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「あなたが殺そうとしたわけじゃないのならいいわ。殴らないから」
「赦してくれるのか」
「だってあなたも騙されていたんでしょう? 兄に」
「ああ」
「ならばお互い様でしょう? もういいから立ち上がりなさい」
「ありがとう」
そして今わかったことがある。
ダニエルを愛していたことに変わりはないけれどそれは……。
デュランダルの方へ向き直った。
「デュランダル陛下。それで、ダニエルが何か情報を持ってきたのですね? オルベリアで何があったのです?」
「さすがだな。シェリア」
デュランダルはシェリアの手を取っている方とは逆の手でこぶしをつくりぎゅっとにぎりしめた。
「ダニエル。説明を頼む」
「はい」
「オルベリアについて説明する前にこれだけは言わせてほしい。僕は先日デュランダル陛下と誓約魔術で契約をかわした。この身はキルギアとともにある。僕はオルベリアを捨てた身だ」
「わかったわ」
それからダニエルと婚約破棄してから今までの話をダニエルから聞いた。
やはり兄と妹の仕業だった。
わたしを邪魔に思った二人が、アリアが小さいころからダニエルを好きだったというのもありわたしを追い出したのだ。
「ゼノア王だが、彼はもともと狡猾な性格だったが、ナダル王国に裏切られ、同盟がなくなってから人が変わったように異常な行動をするようになった。僕がナダルに大使として二度目に派遣される直前には毎日目が血走り、家臣たちにも暴言を吐きまくっていた。おかしいのは家臣たちが何も思っていないことなんだ。その暴言にみな従う。どうしてなのか……」
なんだろう。
さすがに家臣たちに暴言を堂々とするなんておかしい。
もともと狡猾という言葉がぴったりな裏でこそこそと動くタイプの人間だった。
それが堂々と暴言とは…
「シェリア。ひとつの仮説だが……」
デュランダルが言葉を紡いだ。
「魔王がいずれかの形で世界に現れるとしたら……」
「お兄様が魔王だと?」
「ああ。その可能性がゼロではない。何分魔王のことは全くわからないからな」
「僕は今、リーグ家につてを頼って昔の部下を呼び出しているところだ。あと一週間もすれば着くだろう。今オルベリアがどうなっているのか確認する必要がある」
「もしゼノア王が魔王であれば、君がシェリアだと公表しようがしまいがどうなるものでもない。それにもし魔王でなくても、もう俺は嫌なんだ。君をいつわりのままここに置いておくのが。シェリアはシェリアであるべきだ。俺の……いや、だから次の舞踏会で公表する」
「わかりました」
シェリアは顔をあげた。




