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いざ東京へ 下

暖かい目で見ていってください

「ここ本いっぱいあるね!」

 しばらくして、マルが戻ってきた。

 ……10冊ほどの本を抱えて。

「えっと……マル。この先も結構店まわるぞ?」

 どんだけ買うんだよとツッコミを入れる前に、俺は驚愕してそう言っていた。

「うんっ! 今日ね、パパから貰ったお小遣いの半分持ってきたの」

 うん。貰った小遣いの半分ね。だからってその量はおかしいと思うんだよね俺。

「ちなみに、おいくらかお聞きしてもよろしいでしょうか……?」

 恐る恐る聞いてみることにした。気になるじゃん。

「うーんと、ゆきちさんが3人かな」

 10歳でその表現使うとは。にしても、諭吉が3人?

 元の小遣いは6万ってことか。ぶっ飛んでやがる。

「よしわかった。じゃあ、会計しに行くか」

 小学生1人にこの量を会計させると誤解が生まれそうだしな。

「うんっ!」

 マルもそれでいいみたいなので、会計へ足を運んだ。

「5616円になります」

 おお、結構するな。

 それを聞いたマルは俺に諭吉さんを渡してくる。

 そんでもって俺はそれを店員さんに渡す。

「1万円お預かりします」

 店員さんはそう言うと器用にレジを操作して、お釣りを渡してくる。

「4384円のお返しとなります」

 俺はそれを受け取り、マルへ渡す。

「ありがとうございました~。またのご来店お待ちしております」

 この階には漫画しか置いていないので、俺は買うものがない。

「じゃ、2階行くか」

 そう、上の階にはラノベがたくさん置いてあり、俺にとっては天国のような場所なのだ。

 人混みをかき分け、なんとか階段にたどり着いて上に行く。

「よし、上がるぞ」

 幸い、まだマルとははぐれていない。手を握り続けているおかげだろうか。

 階段は店内の暖房が行き届いていないため、ひんやりしている。

 しかし、不思議と寒くはなく、むしろ火照った体を冷やすにはもってこいの気温だ。

 あまり長い時間いると寒くなりそうだが。

 そういえば俺は大きめのバッグを装備していて、マルの買った漫画もその中に入れている。

「ついた。ラノベコーナーだ」

 もう既にひゃっはーしそう。

 近所の本屋で見知った文庫の本があるのだが、その量が桁違いだ。先程同様、俺の知らないタイトルや作家がちらほらといる。

「買いたいものはあるか?」

「ううん。特にないよ。ラノベはそんなにわかんないから、お兄ちゃんと見たい」

「おっけー、じゃあ行こうか」

 俺らはこのフロアを軽く一周して、気になるタイトルを探した。

 大体買うものを決めていた俺も、興味を惹かれるタイトルがあったので、買うものが増えそうだ。

「これ面白そう……」

 マルも順調に探せているみたいなのでよかった。

「お、それ俺も気になる。買ってみようか」

 俺が買えば、まだ俺んちにいるマルも読めるだろうと思い、迷わず買い物カゴへぶち込む。

 もちろん丁寧にだが。

 それから数冊手に取って、あらすじが面白かったらカゴへぶち込んでいった。

 前回東京へ来た時に買った本の続きを買ったりして、合計は8冊になった。

「合計5054円になります」

 先程の店員さんがおっとりしていた女性だったのだが、今回の店員は体がデカくてずっしりしている柔道でもやってんじゃないのかと思うほどの人だった。

 声も低くてなかなかにいかつい。

 少々気圧されながらも、俺は6千円を出す。

「6000円お預かりします。946円のお返しになります」

 手際よく落ち着いてレジを打っているので、なかなかのベテランなんだな。

「またのご来店お待ちしております」

 さっきも聞いた台詞を言って、軽く頭を下げる店員さん。

「なんか、凄く怖そうな人だったね」

「そうだな。街中にいたら半径3m以内には近づきたくない」

 軽口を叩いて笑い合う。平和だなぁ。

 階段を降りて、人混みをかき分け、外に出る。

 昼間なので、ぽかぽかした日光とひんやりした風が混ざる。俺の好きな天気だ。

 そんなことを考えていると、隣からぎゅう~と可愛らしい音が聞こえてきた。

「そろそろご飯にしようか」

 昼過ぎだし、無理もないよな。

「どこに食べに行くの?」

「コンビニだ。おにぎり安いし」

「おお……! うわさのコンビニに行くんだ!」

 やっぱ珍しいのかな。それにしても、“うわさの”ってなんなんだ?

