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いざ東京へ 上

終わりが少し雑ですが、暖かい目で見ていってください。


 家から駅へ向かう途中、自由に連絡が出来ない妹が心配になり、美咲希にメッセージを打っていた。

『暇か?』

 すると、既読は即行で付いて、

『すごく暇よ』

 と、返ってきた。

 ならいい丁度いいか。

『頼み事があるんだけど』

 言葉を濁そうかと思ったが、俺の脳では捻った文章が思い浮かばず、結局正直なことを言うことにした。

『実はマルと東京に行くんだけど、葉月に携帯貸してもらってな。それで、あいつ退屈しないかなって思って』

『わかったわ。悠眞の家に行けばいいんでしょ?』

 察しがいいな。恐ろしい程に。

『そゆこと。頼めるか?』

『任せて』

 そう即答する彼女に、頼もしさを覚える。俺もなにかして上げられたらいいんだけど。

「~♪」

 マルは俺の隣で鼻歌を歌っている。そんなに楽しみなのかな。

 なら誘ってよかったと心から思う。

「なにか、買いたいものとかあるか?」

「えーっとね、面白そうな漫画が買いたい」

 そう来たか。

 漫画はSNSで話題のものとかを目にしているので多少の知識はあるが、本命はラノベなのでそこまで詳しくはない。

「そっか。見つかるといいな」

 ここで漫画はわかんねぇなと言ってがっかりさせてはいけないので、なるべく期待値を下げないように言葉を選んだのだが、

「うんっ! 楽しみ!」

 良かった。むしろ上がっている。

 それから、駅に着くまでマルは鼻歌を歌い続けた。


「ありゃ、そんなに混んでないな」

 東京行きの電車なのに、そんなに混んでいない。もう少しいると思ったんだけど。

 ここが少し田舎だからだろうか。なんにせよ、混んでいないのならラッキーだ。

「ここから何時間で着くの?」

「そうだなぁ……大体1時間ぐらい」

 1回乗り換えて新宿へ行くのだが、その変の説明はややこしくなるので省略。

 車内はほんとに空いていたので、俺らは近くの座席に腰掛ける。

 家から駅までなかなか距離があるので、少し疲れた。

「どこで降りるの?」

「5駅先の所だよ」

 そこが乗り換え地点だ。

 発車まで時間あるし、何しようか。他の乗客さんに迷惑はかけられないしな。

「わぁ……きれい」

 しかし、マルは外を眺めている。

 俺もつられて外を見てみると、田んぼが広がっていた。別に珍しい光景ではなく、むしろこの辺だと当たり前に見られる。

 田植えはまだ先なのだが、貯まった透き通るような水が反射して空を映し出し、なんとも幻想的な風景を作っている。

 幼少期からこれを見ているが、毎度毎度美しいと思う。

「これが夏になると稲が育って鮮やかな緑色で埋め尽くされるんだ」

「いね?」

 おっと、そうか。マルの出身はイタリアだったな。都会の方なのかな?

