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「よかったの?ダニエル」
十歳まで王城に閉じ込められていたから世界の景色を見てみたいというロレッタの意向のもと、オルベリアからゆっくり馬車で帰国途中のダニエルとロレッタだ。
デュランダルとシェリアは聖獣たちとともに移動魔術で二週間前にキルギアへ戻っている。
「何がです?」
「わたしについてきて」
「僕は姫様の騎士ですから」
「シェリアを好きなくせに?」
ロレッタが言うと、ダニエルは一瞬だけ目を見開いた。
が、涼しい顔を続ける。
まさか10歳の少女にまでばれてしまっているとは…
だが、これは一生胸の奥にしまっておくべきことなのだ。
デュランダル陛下を尊敬している自分はシェリア王女を女性として愛しているとは絶対に言葉にしてはならない。
たとえばれたとしても。
「シェリア王女は昔わたしの婚約者だった。それだけですよ。今は尊敬する君主の伴侶となる方です」
「ばかねぇ。わたしの騎士になったらずっとシェリアと陛下のいちゃいちゃを見て過ごさないといけないのに。だからオルベリアに残ってもいいとわたしは言ったのに」
はははと内心笑った。
それは確かだ。
だけどなんでだろう?
キルギアという魔力の国でもし低級魔獣に出くわしたら自分みたいな魔力をもたない人間には命取りになりかねないのに、それでもキルギアに行こうと思った。それはデュランダル陛下を尊敬してしまっているのもあるけれど……
もしかしたら俺は……
「姫様を守るのが僕の使命ですから」
「あなたは魔力がないのよ? キルギアでは危険だわ」
「大丈夫です。僕はずっと姫様と一緒にいますから。姫様が魔獣は追い払ってくれるじゃないですか? それで僕が人間を追い払う。これでおあいこですよ」
そういうとロレッタ姫は少し大人っぽく肩をすくめた。
「ばか」
◇
この護衛騎士がこの旅路で自分を守ってくれた時、剣をふるって悪い人間たちを倒してくれた時、一瞬ときめいたことは内緒だ。
本当は一緒にキルギアに来てほしいと思っていたことも内緒。
「そういうんだったらもう逃がさないわよ。一生わたしのもとで働きなさい」
「はい。望むところです」
「ところで、ここはどのあたり?」
「マルコー領を抜けて、カルザスに入りましたね。治安が悪いから足早に通り過ぎましょう。まぁ襲ってきても僕がいるから大丈夫ですけど?」
「ふん」
二人の旅はあと一週間ほどで終わる予定だ。
それが終わると、キルギアでは大規模なデュランダルとシェリアの婚礼が行われる。
それまで二人きりの旅だ。
ロレッタは楽しむことにした。
この魅力的な護衛騎士との旅を。




