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私の精霊はまさかのポメラニアン?~新米ハンターと賑やかパーティーが繰り広げる異世界冒険記~  作者: アインス
第4歩 南への旅

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コードの武勇伝『失恋』

「…派手にやったな」

「ソファもすご~い」


空に水龍を打ち上げて満足気な表情で席に戻る私たちをピエール夫妻が労ってくれた。


「やった事には賛成だが…

 明日から外に出れんぞ?」

「えっ?なんで?」

オリバーがあまりに真顔で言うので聞いてみた。


「考えてみるんだな。火竜の大群を撃退したのは誰か?本当のところを知ってるのはまだほんの一部だが、何(・)が(・)撃退したのかは国中の誰もが知っている」


――フェンリルの氷晶華《ダイヤモンドダスト》。


「まだ分からんか?あれだけの大群を一撃で葬れる人間なんかそうはおらんだろ。それも空中に氷晶華《ダイヤモンドダスト》を咲かせるような芸当でな」


「…あんまり覚えてなくて。

 …そんなに派手だったの?」


「覚えてない…か。まぁいい。じゃ今何をしたかは分かってるな?」

「夜空に水龍打ち上げちゃったんだよねぇ~」

「綺麗にできたかしらね?」

オリバーの真剣な会話を無視してノエルとセレナがグラスを手に取り祝杯を挙げる。


――!!もしかして!


「分かったか?あんなバカデカい水龍もどきを空に描くなんて、同じヤツ以外に有り得ないだろ?というか、空をお前らのキャンバスにするんじゃねぇ」


「オリバーよ。火竜を撃退した者―。それが今湾にいて、今度は水龍を打ち上げた―と。つまりこういう事か?」

「まぁ、普通はそうなるだろうな」


「ピエール大変!だったらこのまま岸に戻ったら、私たちの誰かがやったってバレちゃうじゃない!」


オリバーとピエールの会話を真剣な表情で聞いていたファニーが驚きの声を上げる。


「だからそう言っている。

 戻れば明日から外に出れんとな」


「そんなの分かってやったに決まってんじゃん」

「当然…ね」


みんなが一斉にノエルとセレナに顔を向けて「何を言っている?」状態だ。多分私の表情も同じはず。


「…説明してくれるんだろうな?」

目を閉じて腕を組み、冷静と情熱の狭間を行き来する、オリバーのなんとも言えない表情も最近見慣れてきた。

ふと視界の端でピエールたちがオリバーを見ながら肩を震わせて頷きあっているのが見えた。


――ファニー慣れるの早くない?


そんな様子をニヤニヤした表情で眺めながらノエルが口を開いた。


「多分ね、あんだけ派手にやっちゃったから、もうすぐここの兵士が来ちゃうと思うんだぁ」

「…楽しそうに言う事か?

