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「シェリア。わかっているな。必ずやつは現れる。いざとなればピアスのスイッチを押すんだ」
「はい。わかっています」
シェリアのピアスはデュランダルを呼び出すものではなく、魔力でシェリアの体を包み込む魔力装置に変えてある。もちろんロレッタとダニエルにも同じものを装着させている。
そしてホワイトサーベルには聖獣が各三人に一獣ずつつくように配置させると約束させてある。
そろそろなのだ。
そろそろ魔王は動き出す。
ワルツが終わった。
その時だ。
「シェリア。生きていたのか?」
ホールの入り口近くから大きな声が響いた。
青い髪の男だ。赤い瞳をしている。
彼こそがゼノア王だ。
「これはうれしい話だ。なぜ言ってくれなかった? 言ってくれればこの兄が直接迎えにきたものを」
シェリアは魔王に侵されてしまった兄を見た。
表情はゆがみ、顔は土気色だ。
魂を魔王に支配されているのにシェリアのことは自分の妹だとはわかっているようだ。
「そなたがいなくなってオルベリアには花がなくなってしまった。そなたを嫁にやるのではなかったと後悔していたところだ。オルベリアにはそなたのような美しい花が必要だ。ちょうどよかった。オルベリアに帰ろう」
魔王に魂を支配されても基本的な性格は変わらないのだなとシェリアは思った。
きれいごとを並べているが、要はもどってオルベリアの財政を建て直せと言いたいのだ。
「オルベリアの王はあなたです。あなたが考えて国を治めるべきでは? 楽をすることばかりの浅はかな考えでは国は統治できませんでしょう?」
シェリアはにこっと笑った。
「もしかしてお兄様はわたしに戻ってもう一度あなたのかわりに国政を動かせと? そういいたいのですか?」
ざわっと会場がざわめいた。
オルベリア王国の陰にシェリアがいたことは誰も知らない。
すべてゼノア王の判断で動かしていると対外的には思われている。
だが、裏にこの王女がいたということか?
だから王女がいなくなってまた財政が傾いてきたと?
「オルベリア王国はもはや機能していないだろう!」
誰かが叫んでいる。
「そうだ。お前たちのおかげで我が国は小麦畑がダイム病でたいへんなことになっているんだ!」
オルベリアの小さな隣国たちが怒りをぶつけはじめた。
「ダイム病だと? それは厄介だ。オルベリアから広がっているのか?」
そんな中帝国の皇太子を見ると涼しい顔をしている。我が国が流した情報のおかげでダイム病はまぬがれたのだろう。
ゼノア王を見ると、赤い目が血走り挙動がおかしい。
何かに抵抗するように喉をかきむしるようなしぐさにデュランダルは構えた。




