニーも弓には向かない振袖の「キモノ」を着ている。


アイリスはメンバーの中で一番高さの有るハイヒールを履いている。


「フフッ」


3人は同時に笑う


「「「美しさは我慢よ!」」」


「その分、鍛えれば良いのです」




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