2
リーグ公爵家のタウンハウスは王宮からはそう遠くない場所にあった。王宮を出て王都を馬車で走りながらも、あまりの惨状にみなは息をのんだが、リーグ公爵家は少し壊れている場所もあったが、おおむね無事だった。
それぞれ怪我人たちを部屋に案内し医師を呼んでくれ、至れり尽くせりだ。
デュランダルはやはり肋骨の骨折で、回復魔術が得意な聖獣が魔術を施してくれて、歩けるまでに回復した。だが、ボキッと数本いってしまっていたようで、回復魔術だけでは完全に治らないと言われ、安静にベッドに寝かされている。
それにしても数本肋骨が折れても立ち上がったりしていたし、よく普通にしていたものだ。
シェリアはあらためてデュランダルのすごさを認識した。
やはりすごい人なのだ。
そして今も回復魔術で回復すると、ベッドから半身を起こして部下に対して指示を出している。
なんと言う精神力。
わたしには政治を動かす頭はあってもこう言うふうに人を動かせるカリスマ性はない。
この人のこう言うところは王になるべくしてなった人なのだと改めて認識した。
そして惚れ直した。
「シェリア。俺はもう当面は大丈夫だ。君は兄の元へ行ってこい」
デュランダルが気を遣ってくれたのでシェリアは兄と妹が寝かされている部屋へと足を運んだ。
回復魔術が得意な聖獣がゼノア王とアリア王女へも、回復させる魔術を行使したが、首を横に振った。
『この者たちは精神を魔王に犯されていたから体の傷は回復したが精神の傷は自分たちの力でしか回復できない。目覚めるのを待つしかない』と。
シェリアはそれを聞き、ぐっと唇をかみしめた。
自分をはずかしめ続けていた妹が母親に虐待されていたと知り、そして先ほど聖獣が体を見た際に兄にも背中に虐待の跡があるのが見えた。
自分だけがつらい思いをしていたと思っていたが、そうではなかったのだ。
この兄妹たちもつらい思いを…
今更兄がオルベリア王国を愛していたことを知った。
けれどそんなの考えればわかることだった。
父と義母が死んだあと、彼がわたしに助けを求めてきた時点で。
オルベリアを救おうと手を差し出してきたのは兄だったのだから。
兄の横に座って、そっと手を握ってみた。
冷たい。
だけど、生きている。
生きていてくれてよかった。
と……
兄のまぶたがぴくっと動くと、ゆっくりと瞼が開いていった。
気が付いたのだ。
開いた瞳の色が青かったのでシェリアはほっとした。
ゆっくりとシェリアのほうへと向き直る。
「シェリア」
声がかすれていた。
「お兄様。魔王は死にました」
少し目を見開いて、そして天井や部屋のまわりを見まわしたゼノアはふーっと息を大きくはいた。
「俺は生きているのか?」
「はい。生きなければならないでしょう?」
「え?」
気が付いてすぐに申し訳ないとは思ったが、責任感を持ってもらわなければならない。
「オルベリア王国を再建できるのはあなたしかいません」
「そ、そんなことは……俺は……」
「あなたがオルベリアをこんなにしてしまったんです。アリアが発端かもしれませんが、それを受け入れたのはあなたです。あなたが……」
泣いて涙で何も見えなくなってきた。




