4
ゼノアは魔王について全てを話した。
魔王はどうやら最初からオルベリアを狙っていたらしい。
父と義母、そしてアリアとゼノアのシェリア王女に対する劣等感、嫌悪感、嫉妬心などすべての負の感情が終結していたからだとゼノアは言った。
ゼノアとアリアは義母である先王妃のシェリアとシェリアの母に対する対抗心や嫉妬心から恐ろしい虐待を受け続けて育ったという。
「それを俺たちは誰にも話すことはできなかった。ものすごく恨んだよ。父も母もそしてお前のことも。だけどお前を恨み切れなかった。それはお前がオルベリアを愛していたからだった。オルベリアの民を、土地を山を湖をすべてをお前は愛していた。それは俺と同じだった」
そういってゼノアは窓の外へを視線を馳せた。
「この窓からも見える景色がこんなに荒れ果てていても俺はこの土地を愛している」
「お兄様……」
「アリアは違った。お前を憎悪していた。だからアリアにとりついたんだ。魔王が」
やはり……
「お前がこの国にいたころはお前が何かの枷になって魔王は近づけなかったのだと言っていた。それがお前がナダルに嫁に行ってしまってからアリアの心に魔王が取りついた」
「ナダルへ刺客を送ったのはアリアですね?」
「そうだ。俺は知らなかった。ダニエルからの依頼だと偽って刺客を雇ったとあとから笑いながら言ったよ。ナダルのユージーンから打診があって王とお前を殺す手筈を整えたと。お前が死んだと聞いて俺は絶望した。だけどそのころにはアリアを通じて俺の心にも魔王が侵入しはじめていたんだ。それに気づいた時にはもう遅かった」
瞳が赤く変貌し、自分の意思とは関係なく、部下に命令を下している自分に気づている間はまだよかったのだと兄は言った。
「何も記憶もないのに自分の目の前で人が転がり死んでいることに気づいた時にはもう絶望しかなかった。アリアはもっとひどかった。もうほとんど自分の記憶なんてなかったんじゃないかな?」
「だけど、最後に記憶をとりもどしたわ。お姉さまが憎かったと言ったから」
「え?」
ゼノアが顔をシェリアのほうへ向けた。
「そうか。記憶が少しでも残っていてよかった。アリアがもしこの深い睡眠から目覚めたときに、自分がやったことを懺悔できるためには記憶がないといけないからな」
そんなアリアは深い眠りに落ちたままだ。
「少しすっきりした。お前には最初から真実を打ち明けるべきだった。それができずにずっと恨みだけが俺の中で育ってしまった。これからは素直になる。どうか俺を助けてくれ。オルベリアをもう一度再興したい」
ベッドの上に正座したゼノアは深く頭をベッドにつけた。
「お兄様」
「もちろんデュランダル陛下にもちゃんと頼むから」
「そうですね。ちゃんと頼んでください」
「ああ」
その後、ゼノアはデュランダルの前で土下座し、そして、次の日、荒れ果てた王宮の前に立って、国民へと懺悔した。
「魔王に屈した自分がもう一度オルベリアを再興させる。必ず。愛するオルベリアをもう一度美しい国にするのに協力をお願いしたい」
深々と頭をさげたオルベリアの王、ゼノアへ国民たちは最初はパラパラと、そして最後は大きな拍手が送られた。
ゼノア王はその日から死ぬ気で働いている。
美しいオルベリアの再興のために。




