前略“道”の上にて
翌朝、準備を終えると精霊の住処へ繋がる“道”へと出発。
前回と違うのは泉へ向かったメンバーと…
「…聞いていいか?」
予想されたオリバーの問い。
「…答えないからね」
知らんぷりのノエル。
「…すまんが言えない」
そう言って私を見るピエール。
「私も…知らない」
というか言えない。
「??」
ファニーは当然こうなる。
「お前らが言ってた岩…や
「昨日の事なんだけどさ!
温泉で、見てたよね…セ
「俺は何も見ていない!」
「い~い?アタシは何も言わない。アンタも何も見ていない。これでいいよね?」
「問題ない。それで手を打とう」
――お見事!!
まさか、昨日のお風呂はワザと?
「ねぇピエール。なにがどう…」
「お願い。聞かないで!」
「ファニー。知らない方がいい事もあるんだ。多分その方が幸せだ」
「…何も聞かない」
ファニーも少し馴染んできた。
…ってことにしておこう。
「近道を発見したんだよ」
「そ、そうなの。偶然、ね」
「前の帰りに、な」
「それは朗報だな」
「??」
…ゴメン。ファニー。
言えない…知らないほうがいい事もある!
“道”を進むうち、あったはずの岩山は新たな道となり、どこから出てきたのか新たな魔物が棲みついていた。
「さぁ、間引いておかなくちゃね。空を飛んでるのはソファがやるんでしょ?魔法はナシでフレイルだけで倒すのよ」
「任せて。ヤクモ、ハウス」
「ピエールは小型と中型かな?大丈夫そう?」
「任せてくれ。ファニーは任せておいても構わないか?」
「もちろんよ。オリバーはあっち、メガトータスね」
「それはいいがあんなもんどっから湧いて来たんだ?」
「これはホントに知らない。でもちょうどいいんじゃない?」
「何体かは素材に期待できんが、構わないか?」
「数はいるし、別にいいわよ。好きにやっちゃって」
「えらい増えとるなぁ。手伝いいるか?」
「トラヴァスはピエールの方ね」
「ほいっさぁ」
「じゃあサクサク行っちゃいましょ!よろしく!」
簡単な打ち合わせを終え、ノエルはファニーを連れて少し離れた斜面に揃って腰を下ろした。あそこにいる限りは安心かな?…私が失敗しなければ。
少し離れた岩場から、ピエールの雄叫びが響いた。
彼の担当はオークとロックリザード。
前にここに来た時はオークを一瞬で討伐してたし、ロックリザードも敵じゃあなさそう。心配があるとすれば新武器のグレイブ?だけど、彼なら問題なく扱えそうだった。
…器用だし、普通に強いんだよね~。
そう思っていたらファニーの鋭い声と同時に響く爆音。
――これはトラヴァスかな?
やっぱり大丈夫そうね。私は目の前の敵に集中っと。
私の敵はストーンバットの群れ。
フレイルを構えて、華麗に討伐。ノエルもファニーも良く見ててね。
――!
……少し前の私よ。
なぜあんなに自信があった!?
早いし、避けるし、全然当たらない…。
『ソファ、そっちじゃない。こっち』
「ヤクモこそ!こっちだってば!」
ヤクモとの連携も全然だめだ…。
そう思っていたら、急に周囲が風で覆われた。
――敵?…違う。
コレはノエルだ。
恐る恐る振り返る。
「そこ!2人で作戦タイム!少しだけ時間上げるから、しっかりしなさい!」
助かった…けど、これって後で絶対怒られるやつだよね?
バツが悪そうにヤクモもフレイルから出て来る。
「おこられちゃったね」
「ね、こういうのはどう?私がまず目標に向けて振るから、ヤクモは十分近付いてから、向きを修正するの」
「“あいことば”は?」
「“ハウス”とか“デュオ”みたいなの?何回くらい連続で出来そう?」
「10回ぐらい?」
「じゃあ、順番に数を数えるのは?」
「それいいよ!やってみよ!」
尻尾を振り回して目をキラキラさせるヤクモに、遊びじゃないんだけどなぁと呟く。
でも、やるしかないよね。
「じゃ行くよ。ハウス、準備しててね。
ノエル~!ありがと!もう大丈夫!」
合図を確認したノエルは風の覆いを解いた。
風に邪魔されて攻撃を止め、距離を置いていたストーンバットの群れは、その気配に気付くと向きを変えこちらを攻撃する動きを見せる。
こちらも大きく息を吸った後に、上空の目標に狙いを定めた。
――やってやる!
