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私の精霊はまさかのポメラニアン?~新米ハンターと賑やかパーティーが繰り広げる異世界冒険記~  作者: アインス
第3歩 力を求めて

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未知との遭遇 ドラゴ…

――ギルドの扉が空気を切り裂くように開く。

軋む蝶番ちょうつがいが短く悲鳴をあげ、乾いた木の扉がぶつかり合い、


「アリア!“あの()()”どこよ?」

「……」

「“()()()()()()()”アンタも来な!」


ギルドの前の私たちにも響くぐらいのノエルの大声。多分応対しているのはアリアだろうなぁ…。

私たちがギルドに入ると、どっちの姿もなかった。


「あっ、もう行っちゃった…」

「怒ってるわね」「怒ってるな」

「道中、一言も喋らなかったですもんね」

「あのノエルがな…」


私たちも続いて()へ進む。


「なんだなんだ?」

「今のノエルだったな」

「訓練所の方に行ったぜ?」

「さっき“おっさん”もあっち行ってなかったか?」


「「―――!!」」


「やべぇぞ!」

「おい!酒持って来い」

「洞窟組はいねぇか?」

「久々の賭けか?」


おかしな雰囲気を嗅ぎ付けたギルド内のハンターも続々と訓練所へ雪崩れ込む。


「この奥って…訓練所じゃ?」

「そうよ。ソファはここで試験を受けたのよね?」

「そうだけど…なんか肌ピリピリしない?」

「これは…ノエルだな。

 どうやらもう始まったようだ」

「何がですか?」「…まさか」


後ろから靴音と怒号が入り混じりハンターたちが駆け抜ける。

熱気と砂煙の向こう、二つの影が立つ場所へ――



「おいおい、もう始まってるじゃねえか!」

「今日は誰が仕切んだ?」

「落ち着け!賭けよりも今日こそあのバカに1発入れてもらおうぜ」

「ノエルは今までどうだ?」

「無理だな。まだ1発も入れれてねぇ」


野次馬たちが一大興行とばかりに叫ぶ喧騒けんそうを余所に、私たちはそう大きくはない訓練所の一画に腰を下ろす。


「何ですか?凄い騒ぎになってますけど」

「ファニー、多分慣れた方が良さそうだ」


「ピエール。いいこと言うな」

「慣れていいの?」「いいのよ」




「このクソジジィ!」


ノエルの叫びとともに青白い稲妻が、風の刃と共に奔り、轟音が訓練所を震わせ、砂煙が舞う。


続けて彼女は、風で槍をかたどり、いかづちでその刃を縁取らせ、砂煙が収まらぬ内に、2本、3本…5本目で止めた。


「ちょっと!あれは流石にやり過ぎじゃない?」

「相手はイツカよ?」

「まず当たらんな…」

「あれで無事…なのか?」

「ワイバーンの時より荒い気が…」


ノエルは無言で両腕を振り抜く。


矢のごとく放たれた槍が砂煙の中心へ吸い込まれ、息つく間もなく彼女は指先を掲げた。


いかづちの粒が空に散り、次の瞬間――落ちる。


無数の稲妻が雨のように降り注ぎ、その一つ一つが地面を穿うがち、爆風を撒き散らす。


それでも彼女は止まらない。


「まだまだ!!――くたばれ!!」


いかづちの雨は止まらず、彼女の怒りに呼応するように爆音が鳴り響く。



「――ご立腹ね」

耳を抑えながらアリアがこちらを訪れ肩を竦める。


「色々溜まってたみたいよ」

とセレナ。


「もうそろそろ落ち着くんちゃうかぁ?」

「…お前は手伝わないのか?」

「オリバー。アホかお前!

 あんな化け物とやるかいな」

「それもそうだな…。

 ワイバーンの核、食うか?」

「お~きに!」

――こんな感じでいいの?


「見たことないくらいの魔法…

 あれでイツカさんは平気なの?」

「ノエルも十分化け物に見えるが…」

「私は今日だけでもうお腹一杯だわ」


ノエルの鬱憤が晴れるまで観戦に徹するベテラン組のアリア、セレナ、オリバーに対し、私とピエール夫妻は表情を引き攣らせる。



砂煙が晴れた頃、ノエルは肩で息をしながらこちらへ叫ぶ。


「セレナ!オリバー!ソファ!

 見てないで手伝いなさいよ!」


「…パスね。疲れるだけじゃない」

「俺もだ。とりあえず話をだな…」

こんなのに巻き込まないで欲しい。

――目が合っちゃったよ…。


「じゃあソファ!命令よ!