 まあいい、続きを聞こう」


「だからね、さっき決めちゃったの」

「…何をだ?」


「ひとつはね、オロディア叩き」

「戦いに参加するのか?」

「そだね。何かするたんびに邪魔してくるじゃん?巻き込まれるじゃん?ハラたつじゃん?」

「なら根本を叩いてしまえばいい…か。お前らしいし、それについては賛成だ。だが他に何を決めた?」


「もひとつはね、このまま岸に戻ったら色々と面倒じゃん?だからさ…このまま消えちゃわない?」

悪戯っぽい笑顔を満面に浮かべながら問いかけるノエルと少しの沈黙…。


このまま彼女が言う通り連れ戻されたとして、そのあとの騒動は私にも何となく想像は出来た。

――あと正式な場が何とかって話もあったような…。


多分。というかみんな考えることは同じだ。

すぐに身支度を始め、それをしてやったりの表情で見守るノエル。

――いつかハメてやる。

多分この思いも、みんな同じ。




◇◇◇◇◇




どうやって岸に戻ったかは思い出したくない。

二度とやらないと思ってたのに。

ただひとつ。

今回は二本足で踏ん張れた。

「さっきのソファさ、”はっけよ~い”って言いたくなるようなポーズだったね」

「それどんなポーズよ?そんなことより、ファニー泡吹いてるじゃない」


ノエルが降り立った場所に私も着地した。

続いてセレナが酒瓶とグラスを持ったままフワリと舞い降りたかと思うと、ファニーを抱えたままのピエールを風でそっと包んだ。

ただファニーは当分目を覚まさないだろう。


背後から地響きが聞こえたすぐ後に、目の前の茂みから馬車を曳いたエルクが顔を出した。

「ねぇ、なんでエルクがここにいるの?」

「宴会する前に準備してたからに決まってんじゃん」

「あれ?さっき決めたみたいな話してたよね?」

「そうだっけ~?」

首を傾げながら馬車に乗り込むノエルの後姿を見ながら誓った。

――やっぱりいつかハメる。


「頑張るのよ、ソファ。

 成功したらお祝いね」

そう言いながらセレナが馬車に乗り込む。


「頑張れソファ。

 その時は俺も力を貸そう」

そう言ってオリバーが御者席へ乗り込んだ。


妻を抱えたまま何とも言えない表情を浮かべるピエールに続いて私が乗り込むと、エルクは少し嬉しそうに嘶いてから夜道を踏み出した。




◇◇◇◇◇




聞いてくれねぇかぁ?

奢るからよぅ…

コレが飲まずにいられるかってんだ。


こないだよぅ、

ひと仕事終えたんでラグーナに行って来てたんだよ。

でよ、あすこにはよ?

知る人ぞ知るっつう、い~い女がやってる酒場があんだよ。


そう、水路沿いのよ…あ?

おめぇなんで知ってんだ?

なにぃ?みんな知ってるだと?


なんで知…ってまぁいいや。

じゃあこの話は知ってるか?


店主の女…あぁ、そうだ。

ベラだよ、ベ・ラ!

…なんだよ?集まってくんじゃねえよ。


飲まなくていいから早く続きを言えだと?

聞いたら飲まなきゃやってらんねぇぞ?


…ベラに男が出来てやがった。

イテテッ…。いてぇな何す…、

ウソじゃねぇ!

いたんだよ!


あの店のよ!カウンターのよ!

中(・)に男がいやがったんだ!


あ?出入りの業者だろって?

ほぉ?じゃおめぇ出入りの業者と目が合ったらいちいち子犬愛(め)でるみてぇな目ぇすんのかよ?


新しく雇った新入りだと?

じゃあおめぇ自分の男でもねぇヤツの食い掛けのカボブをあのベラが食うと思うか?


…分かりゃぁいんだよ。

いや、分かりたくない気持ちも分かんだよ。

な?飲まなきゃやってらんねぇだろ?


あん?知ってるやつかだと?

あの変人だよ!

…分かんねぇだと?

あの変態だよ!


あの機械弄りの変人で変態がベラとデキちまってたんだよぅ。

な?飲まなきゃやってらんねぇだろ?


…あん?おめぇあの変人知らねぇのか?

あいつはよ、あの国の水路に跳ね橋あんだろ?

あれを上手ぇこと上げたりよ、でけぇ門をポチッとすりゃあ、水の力で開けたり閉じたりできるようなモンをチマチマチマチマ作ってる変人なんだよ。


変態じゃねぇじゃねぇかだと?

おめぇも見りゃあ分かるよ!

あの変態は男の癖にそうやって自分の作ったもんには必ずどっかに花細工を入れやがるんだ。

んなこたぁ変態しかやらねぇだろ?


なんの花だぁ?

それ聞いてどうすんだ?

知らねぇよ、花の名前なんざよ。

…なんかの香油の原料になるアレだよ。

あん?…そうだな。あの花はおめぇが言う通り青かったな。


おい。もういっぺん言ってくれねぇか?

…そうだよ。

香油の、原料の、青い花だよ。

…そうだよ。

ベラが使ってる香油の原料の…。


やっぱり変態じゃねぇか!

あいつ一体いつから…。


あん?なんでそんな細工のこと知ってるかって?

そりゃあお前、何個か見つけたら気になるじゃねぇか。

ここにもある、あ、これもそうじゃねぇかってな。

気付いたらアレだよ、そこらじゅう探しちまってんだな。


あ?俺様のどこが変態だ?

チッ…。まぁいい。

おめぇらも行く事あんなら覚悟して行けよ?

何がって?

おめぇらよ、あのベラのでっけぇ目がよ、あのヘンダイルと話してる時だけほとんど開かねぇんだ。

あの顔見ちまったらよぅ…邪魔なんて出来ねぇよ…。

俺だけじゃねぇ。その場にいた連中もよ、なぁんも文句なんか言えねぇんだよ。

ただ黙って、てめェのボトル空けるまで飲んでよ、

もう一本おろして、そっから一杯だけ飲んで帰ってくんだよ。

また来るっつってな。


ようやく…見つけたんだよ。


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