第1回スプライトクインテットMTG
「さぁ~どうするか決めよっか?」
公王が部屋を去ったあと、沈黙を破ったのはノエルだった。
「まずは状況の確認ね。ファニーよろしく!」
「え?なんで私…?」
相変わらずの無茶ぶりの今回の被害者はファニーだった。
「当たり前じゃん!ギルドの受付嬢の業務みたいなもんなんだし、今回の事件の報告書も書いてたし、練習、実践にはもってこい!任せた!」
丸投げしたいだけなんだろうけど、言ってることは間違ってないと思う。私は事件のあと寝込んでたし、それに付き合ってくれていたセレナは外の状況はあまり知らない。オリバーとピエールは復興作業の手伝いに駆り出されていたので全体がどうなってるかは知らないはず。
「…もう…分かったわよ…。じゃあ、今の状況を説明します。まず、火竜の襲撃のあとのラグーナ公国の状況からね」
ファニーが言うには被害は襲撃のあった側。つまりラグーナ公国東のオロディア側の居住区に集中していて、他の区域では目立った被害はないそうで、倒壊した家屋の修復と水路の復旧が行われている。
「次は私たちの状況を説明します」
私たちはラグーナ公国を訪れてすぐに今回の事件に巻き込まれたので、私を除いた皆はそれぞれ復興作業や被害者の治癒に分かれて奔走していたらしい。目覚めた時にセレナが側にいてくれたのは、それが落ち着いてたまたま部屋に休息に来ていたからだったみたい。
「…私たちがこれからどうするか?っていうところなんだけど、まず選択肢のひとつは西側に逃…「「それはない」」っていうのはナシで…」
――やっぱりそれはないよね。
ファニーを遮ったのはオリバーとピエールだったけど、ノエルもセレナも首を振ってるし、私もそう思う。
「じゃあ、あとふたつ…かな?ここに残るか、戦いが始まるとして、それに参加するか」
そこまで言うと仕事は終わりとばかりに彼女はすっとピエールの隣に腰掛けた。
「まず聞いておきたいんだが、ソファの具合はどうなんだ?」
腕組みしながら話を聞いていたオリバーがそう質問すると、全員の視線が私に集まる。
「え…っと、みんな心配かけてごめんなさい。体は大丈夫…だと思う。どこも怪我してないし、火竜の襲撃の時にちょっと無理して≪フェンリル≫の力を使い過ぎちゃっただけだから、もう十分休んだから大丈夫…だと思う」
「どーだかねぇ??」
「ノエルの言う通りよ。無理して使えてしまうという事は、制御できていないって事だから。お互い無茶しないように一度ヤクモとお話しておいてほうが良さそうね」
ノエルとセレナにそう言われると「はい」としか言えず、私は大人しくしておくことに決めた。
「だがあの時≪フェンリル≫がなかったら被害はこんな物では済まなかっただろう。この点に関して俺はハンターとして最善策だったと思っている。本当に良くやった。復興の現場での話題はそればかりだ」
そう言ってオリバーが私を励ましてくれるが、ノエルが眉間に皺を寄せると目を瞑って黙り込んでしまった。
「ここに残るにしろ、戦いに参加するにしろ、今は俺たちで決めていいんだよな?だとすれば、俺の意見はソファの回復が確認できるまでは動くべきではないと思うがどうだ?」
「ピエール君の言う通りだよ!今アタシたちは動くべきじゃないね」
「ノエル。いい加減ちゃんと説明しなさい」
ピエールの意見に口を開いたノエルが今度はセレナに注意されて渋々ながらも説明を始めた。
「いい?今回の事だけど、いつものバカどもにまた嵌められた可能性があんの。だとするとどうせ巻き込まれるんだから、それまで待っててもいいんじゃない?ってのがアタシの考え」
「バカどもって事はアリアも絡んでるのか?」
目を瞑ったままオリバーが確認すると、それにはファニーが答えた。
「多分そうだと思います。理由は“グルー”が来るタイミングが良すぎたからです。火竜の騒動が収まってすぐ、のタイミングだったので…」
「ちょっと待ってくれ!“グルー”っていうのはなんの事だ?」
ファニーの説明に今度はピエールが食いついた。けど私もそれは気になってた。
なんだ?“グルー”って。
「あぁ、それね。アリアの精霊のことだよ。今はそんなのどうでもいいよ。ファニーが言うように、タイミングよくグルーが来たって事は、アイツらが知ってたか監視してたかのどっちか」
「恐らく後者でしょうね。私たちがここに来たのはノエルの気まぐれだし、コードがオロディアで何か情報を掴んで、アリアがたまたま南にいた私たちを利用しようとしているってところかしら」
「ほんっとムカつくよね~。でも今回は多分火竜の襲撃ってとこまでは予想してないだろうから処分保留ってトコね。ただこのまま巻き込まれるのは癪に障んのよ。ってことで!アイツらのツケでこの間の続きでもしない?」
「いいわね」とセレナ。
「俺は賛成だ」とオリバー。
「そう言えば広場で舟屋の船頭に話しかけられたんだが、いつでも大歓迎だから声を掛けてくれと言っていたな」
「私も賛成!焼きかけのエビまだ食べてなくて…」
ピエールの言葉を聞いてファニーものってきた。私の答えももちろん決まっている。
「よし!決まり!ルールはひとつ。遠慮せずに高いモノだけ頼むこと!いいわね?」
ノエルのその言葉に、みんな悪そうな笑顔で頷いた。なんかホッとするんだよね、そもそも私たちは楽しむために旅に出たんだから。