「ここからだと……10分ぐらいか」

 スマホの地図アプリで最寄りのコンビニを検索した俺は、その情報をマルにも伝えた。

「10分……頑張る」

「よし。お互い力尽きる前にコンビニへ行こう」

 実は俺も限界だったんだよな。マルがお腹鳴らしてくれて助かった。


 無事力尽きる前にコンビニについた俺らは、店内に入り、食料を探した。

 と言っても、コンビニなので食料は余裕で見つかるのだが。

「何食べる?」

「おにぎり」

 即答か。コンビニのおにぎり美味いもんな。

「味は?」

「ツナマヨ3つ!」

 こっちも即答か。

「おっけ。じゃあ俺は鮭と明太子で」

 合計5つのおにぎりを買い物かごに入れて、レジへと向かう。

 俺の計算では575円程度になる。

 消費税8%って、計算めんどくさいな。

「会計575円となります」

 合ってた。計算には自信がないので答えに自信が持てなかったが、よかったよかった。

 俺は財布から600円も取り出すと、そのまま商品の隣に置いた。

「600円お預かりします。25円のお返しとなります」

 もうこの台詞何度目だよ……いい加減飽きてきたな。

「あ、すみませんレシート大丈夫です」

「ありがとうございます」

 捨てるのに礼を言われることが俺の人生最大の謎だと思う。

 知ってる人がいたら教えて欲しいな。

 俺らは店を出て、すぐにおにぎりを食べた。

「お兄ちゃん、これ」

 自分のおにぎりの値段を見て、その合計を俺に渡してくる。

「いや、いいよ。俺の奢り」

「いいの?」

「おうよ」

「ありがと」

 そう言って笑いかけてくる。いい子だよなほんとに。

 俺は2つのおにぎりをさっさと食べたが、マルはゆっくり頬張っている。

 そんなにツナマヨ好きなんだな。

 マルがおにぎりを1つ食べ終え、2つ目に手を伸ばした瞬間、マルが首元にぶら下げていた携帯が鳴る。

 一般的な着信音で、SNSの通話機能によるものだとわかる。

 それにテンパったマルは、慌てて応答を押していた。

「わわっ、電話かかってきたっ」

「落ち着けマル……ええと、美咲希さんってことは美咲希か」

 なんでこのタイミングで電話をかけてきたのだろうか。なにか起きたわけでもなさそうだしな。

『私よ。今何してたの?』

 特に何もなさそうだ。よかった。

「コンビニでおにぎり買って隅っこに移動して食べてる最中」

『そう。どの味?』

「俺が鮭と明太子。マルがツナマヨ3個」

「はむっ。ふごふおいひいれふ」

 いつの間にか2個目のツナマヨを食べている。

「マル。ちゃんと飲み込んでから喋ろうな」

 苦笑いを浮かべながら俺はそう言う。

 やがて、マルがツナマヨを飲み込み、

「凄く美味しいです!」

 と、元気よく言った。

『よかったわね。楽しい?』

「はいっ! ラノベも漫画もたくさん買いました!」

 そんな2人のやり取りを聞いていると、自然と笑みがこぼれる。

「じゃ、俺らそろそろ行くわ。またな」

『気をつけてね』

 電話が切れた後の音って、何だか切ないよな。

 もう3つ目のおにぎりを食べ終えたマルは、元気100倍と言うほど回復していた。

 これなら多少振り回しても平気かな。

「次はゲーセンに行くぞ」

 ここ最近何故かやる気出てしまって、このままだと爆発してしまいそうなので、今日行くことにした。

 多少うるさいが、携帯とイヤホンを繋いで曲を聞いていれば気は紛れるだろう。

「ゲーセン……?」

 マルが首を傾げているが、これは説明するより行ったほうが早いだろ。

 そうして俺らはゲーセンへ向かった。

今日は月曜日です。これを読んでいる人は月曜日じゃないかもしれませんが。

作者の住んでいる地域では、連日30℃を越えています。水分補給を欠かさずに。

夏は花火大会や祭りといろいろリア充にとって嬉しい行事が盛り沢山です。自分は部屋にこもって爆裂魔法を詠唱し続けます。

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