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私の精霊はまさかのポメラニアン?~新米ハンターと賑やかパーティーが繰り広げる異世界冒険記~  作者: アインス
第3歩 力を求めて

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鍛冶の町 オリバー

鉱竜ファフニールは誇り高い竜だった。



彼は地龍との聖約を果たし、文字通り全てを俺に賭け、言葉通りにその全てを授けてくれた。


今や背の“オブリヴィオン”は鉱竜の核と魂を取り込み、闇の力と鉱竜の力を宿したとんでもない戦斧となった。



鉱竜が遺したものはそれだけではなかった。


希少な最上位の竜種。その核と魂が無くとも、体は当然貴重な素材となる。


鱗一枚、欠けた爪や牙でも小楯やナイフとしては最上級となる素材が、巨大な体躯全てを誓約の代償としてこの俺に授けてくれた。


正直なところ、代償というより俺が一方的に受け取っただけな気もするが。


いつか求められれば、俺はこの命を差し出すぐらいしなければ釣り合いがとれないだろう。彼の言う()()とは、そういう物の筈なのだから。


考えを巡らせているうちに目的地に着いた。



“バルカンの工房”


お祖母ちゃんが言っていた。

『本当の名店は看板さえ出していない』


ここも知る者ぞ知る工房で、見た目はただの倉庫。だが店主バルカンは間違いなく鍛冶の神に愛されたドワーフだ。



「ここが腕のいい職人のいる工房なのか?看板も何も出ていないただの倉庫に見えるが?」

「でも煙突?から煙が出てるし、鍛冶の熱気は凄く感じるわよ?」

「見たら驚くと思うぞ」


そう言って入り口の木扉を開け中に入る。


「バルカン、いるか?」

「今いいとこなんでィ!

 ちッとそこで待ってな」



炉の燃え盛る炎が、剣身を妖しい橙色に染め上げていた。

煤けた作業着の男――バルカンは炉から目を離さず…瞬きすらせずにその剣身に集中していた。

最後の加熱を終え、炉から出された刀身は赤赤と脈打ち、慎重に金床に乗せた刀身に、重く、しかし精確な一撃が振り下ろされた。


 カーンッ!


脳を打ち抜くような甲高い音色が工房全体に響き渡り、火花が周囲に散乱する。どうやらこの一打で剣はその形を完成させたようだ。


まだ赤い刀身は真っ直ぐに伸び、冷水の桶に浸されると激しい音を立てて白い水蒸気が工房を満たし、独特の匂いが鼻腔をくすぐる。


熱が引いた刀身は、黒い肌に鈍く光る橙色の輝きをたたえている。疲労の滲んだ手で柄を嵌め込み、バルカンは完成したロングソードを掲げた。


「面白れェ素材でな、仕上げは上手ェ事いッたみてェだ」


そう言ってこちらに向けたロングソードの素材を当ててみろと顎を上げる。


「薄く橙が入っているな」

「竜か火山の魔物か?」


剣を見て答えた俺とピエールに対し、違うとばかりに得意げに首を振るバルカン。同じく目の前に突き出されたロングソードを見てファニーが戸惑いながらも答える。


「これ、良く見るとソファちゃんのフレイルみたいに細い筋が入ってない?それに薄暗くて分からないけど、橙じゃなくて琥珀色っぽい。もしかして違う種類の蜘蛛の糸じゃないかな?」


「姉ちゃん!」


バルカンが目を見開き、ロングソードを持ったままファニーの肩を掴む。


「フレイルは知らねェが、コイツを蜘蛛の糸と言い当てるのはてェしたモンだ!面白ェ!姉ちゃんの仕事から受けてやる。何が欲しいか言ってみやがれ」


「えっ?えっと…主人の装備と、オリバーさんの装備の作成を依頼したくて」


「あン?オリバー?」

「バルカンよ!変わらんな」


「おォおォ!オリバーじゃねェか!相変わらず物騒な斧担いでんのか?ッてちィッとソイツの感じが変わッてんじゃねェか?ここ置いてみろ」


「親方!まずは挨拶でしょ!オリバーさんがせっかく来てくれたのに、いきなり剣見せられて、斧見せろって言われて。とりあえず座ってもらったらどうです?」


そう言いながら奥から姿を見せたのはウルカだ。

彼女を初めて見た時の反応でバルカンは仕事を受けるかどうかを判断するが、知っている者は誰かを紹介するときにそれを言ってはいけない不文律おきてがある。


「オリバーさん、お久しぶりです。そしてこちらは初めましてですね、こちらで親方を手伝っております、ウルカと言います。よろしく!」


そう言って既にバルカンに認められたファニーに挨拶をした後、その目をピエールに向けた。


彼女は鍛冶場の熱気を帯びた薄暗い空間の荒々しさを和らげて、聖域のような静謐さを生み出し、鍛え上げられたしなやかな腕は重労働にも関わらず、どこか繊細な美しさを保ち、鍛冶場の作業着は曲線美を強調するように身体に沿い、胸元は豊かに、しかし慎ましやかに布で覆われ、汗に濡れた肌が淫靡な誘惑となり、荒くれ者の多いハンターにとっては危険な果実となる。


