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美咲希の一日 上

今回は美咲希目線です!恐らく、もう1話続きます。

 しんと静まり返った部屋に、突然鳴り響くアラーム。それが1日の始まりの合図。

 春休みでも夜更しをせず、早寝早起きを心掛けているのは、とある理由があるのだけどそれは置いておこう。

「ふぁ〜あ……やっぱり朝は辛いわね」

 ほとんどの高校生がそうなのではないのだろうか。私の彼氏の悠眞も朝は苦手らしい。

 部屋を出ると、少しひんやりとした空気が迎えてくれる。それが、布団にくるまっていて高まった体温をいい具合に冷やしている。

「おはよう」

「おはよ」

 階段を下り、リビングに行った私が最初にあった人物は母親の美香だった。肩より少し伸びた髪を下ろしており、私の母を見た同級生からは「似すぎでしょ!?」と言われるぐらいだ。

「美咲希なかなか早起きじゃ〜ん」

「そうでもないわよ」

 素っ気なくそう返すと、母さんはにやにやと笑みを浮かべ、

「ま、私も私の母さんも尽くすタイプだからねー。頑張りなさい」

「余計なお世話よ」

 この人の軽口はいつもの事なのでスルーを決める。

 喉が乾いているので、冷蔵庫を開け、オレンジジュースを取り出す。それをコップ1杯に注ぎ、元あった場所に戻す。

「朝ごはんは?」

「バターロールでいいわ」

「はーいよ」

 そう言って、市販のバターロールを電子レンジに入れ始める母さん。

「そういえば、父さんは?」

「仕事入ったって。ぶつぶつ愚痴こぼしながら出てったわねー」

 これもよくある事だ。

 やがて、電子レンジがチンと鳴り、開けた途端にいい匂いが漂った。パンは私の好物の1つなのだ。

「いただきます」

 それから食べ終わるのに5分もかからなかった。


 朝ごはんを食べ終えた私は、勝手に第2の我が家と呼んでいる家へ向かう。自転車を使えば早く着けるのだけれど、場所を取るので大体は歩きで行く。

 家の前まで行くと、遠慮なくインターホンを鳴らす。大体誰か居るので、無反応ということは無い。

 やがて、ガチャと鍵が開く音がして、中から悠眞が出てきた。

「どぞ」

「ども」

 靴を脱ぎ家にお邪魔させてもらう。いつもならリビングに向かうところなのだが。

「ちょっとトイレ借りていい?」

 今日まだ1度もトイレに行っていないのだ。ちょっと限界。

「おー、いいぞ。トイレの場所の案内は……いらんよな」

「ええ。大丈夫よ」

 ここの常連だからトイレの場所ぐらいは把握している。なので、迷うことなく用を足し、リビングへ行く。

「でさー、その沙友理がねー、おにいに会いたいって言ってた」

「へー。あのぽわぽわ娘が。高校はどこなんだ?」

彩天高校さいてんこうこう

「へぇ。後輩が俺らのとこの高校受けてくれるとかなんか嬉しいな」

 そこでは、悠眞と葉月ちゃんが仲睦まじく会話をしている。そんな光景を見ると、自然と笑みがこぼれてしまう。

「あ、美咲希さんおはようございます」

「おはよう。どんな面白い話をしてたの?」

「沙友理っていう年中無休で眠そうにしている子がいるんですけど、その子も彩天高校受かったんですよ」

 つまりは、葉月ちゃんの同級生複数名が同じ高校を受験して、無事に受かっているんだとか。どんな子達なんだろうなって想像が膨らむ。

「楽しみね」

「だよな。2年とか楽しくなる予感しかしない」

 今からわくわくしているのか、悠眞は微笑んでいる。それにつられて、私も微笑む。

「美咲希さん朝ごはん食べましたか?」

「食べたわ」

 とても少ないけど。とは言わない。そんな事言うと葉月ちゃん作り始めるから。

「おけです。昼ごはんのリクエストありますか? 最近何も作るものが無くて……」

