8
「シェリア。舞踏会の日だが、君がシェリア王女だと公表するにあたって、俺がパートナーでないほうがいいだろうか?」
「え?」
ファルコン公爵を出て馬車に乗った時点で、デュランダルが眉をひそめながら言い出した。
「どういう意味ですか?」
「君がダニエルをまだ好きなら……」
言いながらデュランダルの顔は苦悩に満ちている。
ああ……。
シェリアは思った。
わたしはこの人のこの単純なところが好きなんだわ。
ごちゃごちゃと考える自分にはないこの単純さが。
「わたし、わかったんです。さきほどダニエルに会って」
「え?」
デュランダルの顔がさらに苦悩に満ちた。
早く解放してあげなければ。
「ダニエルのことは恋人として愛していなかったって」
「え?」
「なんというか同志のような愛です。彼は優秀な剣士でした。国を守ることに誇りを持っていました。そんな彼とわたしの共通点はオルベリアを愛していることです。そういう同志です」
「それは……」
「わたしが男性として愛しているのはデュランダル陛下だと、改めて……」
言い終わらないうちに、デュランダルのきつーい抱擁が待ち構えていた。
「シェリア。ああシェリア」
「へ、陛下、胸が……」
「ああ。悪かった。だがうれしくて……」
くすっと心の中で笑った。
「陛下ほど愛しい人はおりません。わたしにとって男性は陛下だけなんです」
そのまま馬車の中で濃厚な時間をすごしたのは言うまでもない。




