お片付け
――泉へ向かう山間の大地にて。
「やっと片付いたね」
「疲れたぁ…」
私の呟きに答えるファニー。
◆◆
泉から出たあと、真っ直ぐギルドへ向かい、ノエルの指示を受けてオリバーはハンターにこう告げた。
「メガトータスの肉で宴会するぞ!
討伐済みだから後は調理だけだ!
参加する奴はすぐに来い!」
◆◆
「ギルドに人がいて良かったね」
そう言ってノエルに笑顔を向ける。
「あいつら昼間っから飲んでるだけだからね。素材回収も出来て金にもなるし、タダでいいもん食べれるってなったら当然こうなるよね。使えるもんは使ったもん勝ち。ンフッ。アタシって天才」
大丈夫。機嫌も戻ってる。
「あっ…アリアさん!」
――!!なんで?
ファニーが言う通り向こう側から笑顔のアリアがこちらへ一直線に向かってくる。
「チッ!ギルドにいなかったのに…」
「えっ?私が呼んじゃった…」
「「――!?」」
…ファニー。それはダメなんだよ…。
「そう。ファニーが知らせてくれたの。
ホント仕事が出来る人は大好き。
ところでノエル。説明してくれる?」
「……メガトータスの肉で宴会」
「それは名案ね。でも、他に何か報告しなきゃいけない事があるんじゃないかと思うの」
「何もない!さ、宴会宴会。
ソファ、準備準備」
「そ、そうだね。
ゴメンね、アリア。
今忙しいから!」
「あそこの岩山はどうしたの?」
――!!
「岩山?なんの事かなぁ?
ソファ何か知ってる?」
「知らない知らない!
い、岩山なんてあったの?」
「無駄よ。私の目は誤魔化せないって知ってるでしょ?それに怒ってないわよ?岩山が無くなったおかげでここに1つ拠点も作れるしね」
「「……」」
「もうすぐドワーフたちが来るわ。明日簡単な砦を作ってくれたら、岩山の事は私の勘違いにしておくけど?」
「…手を打つしかなさそうね」
「ごめん、ノエル」
…また土壁作りかぁ…。
◇◇
陽が傾きだした頃、集まったハンター達により盛大な火が焚かれ、周囲に並べられた巨大な肉塊が、豪快に炙られていた。
立ち上る煙と香ばしい匂いを肴にどこからか運び込まれたエール樽と火酒の大瓶が次々と空になる。
火の周りでは、肉串を回す係と削ぎ取った肉を皿に並べる係が手際よく動き回る。私たちも補助として参加し、笑いながら肉を受け渡す。
夜空に火の粉と煙が立ち上り、肉を囲む人々の歓声が山間に響き渡った。ハンターとグロームハルの職人たちは酒を酌み交わし、笑い合い、肉の旨味に酔いしれ、豪快な宴が始まっていた。
肉串を頬張りながらイツカが言う。
「お前らよ、
なんでいきなり宴会なんだ?」
「うっさいわね!呼んでやったんだから感謝して黙って食べなさいよ!」
「あ、違うパターンだ」
「オリバーがバラバラにしちゃったんだからしょうがないじゃない!放っておくのも勿体ないでしょ!回収するにもこの亀デカ過ぎて面倒なのよ」
「素直じゃないわね」
「セレナ、なんか言った?」
「何も言ってないわよ?
国を出る前の挨拶でしょ?」
「えっ?そうだったの?」
「違うから!」
セレナの指摘に顔を背けて否定するノエル。
――これは図星だ。
なんだかんだで、これがノエルなんだよね。
気遣い屋だし、意外と照れ屋。
「おォ!オリバー。探したぜェ!」
振り返ると片足を引きずりながら、こちらに手を振るバルカンとウルカ。その両手には器一杯のメガトータスの肉と火酒の大瓶。
「よッこらせッ。鉱竜に続いて大量の亀たァ、景気いィじゃねェか!」
「来てくれたか、バルカンよ。急な注文で済まなかったな。じゃんじゃん食って飲んでくれ!」
「それなんだがよ。明日の晩にでも取りに来いや!」
「もう出来たのか?もう少しかかると言っていたが?」
「見た事ねェぐらい素材が素直でな。こッちの思い通りに仕上がッちまいやがる。まァ今回はウルカも気合入ッてたからな。後は仕上げるだけだ!姉ちゃん、旦那の装備もそこらの魔物じゃあ手も足も出ねェ自信作になッたぜ」
「ありがとうございます!大事に使わなきゃいけないね?」
「そうだな。バルカン、ウルカ。武器に恥じないように精進するつもりだ」
「なァに、武器や防具なんてなァ、使ッてナンボだ。そうそう壊れるとは思わねェが、何かあッたらいつでも来な!すぐ手入れしてやるよ!な、ウルカ」
「親方の言う通り。面白い素材だったし私は2人が大好き。これは作る側の私たちの込める思いが違う。今回は私もいい勉強になったわ。また会いに来てくれるなら大事に使わなくても壊れてもいいわ」
「バルカンとウルカがここまで気に入るのは珍しいんじゃねぇか?」
「イツカの言う通りだ。これには俺も驚いたがこの2人なら分かる気もするがな」
職人の2人とオリバーにも認められたようで、頭を掻くピエールと嬉しそうに微笑むファニー。
「じゃあ明日はパパッと砦作って、装備取りに行って明後日出発ってことでよろしく!アタシあっち顔出してくるね~」
「行っちゃった…あれ?ノエルが話してるのって…」
「ソファ気付いた?そうよ、前のスプライトクインテットのメンバーね」
「私挨拶に行った方がいいよね?」
「今日はいいわよ。私たちは邪魔。また帰って来た時にしましょ」
「そう…そうだね」
「姉ちゃんらで旅に出るのか?楽しんで来いよ!まァ飲めや」
そう言って差し出された火酒の大瓶を順に回し飲みしながら豪快な炎に身を照らされて、宴の夜は更けていく――。