「米は知ってるよな?」

「うん」

 ま、俺ん家に来てからも米は毎日食べてるもんな。

「元は植物で、その果実、要するに実が俺達が食べている米なんだ。で、その植物のことを稲って言うんだ」

「ほぇ~。そうなんだ。初めて知ったよ」

「マルの住んでるところって、どんな所なんだ?」

 初めて知ったというので、田舎ではなさそうだ。

「えっとね、ちょっと都会のじゅうたくがい」

「畑とかは?」

「ないよ」

 なるほど。

「目に焼き付けとけよー。この街は嫌という程畑とか田んぼがあるからな」

 都会か田舎か問われれば、田舎と答えてしまうような街だ。それに、農家さんはほとんどが高齢者。

 話しかけようと思えばいくらでも出来る。

「うんっ! 自然いっぱいでいい街だね」

 この子は少し変わっている。俺の知り合ってきた中でも、この街をいい街と言った人はいない。

 お世辞だろうか。しかし、それでも嬉しい。

 そんなやり取りをしていたら、突然ドアがガシャンと音を立てて閉まった。

 そろそろ出発するのだ。

 マルは膝を立てて外を眺めていたので、

「マル。靴脱ごっか」

 と、周りの人の迷惑にならないように指摘をする。

 別にやましいことなんてないのだけど、周りから見ると俺らってどんな風に捉えられるんだろう。

 兄妹は……ないな。髪の色が違いすぎる。なので身内系は無さそうだ。

 ……高校生と小学生。この組み合わせって、結構やばくないか? 警察沙汰にはならないよな?


 俺の懸念は無駄だったようだ。

 マルが俺にくっついているからかどうかわからないが、通りゆく人たちに暖かい笑顔を向けられる。

 その光景にほっと胸をなで下ろす。いくらやましい気持ちは無いとはいえ、周りから誤解されたら即終了だもんな。

「あと少しだぞ」

 正確には、新宿まであと少しだ。

 今日の俺らの目的地は、秋葉原。アニメショップが沢山あるからだ。

 なので、新宿から山手線に乗り換える。

「東京って、どんな所なんだろう……」

 想像を膨らませているマル。

「すごいぞ。とにかく人がいる。それにな、建物がでかい」

 俺らが住んでいる街はビルがないので、見上げることはそんなに無いのだが、東京は首が疲れるほど見上げないと建物の全貌が見えない。

 東京スカイツリーと呼ばれる電波塔は根元から見ると海老反りになる。

 ……まぁ、今日はスカイツリーには行かないのだが。

「わぁ……楽しみ!」

「あはは。何回目だよ」

 どんだけ楽しみなんだか。

 でも、そこまで楽しみにされてるんだから、しっかりエスコートしないとな。

『次は新宿。新宿。お出口は……』

 車内アナウンスが鳴り渡り、俺らは次がどこなのかを知る。1人で来るより、時間が過ぎるのが速かったな。

「マル。しっかり手を握ってろよ」

 はぐれるといけないから、手を握ってた方がいいかなと思ったのだが。

 何故かマルは頬を赤らめて遠慮がちに手を握ってくる。

 そんな俺らは、駅のホームへ飛び込んで行った。


 電車内は人が少なかったのにホームに飛び出してみると嫌という程いる。

 こんなに人がいると、やっぱり世界は広いんだなと思う。

「ふぇぇ……人多い」

 マルも同じようだ。

 なお、手はしっかり握ったままである。

 俺達は改札を出ると、アニメショップへ向かった。昼まで時間があるし、少し時間を潰していこう。

 マルも反論はないみたいで、「お兄ちゃんに全部任せる」と言っている。

 今更なんだけど、こんなに人が多い場所でお兄ちゃんって呼ばれると少し恥ずかしいな。

 駅から歩いて数分で1店舗見つけ、俺達は中に入る。

「わぁ……すごい」

 俺んちの近所の本屋とは比べ物にならない品揃えだ。流石東京流石秋葉原。

「うおお! この本売ってんのか!」

 少々暴走気味の俺は、辺りをくまなく見渡す。

 近くにある本だけでも、俺の知らないタイトルや作者名が見える。いやぁ、どれも気になるな。

 そう思っているのは俺だけではなく、マルもそわそわしている。

「よし、マル。買いたい本探してきていいぞ。俺はここで待ってるから、選び終わったら俺のとこに来てくれ」

 俺と一緒だと行動が限られてしまうだろう。小学生だし少し不安な部分はあるが、俺がちゃんと見張ってれば大丈夫だろ。多分。

「うんっ!」

 短くそう言って、マルはパタパタと人混みに消えていく。

 全く、ほんとに犬みたいだな。

投稿が遅れてしまいました。すみません。

皆さんは夏休みをどうお過ごしでしょうか?外に出て遊んだり、家の中で涼みながらゲームしたり、様々だと思います。夏バテや熱中症に気をつけてお過ごしください

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