トロちゃん無双
「あっ!あった」
アリスがしゃがみ込み、薬草を摘む。
薬草は摘み方で価値が変わるらしい。
依頼書にも細かく書かれていた。
「こういうのは慣れてる人じゃないと分からないよなぁ」
レオンが感心したように言う。
「数こなせば、誰でもできるよ」
アリスは手慣れた様子で薬草を袋に入れた。
「はい、いっぱい採れたよ!」
ミリアが嬉しそうに差し出す。
「あぁ……結構ただの草が混じってるね」
「えぇ~。いっしょに見えるけどぉ」
「似てるよね」
アリスは苦笑した。
順調に採取をしながら、中層へ向かって進んでいく。
その時――
「グギャッ!」
ゴブリンだ。
ちょっと前まで、金にもならないくせに手間のかかるモンスターだった。
だが今は違う。
トロちゃんの餌になる。
つまり、処理の必要がない。
「よっしゃ!餌が来た!」
レオンが嬉しそうに叫ぶ。
「レオン、キャラ変わってない?」
ミリアが呆れた顔をする。
「稼がないとトロちゃん破産しちゃうからね」
アリスが苦笑する。
「発動!」
レオンが魔法を放つ。
「グギャッ!」
「グオッ!」
「えっ?」
ゴブリンは泡を吹いて倒れた。
しかし――
トロちゃんが股間を押さえて震えている。
どうやら、自分がやられた時のことを思い出したらしい。
「ごめん。慣れて」
レオンは申し訳なさそうに言った。
ゴブリンから右耳と魔石を回収する。
残りはトロちゃんに渡した。
バキッ
バキッ
トロちゃんは、十秒とかからず食べ終えた。
「トロちゃんの食事風景はエグいな……」
レオンが少し引いた顔で言う。
「こりゃ狩りまくらないとな」
さらに奥へ進むと、ウルフの群れを見つけた。
六匹。
物陰に隠れて様子を見る。
「オスは二匹だけだ。四匹はメスだな」
レオンが小声で言う。
「トロちゃんの出番だね」
ミリアが笑う。
レオンが魔法を準備し、ミリアとアリスも詠唱を始める。
「発動!」
「アイシクルランス!」
「ライトニング!」
魔法が同時に炸裂する。
「残りを頼んだ、トロちゃん!」
「グオーー!!」
トロちゃんが突っ込んだ。
二匹を掴み、そのまま叩きつける。
さらに、ライトニングで痺れているウルフを殴り飛ばす。
――あっという間だった。
ウルフの群れは全滅していた。
「トロちゃん強っ」
レオンが素直に驚く。
「トロちゃんだけでも倒せたんじゃない?」
ミリアが言う。
「だね」
アリスも同意した。
「グオー!」
トロちゃんが誇らしげに吠え、ウルフをレオンの前に差し出す。
レオン達はせっせと解体する。
毛皮、牙、魔石を回収。
残りはトロちゃんの餌だ。
トロちゃんは三匹をぺろりと平らげた。
残りはミリアが凍らせ、トロちゃんに持たせる。
「とりあえずトロちゃんのお腹は膨れたみたいだから、備蓄分を狩ろう!」
レオンが言った。
しばらく歩く。
すると、トロちゃんが急に前に出た。
何かの気配に気づいたらしい。
次の瞬間。
ドドドドドドド!
クレイボアの群れが突っ込んできた。
「魔法が間に合わない!」
その瞬間――
バコン!
グチャ!
ドン!
グチャ!
トロちゃんが迎え撃つ。
突っ込んでくるクレイボアの鼻に正拳突き。
そのままもう一匹を拳で頭を地面に叩きつける。
横を抜けようとした二匹を、まとめて蹴り飛ばした。
クレイボアは、俺たちの背丈より大きい。
それを――
一人で殲滅した。
「ヤバ……強すぎ!」
レオンが思わず声を漏らす。
「トロちゃんと出会った時、レオンの魔法がなかったら普通に私たちやられてたね」
ミリアが言う。
「こんな戦力を一般の学生に持たせていいのかな」
アリスが呟く。
「レオン君、将来国に徴兵されるかもね」
「そんなの嫌だ!」
レオンは即答した。
■今日の収穫
薬草
キノコ
魔石(極小)×7
ウルフの毛皮と牙 6匹分
ウルフ肉 3
クレイボア 4匹




