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卒業旅行

遅れました。すみません

今回は葉月目線です。

「ふぁ〜……」

 先日、志望校に受かり卒業式も無事に終えた私、川崎葉月は、いつも通り家事をこなしていた。

 昨日少し夜ふかししてしまったので、少し眠い。

「後は俺がやるよ。今日予定あるんだろ?」

「うん。よろしく」

 今日は卒業旅行として、クラスの仲のいいメンバーと遊園地に行くのだ。それが夜ふかしの理由。

 後の家事は私の兄である悠眞に任せ、昨日のうちに準備しておいた荷物を持って家を出る。

「いってきまーす!」

 一刻も早く合流したいため、若干急いで家を出ようとする。

「あー、待て待て」

「ん? どったのおにい」

「これ」

 そう言って渡されたのはモバイルバッテリーだった。

「私ひとつ持ってるよ?」

「念のためだ。持ってけ」

 強引に渡されたそれを、リュックの中に入れる。

 他に忘れ物はないので、今度こそ家を出る。集合場所はここから数百メートル離れている駅だ。

『もうちょっとで着くよ』

 駅の駐輪場は有料なので、駅から近い美鈴の家に自転車を置かせてもらうことにしたのだ。

『おっけ〜。家の前で待ってるね』

 信号待ちを利用してメッセージを送り、それが青になったので急いで携帯をしまう。

「おっはー。元気してた?」

「うん。美鈴も元気そうだね」

 まだ気温が低い時期なので、美鈴は厚めの赤いジャンパーを羽織っていて、ホットパンツ+黒タイツと言うなんとも色っぽい服装をしている。

 そういう私は、薄いシャツの上に薄黄色のセーターを来ていて、膝下まである長めのスカートにハイソックスという無難な組み合わせだ。

「じゃ、行こっか」

 自転車をここに置いておくので、歩かなければならない。と言っても、ほんの数分だが。

「いやー、卒業したねー」

 歩き出して数秒、突然美鈴がどこか切なげに呟いた。

「うん。ほんと、色々あったよね」

 中学の服装を初めて着た時の興奮は今でもよく覚えてる。期待と不安で押し潰されそうだったっけ。

 それから最近の流行りのファッションだとかどの店の料理が美味しいかとか雑談をしながら駅へ向かった。

「あ、葉月ー! 美鈴ー!」

 改札付近のスペースで、少し茶色いショートカットが特徴の同級生、安藤桃華(あんどうももか)に呼び止められた。この子も今日一緒に行動するのだ。

「はいはーい! 美鈴でーす」

 テンション高いなぁ……帰り際絶対寝るやつじゃんこれ。

「あれ、沙友理(さゆり)は?」

「まだみたいだよ。もうすぐ着くって言ってた」

 私の問に答えたのは桃華だった。電車が来るまでまだ10分はあるので、遅刻はしないだろう。

「よーっす。みんな元気してたかい?」

 噂をすれば影。沙友理が私達を見つけて声をかけてきた。

 毎日どの時間でも眠そうにしていて、とてもマイペースである。口癖は眠い。

「じゃ、行こうよ」

「うんうん。行こ行こ」

 改札を通り、駅のホームへ向かった女子5人。悠眞達といるよりカオスな感じは無いが、それ以上に騒がしい。大体桃華と美鈴が楽しく喋って、私と沙友理は後ろで見守る。

「そーいえばさー。悠眞先輩って元気ー?」

 眠そうな雰囲気とまったりとしている口調。こちらも眠くなってしまう。

「元気だよ」

「そーなんだー。また会いたいなー」

 沙友理も美鈴同様、中学2年の時におにいと同じチームになって、少々喋るようになったのだ。みんないい人だって言うけど、あんないい加減なやつのどこがいいのかさっぱりわからない。

「そのうちまた会えるよ」

 確信は無いけど、なんかそんな気がする。それで、その勘はほぼ当たるんだよね。

 それから、電車がやってきたので2人が座って2人は立つ謎のフォーメーションで乗り込んだ。

 3駅ほどで座る人を交代し、みんなが2回ずつ座った時、丁度目的の駅に着いた。

「こっからバスだー!」

 桃華が元気よく叫んだ。

「バスだー!」

 それにつられて、私も叫ぶ。人の目線がちょっと痛いけど、もう会わない人たちばかりだからどうってことは無い。

 駅からバス停までの距離はそれほど遠くなく、談笑しながら歩いているとすぐ着いた。

「ひゃー。冷え込むねー」

 マフラーを少し下げ、悴(かじか)んだ手に息を吹きかける沙友理。何となく小動物を思わせるので可愛らしい。

 照りつけるような日光とは裏腹に気温は低く、冷たい風が弱く連続的に吹き抜ける中、私達はバスを待った。


「うわぁ……」

 遊園地に着いて真っ先に目に映ったのはどでかいジェットコースター。

 めちゃくちゃ高いところから急降下して物凄いスピードで駆け巡っていく。ジェットコースターが起こす摩擦による音と乗客の悲鳴が聞こえてくる。

「乗りたくないなぁ」

 ついつい声に出てしまった。でも事実だしいっか。

「あれ乗ろ!」

「いいねいいね」

「ぜっきょー。頑張る」

 そんな私とは真逆の思考が約3名。もうこれ行くしかないかぁ……

 早速入場券とフリーパスを購入し、ジェットコースター乗り場へ向かう。

「こっから50分待ちだってー」

「うーむ……仕方ない。並ぶぞ皆の者!」

 沙友理が伝えて桃華が決断を下す。私達はそれに流されるままだ。みんな乗る気だし今から乗りたくないなんて言っても無駄だろうし。

 無になって並び続けること40分。自分達の順番がそろそろになると流石に無になることは難しい。どっくんどっくんと心臓が飛び跳ね、上腹部が切なくなる。

「あれあれ葉月。もしかして怖いのー?」

 煽ってくんな美鈴。

「そ、そんなわけないじゃん」

 声が震える。でも認めたら余計怖くなるし、気張らなきゃ。

「ふっふーん。葉月一番前ね」

 従業員に案内されたのだが、運がいいのか悪いのか一番前の席に座れることになったのだ。

「じゃー隣は私がー」

 沙友理にがっちりホールドされ、強制的に一番前に連れていかれる。

「あは……あはは」

 失笑するしかないよこんなの。恐怖で狂ったのかわかんないけど笑いが止まらない。

 安全バーをしっかり閉めて、コースターが動き出す。

 ガラガラ、と僅かに振動しながら斜面を登っていく。

「ねぇ高くない? これ高くない?」

「だいじょーぶ。降下する時腕上げてリラックスしてれば問題ナシ」

 いやそんなこと言われてもいきなりできるわけないじゃん!

 って叫べればどれだけいいだろうか。もう恐怖で言葉も発せない。

 車体はゆっくり降下へと向かう。少し進むだけでも恐怖が増してくる。

 そして、降下寸前になった頃、私は悟った。

 ――ああ、これもうダメだ。

先日無事に1年編が終わりました。

と言っても、少し展開が急ぎすぎてる気がするんですけどね……少しでも楽しんでいってくださったら光栄です

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