オネイロスの過去2
オネイロスの話を聞き終え、レオンはしばらく言葉を失っていた。
――神の力。
まるで御伽噺だ。
そんな空気の中――
「あーん♡」
「もぐもぐ……美味し〜!」
横では、ミリアがマダムにデザートを食べさせてもらっていた。
(いいなぁ……俺もデザート食べたい)
現実は平和だった。
「じゃあ、その……バケモンみたいな回復を手に入れて、冒険者になったんですか?」
「言い方!また、殴られるよ!」
アリスがすかさずツッコむ。
「“バケモン”はちょっと悪いよ。“超回復”とかにしようよ」
「あら、アリスちゃんを見習いなさい」
オネイロスは満足げに頷く。
「でも、冒険者になったのはまだ先の話よ」
「傷を気にしなくなった私は――負けることがなくなったわ」
「最終的には団長より強くなって……」
「私が騎士団長になったの」
「その頃に、“人類最強”なんて呼ばれ始めたわね」
「えぇ!?」
レオンの声が裏返る。
「ちなみに、その時の騎士団長――先代ね」
オネイロスが顎で示す。
「そこでミリアちゃんにデザート食べさせてるマダムよ」
「うぇ!マジで!?」
レオンは思わず二度見した。
「あらぁ?もう一口いく?」
「はいですわぁ〜♡」
どう見てもただの甘やかしおばあちゃんである。
ミリアの言葉使いがおかしい
口調がうつってる
「リリィとマリーも騎士団出身よ」
(そりゃ最強パーティーって言われるわけだ……)
出自が強すぎる。
一方その騎士団出身者たちは――
「女の子の孫っていいわよねぇ〜」
「わかる〜私も娘ほしいの〜」
「お嬢様にお仕えするのも素敵ですわね」
完全に別世界だった。
「そんな時にね」
オネイロスがふっと話を戻す。
「実家から、“次期当主を弟に譲ってほしい”って懇願されたのよ」
「ちょっと待ってください!」
レオンが再び食いつく。
「オネイ様……もしかして、お貴族様ですか?」
「そうよ」
あっさり肯定。
「元の名前はロータス・ガントレット。南方のガントレット家」
(設定盛りすぎだろこの人……)
「私、結婚する気なかったし」
「家も続かないってことでね」
「“家のこと考えなくていいなら騎士団辞めよ”って」
「元々、家の箔付けで仕方なくいた部分もあったし」
「その時に、マダムたちも誘ったのよ」
さらっととんでもないことを言う。
(マダムたちの過去も気になるけど……)
(もう何から聞けばいいのかわからん……)
情報量が多すぎた。
「――話戻すわね」
オネイロスが視線をレオンに向ける。
「私の“超回復”は、そうやって手に入れた力」
「だから――違和感があるのよ」
少しだけ真剣な声。
「レオンちゃんの魔法」
「やっぱりそれ……本当に“魔法”なの?」
空気が変わった。
―――森の中層
木々の奥深く。
空気が、淀んでいる。
巨大な影が、ゆっくりと動いた。
――ドラゴン。
その周囲には、異様な数のモンスターが集まっていた。
ゴブリン、オーク、ウルフ、トロール、オーガ、サイクロップス…
本来ならば共存しない種族が、ただ一点を見つめている。
「……確かに感じる」
低く、重い声。
「人の里に、神の力を感じる」
ドラゴンの瞳が細められる。
ギリ、と牙が鳴った。
「探し出さねばならない」
「確かめねばならない」
「それが――世界に害ある存在かどうか」
その瞬間。
周囲のモンスターたちが一斉に動き出す。
まるで、命令を受けたかのように。
森がざわめいた。
何かが、確実に動き始めていた。




