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私の精霊はまさかのポメラニアン?~新米ハンターと賑やかパーティーが繰り広げる異世界冒険記~  作者: アインス
第4歩 南への旅

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ラグーナ公国 火竜との闘い

舟から二つの影が弾き出されるように飛んだ。


先に行ったノエルをマネしなきゃ!

私は無意識に≪アルゴス≫を発動していた。


前を飛ぶノエルは屋根の縁に触れた瞬間、衝撃を殺すように体を流し、そのまま石畳へ滑り降りた。着地から立ち上がるまでの動作に一切の無駄がなく、後から来る私を視界に捕らえてすぐに落下地点へと走り出す。


「うわっ!?」

――あ、無理。


着地と同時に体勢を崩し、石畳に転がった。

受け身は取れず、肘と膝で勢いを止める形になり、息を詰まらせて動きが止まる。


「何それ?カエルみたい!」


背後から掛けられたノエルの声に体の状態を確かめながら起き上がる。


「セレナが風の膜で覆ってくれてるから大丈夫だって!どこも怪我なんかしてないハズよ?」

「あのさ、準備とか…」

「襲撃は始まってんのよ?さ、早く立って!行くよ!」


ノエルの言葉通り、そう遠くないところから聞こえてくる轟音と人々の悲鳴にすぐに立ち上がると指示を求めた。


「いい?守ろうなんて考えちゃダメ。空を見たでしょ?多分酷い事になってるけど、後手に回れば町を焼き尽くされる。攻めて来る敵がいなくなるまでは()()()()()()()()()()()()()()()()!」


――!!

冷酷にも思えるノエルの指示。

私は目を閉じて、彼女の言葉をしっかり飲み込んでから静かに頷いた。


「いい子ね。別行動になるわよ?い~い?アンタは絶対死なない事!片付けたらこの国の奢りで夕飯の続きよ?」


そう言って不敵な笑みを浮かべるノエル。

――もう覚悟は決めた。

迷わずに襲い来る火竜の大群へ駆け出していた。





◇◇◇◇





――想像以上の惨状だった。

美しかった瑠璃色るりいろの町の一角が、今は煤けた臙脂色えんじいろに揺れていた。

あちらこちらの建物から炎が上がり、逃げ惑う人々の悲鳴が嫌でも耳に入ってくる。


「許せない…ヤクモ教えて。フェンリルなら空の竜を全部倒せる?」

「たぶん大丈夫。でも…」


ヤクモが問いかけに答えている途中で周囲の時間が凍り付いたように止まった。

――この感覚は確か…。


⦅やぁ、また逢えたね⦆

やっぱり、こっちのヤクモ…。


⦅大変そうだね?手伝って欲しいの?⦆


(見れば分かるでしょ?力を貸して)


⦅代償は?⦆


(代償?何か欲しいの?)


⦅君が言う所のこっちの僕の力。使うなら代償を貰うよ⦆


(だから、何が欲しいのよ?)


⦅焦らなくても大丈夫。今は時を凍らせてるから。ご覧よ、火竜としては出来損ないだけど、数だけはやたらと多いね⦆


(助けたいの!これ以上誰も傷付いてほしくない!だから力を貸しなさい!)


⦅威勢がいいね?じゃあ代償に少しの間声を貰おうか⦆


(声?少しってどれくらいよ?)


⦅さぁ?それを言えば面白くないからね。どうする?⦆


(取引成立よ。ここにいる火竜を全部倒すのよ?)


⦅約束は守るよ⦆


(…こっちのヤクモは可愛くないわね)


――凍り付いた時間が動き出したのを肌で感じた。

隣のヤクモが心配そうな目でこちらを伺う。

大丈夫と語りかけた私の口からは声が出ていなかった。


(分かってたわよ。次どうすればいいかもね)


自分の置かれた状況は分かってる。

静かにフレイルを構えた瞬間、隣のヤクモが柄に吸い込まれまばゆい白銀の輝きを放つ。

――今は最優先でしなきゃいけない事がある。

ノエルが任せてくれた仕事。

彼女の期待を裏切る訳にはいかない。

私には――できる。


(≪フェンリル≫火竜を倒せ)

そう……命じた。




燃え上がる炎の揺らめきが蒼白く凍りついた。


周囲に立ち込める炎の熱気は冷気に変わり、火を消す為に撒かれた水はその場で固まり、空気が目に見えるような白さに変わる。


あらゆるものの時間を凍らせて、それは顕現し(あらわれ)た。


フェンリル――氷の聖狼。


凍った時の中で白銀の狼は深く息を吸い込むとゆっくりと顔を上げ、吼えた。


この町の全ての生物が、()()()()()()を聞いた。


一部の空を見上げていた者だけが、それを目にした。


凍ったのは遥か上空の空。


空そのものが折れ、氷柱となった。


突如現れた異形の集団に襲われる寸前の者が目にした光景。


空と地から挟むように出来た氷の柱。


この町の至る所で同じ氷晶華ダイヤモンドダストが開いた。――否、それは無秩序ではなかった。


全ての火竜の中心から氷晶華ダイヤモンドダストが開き、その命を吸い尽くすと弾けては砕け散った。


町のある地点から、放射状に広がった白銀の輝きが空を覆う火竜へ届いた瞬間、一際大きな氷晶華ダイヤモンドダストが咲き、音もたてずに白い輝きを放ちながら散り落ち、そして時間が動いた。


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