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戦の詩


――ミトマ領都・城壁前


陣は明確に分けられていた。


中央にミトマ騎士団。

左右に冒険者。


戦い方が違う以上、同一陣形では機能しない。


森へ向けて、三層の防衛線。


その左右には――戦場の花園のメンバーが散っている。


そして中央。


騎士団団長の隣に立つのは――


オネイ・ロス。


遊撃として控えていた。


――静寂。


誰もが息を潜める。


――そして。


「GYAAAAA――!!」


大気を震わせる咆哮。


ドン、ドン、と――大地が揺れる。


「……来るぞ」


誰かが呟いた。


「オネイ様……よろしくお願いします」


騎士団団長が、低く頭を下げる。


「あら、本当にいいのね?」


オネイは微笑む。


「これは本来……冒険者に栄誉を譲るって事よ?」


「それで街の民が守れるのなら」


迷いのない答え。


「……わかったわ」


オネイ・ロスは、一歩前に出た。


そして――


歌い出す。


「行くわよ――《破歌》」


カンッ――


ガンッ――


戦士達が武器を地に打ちつけ、盾と剣を鳴らし、リズムを刻む。


それは、戦の鼓動。


やがて――声が重なる。


---


聞け。


勇気をもって戦い、

その命を燃やし尽くした者には――


必ず。


栄光の門が開く。


それは、逃げた者には見えず。

背を向けた者には辿り着けない。


血に塗れ。

刃を振るい。

最後まで立ち続けた者だけが――


辿り着く場所。


恐れるな。


死は終わりではない。

選ばれぬ者が、終わるだけだ。


お前が前へ出るなら――

その一歩は、無駄にはならない。


――問う。


「恐れるか!」


――恐れぬ!!


「退くか!」


――退かぬ!!


「何のために戦う!」


――誇りのために!!


たとえ、ここで倒れても――


その魂は。


「どこへ至る!」


――栄光へ!!


栄光へと至る!!


「打ち破れ!!」


――オォォォォォォォォ!!


---


――その時。


『いいゾ…【試練】を越える覚悟が出来たな』


不意に。


戦士達の“内側”に、声が響いた。


『【試練】を越える為に』


『俺様が力を貸してやる』


「「「……!?」」」


一瞬の動揺。


だが――


恐怖も、不安も。


すべてが消えた。


代わりに湧き上がるのは――


圧倒的な闘争心。


「……今、何か……」


誰かが呟く。


だが。


その“違和感”は、すぐに霧散した。


誰も――思い出せない。


ただ残るのは。


身体の奥から溢れ出す力。


「やってやるぞ!!」


「来やがれクソ魔物ォ!!」


雄叫びが、戦場に満ちる。


「お姉様の歌は――本当に良いわね」


マダムが、うっとりと目を細める。


胸に手を当て、ゆっくりと息を吐く。


「血が……騒ぐわ」


その声は穏やかで、だが底に滾るものを隠しきれていない。


「ええ……滾りますわ」


リリィが微笑む。


だがその指先は、すでに震えていた。


恐怖ではない。


昂揚。


「突きたくて、仕方ありませんの」


軽くステップを踏む。


まるで舞踏会の前のように――優雅に。


だが、その瞳は獲物を捉える肉食獣のそれ。


「ですね」


マリーが、静かに頷く。


盾を握る手に、力がこもる。


ギリ、と音が鳴るほどに。


「受け止めるのが……楽しみです」


その言葉と共に。


ドンッ!!


盾を地面に叩きつける。


衝撃が、足元から広がる。


「どれほどの重みか――試させていただきます」


三人の空気が、変わる。


先ほどまでの余裕。


それは消えていない。


だが――


その内側で。


獣が、牙を剥いた。



---


破歌それは


――“歌”ではない。


戦士職に必ず教えられる、大戦前の儀式。


その正体は。


神へ詩を捧げ、加護を引き出す――


大規模魔法。


だが人々は、それを知らない。


ただ士気が上がり、興奮によって力が湧いているのだと。


そう、思い込んでいる。


――今回、与えられた加護。


【恐怖耐性】

【身体強化(大)】


この儀式は誰もが扱えるものではない。


だが――


オネイ・ロスは違う。


その成功率は――ほぼ、100%。





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