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半年ぶりにここにきてシェリアは周りのあまりの人気のなさと殺風景さに驚きをかくせなかった。
「何? ここは」
「かなり荒れ果てているな」
王宮の前には警備の者すらおらず、中はがらんとしている。
「それに中から強烈な魔力を感じる。今まで感じたことのないような負の魔力だ」
『ああ。われらは負の感情から生まれるが、魔王はそれを育てるのだ。われらはそれを浄化する。だから魔王はわれらの敵なのだ』
「中に入るしかなさそうだ。シェリア。案内を頼めるか?」
「任せてください」
ひとり前に立とうとすると、デュランダルが許さず、シェリアの手をとった。
「ダメだ。手をつながないと。ひとりで行こうとするな」
「はい。わかりました」
ゆっくりと中に進む。
魔王は早く倒さなければならない。けれど、絶対に焦ってはいけない。
「だが、魔王は誰なのだ?ホワイトサーベルは人にとりつくといっていたな。誰かにとりついているとすれば…」
間違いない。
「あーら。お姉さま」
「アリア」
青かった髪も瞳もすべて赤くなっている。
「なんと…アリア王女か。魔王の本体が中にいる」
デュランダルは言い切った。
聖王だからわかるのだろう。
「アリア。どうしてこんなことを」
「あーら。何を言っているの? わたしはなんにもしてないわ。お姉さまが悪いのよ。なんでもわたしより優れてるから」
「何?」
「わたしがいくらがんばったってねぇ。お姉さまには何も勝てない。マナーも、勉強も、何も。お父様にはお前とシェリアが反対に生まれたらよかったといわれ、お母様からはいつも背中をぶたれた」
何それ。背中をぶたれたって?
初耳だ。
「小さいころから好きだったダニエルは知らないうちにお姉さまと婚約してるし、そのくせに、オルベリアを救うからダニエルとの婚約を破棄するですって? 笑わせる」
一緒に来ていたダニエルのほうをアリアは愛し気に見つめた。
「あなたを愛してたのに。あなたはずっとお姉さまにとらわれたままだった。死んだお姉さまを探しに行って帰ってこなかった」
ダニエルは苦渋の表情を浮かべている。
「あなたを好きにはなれない。僕は……だからオルベリアを去った」
「あーーーーー。苦しい。こんな人生ならもう捨ててしまいたいぃ」
喉をかきむしるように苦しがる。
ゼノア王と同じだ。
「早く殺してよ。もう苦しくて息ができない」
そのアリアの言葉にシェリアは迷わず言った。
「では殺してあげるわ。デュランダル陛下。こんなバカなアリアを刺してください。お願いです」
デュランダルの聖剣は兄を殺さなかった。
だからきっと……
デュランダルはそのシェリアの思いをくみ取ったのか、ホワイトサーベルとともにアリアの胸に聖剣を刺しこんだ。
「ぎゃーーーー!」
悲鳴に近いような声が聞こえる。
アリアの体が青い光に包まれ、そしてその中から巨大な真っ赤なドラゴンのような形をした魔獣が現れた。
「これが……魔王」
デュランダルの口角がにやりとつりあがる。
「お前が魔王の本体だな」
『けっけっけっけっ』
奇妙な声を吐きながら、王宮の天井を飛び回り火を吐いている。
その姿はまるでドラゴン。




