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夏の舞踏会当日。
キルギア王国束の間の夏だ。
魔力を使わなくても自然とともに過ごせる季節だ。
王城には木々が芽吹き、小さな虫が木をはっている。
夏にしか見られない小さな色とりどりの花が花壇に咲いていて美しい。
「夏ですわねぇ」
「ほんと。舞踏会が開けるほどになってよかったですわ」
「二年ぶりですものね」
「そういえばお聞きになりまして?」
「ええ。今日、陛下がパートナーに選ばれた女性のことでしょう?」
「そうそう。何でもどこかの王女様といううわさですわよ」
「まぁ」
「あら、あちらには帝国の皇太子様がいらっしゃってるわ」
「ナダルの国王様もよ」
この日は唯一国外からも来客がある。毎年国外からの来客を魔獣から守るために国中の近衛兵たちが招集され王都は大忙しだ。
だが、今年はホワイトサーベルがデュランダルの意向をくんで、魔獣たちを統率してくれ、この日は人間を襲わぬよう呪縛をかけてくれた。
ホワイトサーベルたち上級魔獣と中級魔獣は聖獣となったが、低級魔獣には知能がなく、魔獣のままなのだとホワイトサーベルは言ったが、それでも上級たちが低級たちを統率するすべはあるという。それが呪縛だというので、魔王を倒すために呪縛を使うと言ってくれた。
『その日は低級魔獣は針葉樹林から出られぬよう呪縛する。あそこにさえ足を踏み入れなければ大丈夫だ』
「よろしくたのむ」
『ああ。魔王が来たら我らを呼ぶように。くれぐれも一人で何とかしようと思うでないぞ。同じ負の感情からできていても我らは魔王の仲間ではない』
「ああ。わかっている」
ホワイトサーベルのおかげでキルギアは今、近衛兵たちも魔王の襲撃へと備えることに集中できている。
近衛兵たちは多少は皆魔力をもっており、国外からの来客たちに主に目を光らせていた。
一方、ホールの奥の王族の控えの間では…
「ダニエル。くっつきすぎじゃない?」
「いいえ。姫様の騎士ですからどこまでもくっついていきますよ」
「今日はわたしも仕事しなきゃならないのよ」
「だからですよ。姫様が聖女とわかったらさらっていく輩は絶対いますからね」
ぷいっと顔を横に向けた。
「わかったわよ。じゃぁ絶対守ってよね。わたしは聖獣たちと話すことしかできないから。それ以外はポンコツなんだからね」
「はい。お守りしますから」
もう一方の控えの間では…
「シェリア」
すべての着替えを終えてカーテンを開けてでてきたシェリアを見て、デュランダルはあまりの美しさに息をのんだ。
ハーフアップにしたプラチナブロンドの髪はキラキラと輝き、紺色のサテンのドレスに白い肌が生えている。豊満な胸の谷間が見えすぎじゃないかと思うくらい肩が下がったドレスだったので、少し心配になるくらいだった。だが、胸に下がったデュランダルの瞳の色と同じ碧い大きなサファイアが美しく輝いていた。
実は同じくシェリアも自分と同じ色の正装である軍服を身に着けたデュランダルがあまりにかっこよくて卒倒しそうになったのだが、それは内緒だ。顔色には出さず、ただただ、眺めていた。
眼福すぎる…
この人がわたしを好きだと言ってくれているなんて…
信じられない思いだった。
「行こうか。シェリア」
「はい」
シェリアの手を取る。手袋ごしだが熱が伝わる。
やっと公表できる。
本当のシェリアを…
そして必ずやってくる魔王と対峙する。
彼女の兄と。