 思いっきりケルベロスで焼き尽くして!」

「えぇ!?こんなところで?」


指名を受けた私はまわりに助けを求める。


「やるまで引かないわね」とセレナ。

「そうみたいね…」とアリア。


「ケルベロス?」とファニー。

「炎の化身だ」とピエール。


「ソファ!試しに全力でやってみろ!」

オリバーがふざけた素振りもなく、真顔で告げる。



「なんだなんだ?」

「もう終いかよ!」

「お~い、タマ切れかぁ?」



「うっさい!交代!ソファ!」

野次馬のヤジにそう答えながら彼女は地に腰を下ろす。


「ホントに?やるの?なんで?」


周りを見回し確認すると、仲間は手をノエルへ向け、“行け”と促す。


砂煙が晴れ、ノエルの対面にいたイツカ()がこちらへ目を向ける。


「おう!嬢ちゃんじゃねえか。

 お前もなんか文句あんのか?」


「いっ、いえ!呼ばれちゃって…

 っていうか無傷?…なんで?」


「気にすんな。ノエルはたまに仕事請けるとすぐ“コレ”だ」


「うっさい!黙れ!クソジジィ!

 ここ来てからウチにマトモな仕事なんかないでしょうが!」


悪態をつきながらノエルが歩み寄る。


「加減なんかいらないからね!

 ヤクモ!手伝いな!」


『ホントにやるの?』

フレイルの中から答えるヤクモ。


「アタシの“借り”でいいわ」


『…まって。大きいのがくるよ』



「「え?」」



――鼓動のような地鳴り。


低く、重く、心臓よりも遅い鼓動。


最初は遠く。


“地が割れるような”ではなく、“地を割る音”が近づいてくる。


石の地面が波打ち、砂が跳ねる。


訓練所のすぐ外から爆発のような破砕音。


その轟音が全てを塗り潰した。



「迎えが来たな。

 行くぞお前ら。

 鉱竜の元へ案内しろ」



短く、それだけを言い残したイツカは訓練所の塀を越え、音の主の元へ向かう。



「――っとムカつく!

 何往復させれば気が済むの?」

あり得ないという表情のノエル。


「着く頃には夜ね」とセレナ。


「イツカもお前も、言い出したら聞かないところはそっくりだがな」

そう言ったオリバーに「もっぺん言ってみて?」と笑顔のノエル。


「助かった?」と言う私にピエールとファニーが頷く。


「地龍と鉱竜…残業だわ」


溜め息を吐きながらアリアが出入り口から後を追う。



―― 地の底に、眠るものあり。

その真名はナーガ。


水脈の如く長く、岩を抱きて眠り、

夜明けより古き時を、深淵にて見守るもの。


翼は持たず、天を焦がさず、

大地の鼓動と共にうごめくもの。


地を支え、水を導き、地の奥で息づく龍。

大地を整え豊穣をもたらす神の大地を護りしもの。


決していからせてはならぬ。

いかれば山を裂き、河はあふ

大地を溶かし呑み込むものなり ――



「地龍…ナーガ…」

「ピエール。アンタドラゴンハンター目指してんの?」



街の外、奥の山脈から地龍が辿った道筋の地は裂け、一部は隆起し、地表を割ってその頭のみが姿を現していた。



『神の加護を受けし者よ…立ち会え』


「オリバー。そこの夫婦もだが、

 こいつらちょっと借りていくぞ」

地龍の前に立ったイツカがオリバーに向け叫ぶ。


手を上げ答えるオリバーに、安堵した表情のファニー。


「なんだ?ピエール。

 間近で見れなくて悔しいか?」

「鉱竜に続き、地龍まで…

 この国は一体どういう…」

「ピエール。多分だけど

 知らない方がいいんじゃないかな?」

「ファニーちゃんよ、もう遅いな。

 あんたの亭主は首突っ込んじまった」


イツカとともに地龍の背に乗り込む私たちを見送りながら、残った4人は地中を這う龍の軌跡を眺めていた。

――私もそっち側が良かった…。


「…この場合賭けはどうなるんだ?」

「1発入れるか、入れないかだろ?」

「…まだ途中だろ?無効試合だな」


「みんな暇そうね?」

「「アリア!」」


「訓練所の穴修理しておいてね」

「「なんで?」」

「見物料よ。テラ銭払わないつもり?」

「「鬼!」」


「どうやって修理すんだよ!?」


「知らないの?

 コメントで穴は埋まるわ」


「「聞いた事ねぇよ!!」」

「終わるまで他の依頼は回さないからね」

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