「行くよ~!ひとーつ!」
群れに向けてフレイルを放ち数を数える。
――!ちょっと恥ずかしい。
フレイルが群れの中心に届いた頃に声が響いた。
『ふた~つ!』
フレイルが急激に進路を変え、一番近くにいたストーンバットの羽を貫いた。
「出来た!みーつっ!」
地上から鞭を振るう様にフレイルの向きを変える。
『よ~っつ!』
今度はフレイルが1番近い目標へ追尾するような動きを見せて獲物の胴を貫き、地上で数を数える度にフレイルは向きを変えて、目標を補足すると呼応するように数を増やし、ストーンバットを撃ち抜いて行く。
『とお!』の声の後、5体目を撃ち抜いたフレイルが勢いよく手元へ戻った。
――できた!
でもなんだろう?背後で感じる楽しそうな気配…。
これは…もしかして笑われてる?
「ソファ~!もう1回やって~」
――やっぱり!
でもまだ敵はいるんだし、やるしかない。
こうなりゃヤケだよ。
私はさっきと同じように叫ぶ。
「ひとーつ!」
フレイルが一直線に目標に向かい
『ふた~つ!』
フレイルが向きを変え目標を貫く。
「みーつっ!」『よ~っつ!』…
『やぁ~っつ』の時点で聞こえる笑い声。
――なんでここで笑うの?
『とお!』の声とともに聞こえてくる笑い声が増えた。
――ピエールとトラヴァスね。
私は気付かないフリをすることに決めた。
笑われたっていいじゃん。
手応えはある。これなら――やれる。
多分私は気付かないうちに笑みを浮かべていた。
◇◇
その頃、オリバーは降り立った山間の大地で思わず頭を抱え込んだ。
メガトータスは全部で6体……確かに全部で6体いたはずだ。
しかし、彼の目の前にあるのは無残な骸となって横たわる6体の変わり果てた姿だけであった。
何体かは構わない、好きにやっちゃって。とは?
生まれ変わったオブリヴィオンの力を試そうと手前のメガトータスに相棒を振り下ろした。
それは巨大な果実のように頭部を真っ二つに割り、左右対称に割れた頭の断面からは間の抜けた「きょとん」とした表情がこちらを向いている。
…この1体は素材も十分に取れるし、状態もいい。
1体目で切れ味を確認した後、残りの5体が偶々一塊になっていたので、そのままオブリヴィオンを5度振った。
1度目は横っ面を薙ぎ払った。
2度目は振った勢いを殺さずに最後方にいた個体を薙ぎ払った。
3度目は飛び上がり真ん中の個体に戦斧を振り下ろしたところ、何故か亀が弾けたので、飛び上がり
4度目は後ろの個体に同じく戦斧を振り下ろした。同じように亀の甲羅が弾けたので飛び上がり、
5度目は残った個体の頭部に戦斧を突き刺した…のだが…。
弾けた2体は原形すら留めず、文字通り周囲に肉片を飛び散らしている。
問題は残り3体だが、2体を1度ずつ横薙ぎに払った筈なのに何故か3体とも3枚に卸されている。
幸い魔石は取れたが、もしや薙ぎは斬撃が飛び、振り下ろしは爆発するのか?だとすると1体目が形を留めている理由は?
目の前に突き刺したオブリヴィオンを眺め、先程の自身の動きを再現しながら首を傾げるオリバーは、背後から忍び寄る恐怖をまだ知らない…。
ひとーつ、ふたーつ、みーっつ!
アカン!おもろすぎるでぇ
やぁ~っ、とぉ~っ!
ニャハハハハッ!
子供やん!
…お?久しぶりの出番やろ?
声に出してゆうてみ?
あいつらの真似して大声でやで!




