楽しい時間は過ぎ去る
春休み編の葉月目線は終了しました。次は美咲希目線かな?って思ってます!
「いやぁあああああ!! 死ぬ死ぬ死ぬ!」
これ思ったより10倍はやばい。きゅっと内蔵が締まる感覚が気味悪いし、なんといってもスピード感が恐怖を掻き立てる。
急カーブに入る度、吹っ飛ばされそうになるから辛い。
「ひゃっほー!」
隣の沙友理は楽しそうだ。理解できない。
「もう無理だからぁあああああ!」
私の叫びは虚しく、ジェットコースターが立てる大きな音によって掻き消される。
やがて、車体が停車し、私にも多少の余裕が出来る。
「死ぬかと思った……」
「あははー。葉月こーゆーの苦手なんだー」
あははーじゃないよ……この拷問みたいな乗り物が平気とか意味わかんないな。
「もう乗らない。絶対」
安全バーが上げられ、私達は荷物を置いたロッカーに向かう。
「葉月の意外な一面発見的な?」
「もうっ! からからないでよー」
ニヤニヤと笑う桃華に、涙目になりながら言う。だってほんとに怖かったんだもん。
「よっしゃあもう1回乗るぞー!」
「おー!」
美鈴が気合のこもった声で言うと、他のみんなも同意したように声をかける。
まじかぁ……
今日は大変な1日になるなと確信した私だった。
色々絶叫系を回った私達は、遊園地内のフードコートに足を運んだ。
「もう遊園地なんか来ない……」
「叫んでる葉月なかなか可愛かったよ♡」
ウィンクを決めて舌をぺろっと出している美鈴。可愛いけどイラつく。
そんな美鈴にみんなはうんうんと頷いている。
女子って生き物は束になると手に負えないなぁって言ってたおにいの気持ちが少しだけわかった気がする。
「沙友理と私は荷物見てるから、葉月と桃華なんか買ってきていいよー」
沙友理に確認も取らず、強制的に美鈴は言い放った。しかし、沙友理も肯定しており、適当に空き席を見つけて眠そうにひれ伏している。
「らじゃー!」
特に異論は無いので、桃華に続いて
「らじゃー!」
と返事をした。
フードコートなので、一つの空間に複数の店が存在している。絶叫系でお腹いっぱいだからなるべく軽いものがいいなぁ……
「ねぇ葉月。うどん食べない?」
「いいよー。でも珍しいね、大食いの桃華がうどんなんて」
「あははー……ちょっと酔っちゃって」
小声で言ってきたから、多分他のみんなには知られたくないんだろうな。
「そっか。じゃあ私肉うどんで」
「どうしよ。カレーうどんでいいや」
食券を購入して、カウンターへ向かうと、店員さんが笑顔で迎えてくれた。
「隣に避けてお待ちください」
そう言われて、私達2人が雑談して待つこと3分。うどんが完成していた。
「「うわぁ……美味しそう」」
うどんは今までで何度も見たことがあったが、それでもそんな言葉が漏れるほどこのうどんは美味しそうだった。
結構の自信作なのか、厨房にいる女性の方がはにかみながら笑っている。
垂れそうになる涎を抑えながら、私達を待っていてくれる友人達の元へ向かう。
「やばい葉月。みんなの料理が揃ってから食べようと思ってたんだけどこれ我慢出来ないかもしれない」
「それな。私もだよ」
正直言うと今すぐ食べたい。麺が伸びるし。
「おかえりー。って、何そのうどん!?」
「めーっちゃおいしそー」
「でしょでしょ」
もうこれ写真撮っておにいに送るしかないな。
「じゃ、美鈴と沙友理行ってきていいよー」
何気なく桃華がそう言った。その表情を見ると、安堵しているようにも思える。
「おいーっす」
「かしこまり」
そんな掛け声をして、早足でうどん店に行っている2人。みんなうどんって、結構面白いな。なんて思いながら、写真を撮りおにいに送り付ける。
