鍛冶の町 ノエル
グロームハルの町からエルクに乗って少しだけ離れると鉱竜がいた荒野がある。
買い物を終えたアタシとソファが噴水前の3柱を迎えに行くと、装備の発注を終えたばかりの3人と出くわした。
装備が出来上がるまで4日ほどかかるらしいけど、それはいい。命を預ける装備の新調だからしょうがないし、素材は鉱竜っていうレア中のレアなんだし、それぐらいなら問題無し。
「それでなんでここに来るのよ?」
「ピエールがバルカンさんの工房で武器の扱いに慣れておけって言われて…」
「そこまではいいの!そんなのピエールと筋肉バカだけで来ればいいじゃん」
「ソファちゃんもフレイルの練習がしたいって…」
「その間アタシとファニーは何してればいいの?」
「ちゃんとお話がしたくて…」
ピエールとファニーについては、複雑な状況ってのは理解してる。
アタシたちはオロディアっていう国は嫌いだ。
ウチの前のメンバーにはあの国で迫害を受けてたコがいる。命からがら国を飛び出してきたそのコの面倒を見るって言い出した物好きがいて、気付いたらパーティーの一員になってて、気付いたらその物好きとくっ付いて……まぁいいや。
セレナは昔あの国のどこかにあるエルフの里が襲撃された時、同胞を救うために戦い、安寧の地を求めて旅をするうちにこの国に辿り着いたらしい。詳しくは聞いてない。言いたくない事もあるだろうからね。……これもまぁいいや。
とにかくオロディアって国は嫌いだ。
ただ、国は嫌いでも人は別。
例えばこの夫婦。
アタシは気に入っている。
セレナは気に入らなければ絶対にパーティーなんか組まないし、ソファも馴染んでる。
「ただ夫婦揃って固いんだよねぇ」
「恩人ですし…」
「そういうのはホントもういいよ。感謝してるっていうならさ、もっと砕けて普通に接してくれた方がいいよ」
「ソファちゃん以外はみんな年上ですし…」
「えっ?そうなの」
「えっ?」
「ファニーいくつなの?」
「20です。オロディアでは20歳で結婚が可能なので…」
「じゃ同じくらいじゃん!」
「――!?」
「さっ、これで年上だってのはナシね。恩人ってのも依頼を受けたハンターと依頼主ってことにして…」
「それはちょっと強引じゃ…」
「ソファ見てよ!年下なのにもう慣れ慣れしいよ?普通に突っ込むし無視する時だってあるんだから!」
「付き合いが長いからじゃ…」
「あれ?聞いてない?あの子とアタシ、会ってからまだ10日と少し程度よ?」
「――!?」
…言ってなかったかな~
……まぁいいや。
「ほら!」
「…分かった!分かったから」
「オッケー。で?何聞きたいの?」
「色々ある…けど、あれ、一体何してるの?」
そう言ったファニーの視線を追ってみた。
「あの筋肉バカ…」
ピエールが槍…じゃない、あれはグレイブだったかな?を構えてオリバーにガンガン打ち付けていた。
一方のオリバーは右、左とここまで聞こえるくらい叫びながら打ち付ける場所を指示してる。
「流石に拙くない?」
「大丈夫。トラヴァスとシェルティが風の膜で覆ってるから」
「どういう意味?」
どっちかがグレイブの刃の部分を覆い、どっちかがオリバーの体全体を覆って衝撃を弾いていると説明すると、彼女は口を開けて固まった。
そりゃそうだ。多少なりともダメージは入るし、普通はこんな事に精霊は手を貸さないし、こんな事を頼むヤツもいない。
「アイツ精霊に気に入られ過ぎ…」
「トラヴァスもシェルティも含めてだけど、皆楽しんでない?」
「あんな事頼むヤツいないからね。やった事ないから間違いなく楽しんでるね」
「オリバーさんに精霊はいないの?」
「なんかね、出てこないんだって」
「――出てこない?」
「ピエールも出てこなかったな~」
「ピエールも?」
…言ってなかったかな~
……まぁいいや。
「精霊の住処ってのがあってね…」
説明は苦手なんだよなぁ。
人に合わせて詳しく説明する事も、同じ事を言っても上手く伝えられるセレナやアリアみたいには出来ない。ってかアタシには無理だ。
それでもちゃんと真っ直ぐ目を見て理解しようとする彼女。
固いし真面目過ぎるけど、
アタシはこの夫婦が好きだ。
「――って感じでソファにはヤクモが顕現して、ピエールには反応が無かったから多分出てこないかなぁって」
「その、精霊の住処って
誰でも行けるところなの?」
そう来たか!…待てよ?4日もあるなら行けるじゃん?
上の“道”はすぐそこだし、出なけりゃそれはそれでいいし、ピエールとソファの訓練にもいいし。
「ファニー、行ってみたい?」
「行ってみてもいいかな?」
いい事思いついちゃった!
アタシはすぐさま男共の真ん中に雷を放つ。
「どわっ!!」「雷だと?」
文句は後で聞いて…
まぁ、聞く必要ないか。
「ちょっと!ちょうどいい案があるんだけど乗らない?」
そう言って手招きすると、ブツブツ文句を言いながらもこっちへ向かってくる。その様子を見てソファも手を止めて向かってきた。
なんだかんだで素直じゃん。
ホントやり易い。
アタシは新しいこのパーティーが
…大好きだ。




