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夏が近いといえど、部屋の中は涼しすぎて寒いくらいだ。
あたたかい紅茶は身に染みると思いながら、ファルコン家の客間で前に座る男と対峙した。
「ダニエル・リーグ卿、紅茶を」
自分が出したものではないが、自分が認めなければこの男は紅茶を飲むことができない。
手を差し出すと、「いただきます」とダニエルは紅茶を飲んだ。
所作も美しい。
貴族のよく教育された令息だ。
「では聞かせてもらおう。シェリアと卿の間に何があったのか? どうして殺したのかをな」
そういうと、ダニエルははっとしたように目を大きくし、紅茶を置くと、話し始めた。
「まず、わたしはもうオルベリアの貴族ではありませんので卿ではありません。ただのダニエル・リーグです。なのでダニエルとお呼びください」
「では、ダニエル。聞かせてもらおう」
「はい。わたしは今でもシェリア王女を愛しています。彼女を殺そうとしたことはありません」
まっすぐにデュランダルを見て言った。
真摯な瞳は嘘ではなさそうだ。
だが、自分の人の機微な感情に対する推測はあまりあてにならない。
「続けろ」
「彼女がナダル国王から婚礼の打診があったとき、条件があまりにもよかったため、オルベリアのためにナダルへ嫁ぐと僕に言い出した時には最初は止めました。だけど彼女は王女でオルベリアを愛していました。オルベリアがよくなるならわたしは王女としての責務を果たすと言って聞き入れませんでした。彼女の意見を尊重しようと思った僕は泣く泣く彼女を送り出すことにしたんです。でも国王と妹のアリア王女はちがった。オルベリアは先王のときに財政破綻の危機に陥ったことはご存じですか?」
「ああ。それは知っている」
「その財政危機を立て直したのはまぎれもなくシェリア王女です。表立って名前は出ていませんが、彼女の才が国を再建したのです。ですが、そのせいで重鎮たちから彼女を推す声が出始めたために国王は彼女が邪魔になったのだと思います。彼女を排除したかったのでしょう。僕はおそらく裏にそういう感情があるとは思っていましたが、まさか彼女を殺すとは思っていませんでした。彼女はナダルで殺されたのです。初夜の夜に」
「暗殺者はダニエルが送ったのではないのか?」
確かにあの暗殺者はダニエルがどうのこうのと言っていた。
「え? どうしてです? 俺が送ったと?」
かみつくように言う。
「いや、よい。つづけてくれ」
「僕はナダルへの大使として派遣され、そこで現場を見ました。焼けただれたまま放置されていた。新しい国王であるユーリーン王が祟りをおそれてその場所をさわりたがらないのだと聞きました。だからせめてシェリア王女を弔おうとその中へ入った。だがないのです」
「何がだ?」