『なんだお前。喧嘩売ってんのか?』
『いやべつにー?』
『飯テロの罪の重さがわかっていないようだな。一生非リアになる呪いをかけてやるよ』
『リア充が何言ってんの?』
『……楽しいか?』
あ、話そらした。強引な話題転換とは、負けを認めたな。
『うん。絶叫系乗りすぎて気持ち悪いけど』
『絶叫系は降下する時に腕上げてリラックスって先生に習わなかったか?』
『え、そんなこと教えてくれる先生いるの?』
『いやごめん。知らんそんな先生』
バカおにい適当なこと言いやがって。お土産まずい棒にすんぞ。
『そっちはどうなの? ご飯は?』
『美咲希に作ってもらってるよ。くっそ腹減った』
美咲希さん、結構嫁力あるから心配ないかな。
そんなやり取りをしていると、美鈴達がうどんを持ってやって来た。
やっぱみんなうどんか。まぁ確信してたけど。
「ねーねー。写真撮ろー」
「お、いいね」
すると、私以外のみんなはどこから取り出したのか、セルフィースティックと呼ばれるスマホ自撮り棒を構えた。
「誰がとる?」
「じゃ私はしまうね」
「私もしまうから沙友理よろしく」
「了解なのです」
うん。なんか1人だけ取り残された感。スマホで自撮りなんてした事ないよ……
「じゃあ撮るよー。はいチーズ」
軽快なシャッター音が1回鳴り、鮮やかに映し出された私達4人。
沙友理が携帯を自撮り棒から外し、今撮った写真を送ってくる。記念だし、携帯のロック画面に設定しようかな。
「って、やば! 麺のびるよ!」
思い出したように美鈴が言った。美味しそうなうどんなのに麺が伸びてしまっては台無しだろう。
「いただきまーす」
一足先に私が食べ始める。
「あ、葉月ずるい!」
それに続いてみんなが一斉に食べ始める。
うどんは見た目通りの美味しさで、私達は幸せな気分になりながら午後も絶叫系を楽しむのだった。
「うひゃぁ、つかれた」
そう言ったのは美鈴。
午前中はバカみたいに絶叫系を乗り回していたのだけど、午後は観覧車などのゆっくり出来るアトラクションにも乗り、比較的平和だった。
そして今は駅のホームにいるわけなんだけど。
ハイテンションのまま1日を過ごしたみんなはお疲れの様子だ。
「もう、歩けない」
「みんなはしゃぎすぎなんだよー」
私は体力を温存していたので、そこまで疲れていない。
それから程なくして、電車が来た。それに乗り込み、空いてる座席に美鈴、桃華、沙友理が並んで座り、私は真ん中の桃華の前でつり革を掴み、堂々と見下している。
「駅に着いたら起こしてあげるから寝てていいよ」
「ごめんねー。今度ジュース奢るから今はそうさせてもらうよ」
桃華が最後の力だと言わんばかりに声を出し、そのまま目をつぶった。ほかの2人は桃華に寄りかかり眠っている。
電車は空いていて、この車両は私達の他には4人ほどしかいない。私が立ってる理由は単純にこの子達を見下していたいから。って言うのは嘘で、この方が荷物とか見やすいし起こしやすいからなんだよね。
中学校での生活は辛いことも苦しいことも沢山あったけど、それも含めて全てがいい経験って言えるだろう。今思うととっても楽しかった。高校は離ればなれになる……と思ったけどそうでも無くて、実はみんな同じ高校を受験して合格してるんだよね。でも中学の制服を着て、あの校舎で生活することももう出来ない。中学校生活が楽しいと思えるのはみんながいたからだ。だから。
「ありがとね、みんな」
小声でそう呟いた。
すみません、少し遅れましたね。
8月も中盤。学生の皆様は宿題終わりましたでしょうか?自分は終わってません。
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