さて、ピエールはどうするか…。


「失礼だが、あなたは精霊では?」

「―――!!」



「こいつァ驚いた!兄ちゃん、こッちへ来なよ。姉ちゃんもオリバーもこッち来な」


そう言ってバルカンは片足を引きずりながら作業場の奥へ出て行った。

作業場の奥は彼にとっての休憩所であり注文窓口でもある、中庭の東屋あずまやだ。


黒曜石を削った円卓に大木の根の椅子、そこに全員が座り、ウルカが火酒かぐつちの入った鉄杯を配り終えるとバルカンは口を開いた。


「おめェらの注文は受けてやる。その前に聞かせろや。姉ちゃんからだ。なんで蜘蛛の糸だと思ッた?」


火酒かぐつちを一息に飲み干し、二杯目を注ぎながら目で答えを求める。


「凄く細い糸を束ねたように見えたんです。私たちのパーティーにも蜘蛛の糸を使った武器を持ってる子がいて、ひょっとしたらと思っただけなんです」


「いやァ、似たもンを持ッてたとしても、剣を糸で作ッたと言い当てるのはてェしたモンだ。気に入ッたよ。兄ちゃんが姉ちゃんの旦那か?」


「そうです。私の名はピエール、妻はファニーと言います。私の装備と、連れてきてくれたオリバーの装備を作ってもらいに来たのですが…」


「注文は受けてやるッて言ッただろ?オリバーは問題ねェ。素材集めてくれるからなァ。姉ちゃんの旦那のも受けてやる。だがその前にあと一つ、兄ちゃんよ、なんでウルカを精霊と言ッた?」


そう言って火酒かぐつちを飲みながら答えを待つ。


「少し待ってくれないか?…オリバー、確認していいか?その…言ってもいいのか?」


そう言って彼は俺に小声で確認を取る。


「ここじゃ構わんさ。思ったままを聞かせてやってくれ」


すると彼は火酒かぐつちを一息に飲み干してから答えた。


「――くっ!私の仲間に精霊使いが3人いる。まだ会ったばかりで詳しくは分からないが、目の光が彼らと似ている気がした。彼らは人型ではないが、もし人型がいたとしたらと思い、失礼かと思いつつも伺ったんだ。他意はなかった」


青白い炎のような息を吐きながら一気に答えるピエールに対し


「精霊の目をちゃんと見た事があるのね。親方、私この人たち好きよ」


「ここ最近だとお前が気に入るのは珍しい。それが夫婦2人ともとはなァ。久しぶりにウルカと2人でいいモンこさえてやるよ!何が欲しいんだ?」


「バルカンよ、俺の防具一式と大楯を2つ、それにピエールの防具一式と武器を頼みたいんだが…」


「兄ちゃん!得物は何を使う?」

「剣と、槍だ」

「他はねェのか?」

「そこまで器用ではない」

「魔法は?」

「試したことはない」

「立ちな!ウルカ!」


そう言ってピエールを立たせると、ウルカが彼の体付きを細やかに調べる。

ふと気になってファニーを見てみたが、彼女はウルカを警戒しておらず、火酒かぐつちを飲みながら興味深そうに眺めていた。


昔大剣のみしか使えなかった俺に、彼女が斧を薦めてきた時の事が思い出される。あの時は何をと思ったもんだが、今となっては斧以外は考えられないくらいしっくりと手に馴染んでいる。そういう意味ではウルカの目利きは確かだ。


「親方、軽めのグレイブと少し重くて長めの片手剣がいい」


「ほう?なんでだ?」

「槍の長さと斬撃力、身軽そうだから振り回せば重い斬撃も出来そうかな」


「片手剣は?」

「重さと長さで間合いが保てる。この人崩しが得意そう」


「なるほどなァ、どうだい兄ちゃん?」

「グレイブは使ったことはないが、槍はウルカが言うような使い方が得意だ。剣の方も問題はない…が、何故それが分かる?」


「うふふ。秘密よ」

「秘密だとよ」


「よし!決まりだ!そうなると俺の防具は重装甲で、ピエールはなるべく防御力を下げずに軽い方がいいな。頼めるか?」


「面白い仕事だ。受けてやる」

「素材はこの中から必要な分は何だって使ってくれ!」


そう言ってバルカンに収納袋を手渡した。


「こいつァ、昨日の夜に見た鉱竜の素材か。腕が鳴るがこんなモンで何狩るッてんだァ?」

「ウチのリーダーは南に旅するらしいぞ」

「向こうにこんな装備いるような魔物はいねェだろうが。竜か国でも攻めんのかァ?」

「巻き込まれない限りは旅をするだけだ。今のところ竜狩りも国盗りも考えてないだろう」

「まァいいさ。面白い仕事に変わりはねェ。3、4日待ちな」


そう言うと彼は火酒かぐつちの入った鉄杯を掲げた。

これで契約は完了だ。


数日はこの地で待つとしよう。


ウルカよ。面白ェヤツらに面白ェ仕事だな。

親方も随分気に入ったんじゃない?

オリバーはともかく、夫婦揃ッてだからな!気合入れて拵えてやるか!

素材は十分として、親方、何が足りない?



レビューだな。俺はともかく、ウルカよ。出番が欲しィだろ?

精霊の使い捨ては許さない。牝牛の精霊に興味があるならレビューは欲しいね。

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