 えへへ、と少しはにかみながらそう言ってくる。

 バランスのいい献立を作り続けているのだ、そろそろネタ切れになる頃合だと思った。

「…………肉じゃがが食べたい」

 何がいいかと悩んでいたのだが、自然とそんな言葉が漏れていた。母さんは滅多に作らないので、小学校の給食以来、食べていない。

 あの少し甘くて、後から来る塩気と旨みがいい具合にマッチする感じがたまらない。ホクホクのじゃがいもと柔らかいお肉が存在感を主張するのだが、それを支えるのはしらたきや人参、玉ねぎなどのサブ的な具材達だ。

 ああ、いけない。想像するだけでお腹が空いてくる。

「肉じゃが……なるほど。頑張ります」

 葉月ちゃんが了承してくれたので、まだ朝だというのにお昼ご飯が楽しみになってくる。

「肉じゃがって久しぶりだなぁ。みんな作ろうとしないんだよなこの家」

「うちもなのよね。なんか作ろうとしないのよ」

 理由があるのかないのかよくわからないけれど、とにかく作らない。だからこう何年も食べていないのよね……


 それから、適当にゲームしたりラノベ読んだりニュースを見たりして時間を潰していった。

 不思議と、退屈だとは思わない。

 それは恐らく、この心地のいい空間が好きだからだろうか。

 キッチンからは換気扇の音とガスの音が連続的に鳴っていて、溢れ出すいい匂いに食欲が掻き立てられる。

「学校無いと暇ね」

 この表現、ちょっと面倒臭い人に使うと「え、学校はあるでしょ?」とマジレスされる。なかなかイラつく。

「そうだなぁ……でも行きたくない気もする」

「どうして?」

「クラス替えだよ。お前らと一緒になれないかもしれないだろ」

 携帯を見たまんま、そう言っているのだが、少しばかり不安の色が見られる。高校二年生になると、文理選択というものが出てきて、それによってクラスが分けられるっぽいので希望はまだある。

 だって私達は凛花意外全員が文系を選択しているし、人数合わせで文系クラスに理系が混じることもあるらしいから。希望は0ではないし、そうやって当たり前のようにおもっていると、案外そうなるものだ。

 …………と言っても、そうならなかった時のダメージは並大抵のものではない。結構泣きたくなる。

「なんとかなるわ。絶対ね」

「そっか。そうだよな」

 私の言葉に、悠眞は納得したように頷く。一抹の不安を残しながら。

「出来ましたよ! やばいですこれ会心の出来ですよ」

 やや興奮気味に肉じゃがを完成させた葉月ちゃん。会心の出来という程なので、更に期待が膨らむ。

「やべぇ。俺もう我慢できんわ」

 悠眞はそう言うと、急いで茶碗を取り、炊飯器に向かっていた。

 それに続き、私もお米を盛り付けにいく。

「「いただきます」」

 お米を盛り付け終えたら、少しそこの深い器に肉じゃがを入れて、食べ始める。

 味は想像以上で、このまま売ってもなかなかの収入になるのではないかと思わせるほどだ。

 黙々と食べ進める私達を、静かに見守る葉月ちゃんが小さいお母さんみたいな雰囲気を出していて面白い。

 しかし、私より少し身長が小さいだけで、胸は大きい。

 私はその……貧相なので少し羨ましいのよね。

 心の中でひっそりとため息をつきながらも、肉じゃがを頬張ると、それはやはり絶品で、自然と箸が進む。

 やがて、葉月ちゃんも食べ始め、私達の間に会話が存在しなくなった。

 聞こえてくるのはコツン、という茶碗と箸が当たった音。それに、バラエティ番組の下らなくて面白いやり取りだけだった。

夏休みも残り少しとなりました。皆さん宿題は終わりましたでしょうか?

自分はラノベを読んでいて全くと言っていいほど終わってません。

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