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キルギアの冬は長い。
その冬があけて、五月になると魔力なしでも雪が解け始める。そしてようやく小さな花が咲き、新緑の季節が過ぎるとつかの間の夏がやってくる。七月になると夏を祝って王城では舞踏会が開かれる。
一年前は国王が死去して間もなくだったため舞踏会は当然のことながら中止された。
だが、今年は新しい国王が順調に国を統治してくれているため、舞踏会が開催されることになったと、貴族たちは沸き立っている。
先王を殺したナダル王国が落ち着き、やっと足を長くして眠れるのだと。
そして舞踏会が開けるのだと。
街のドレスショップがにぎわいだしたのは六月に入ったころだ。
仕立て屋は大急ぎで帝国から生地を輸入しはじめた。
「一番豪華な仕立てにするんだ。侮られてはならないぞ」
デュランダルは王城ご用達の仕立て屋を呼び、自分とシェリアの舞踏会の衣装について打合せを行っていた。
ペアの衣装にするつもりだ。
他の誰もが納得するようなカップルにならなくては。
「では、陛下。この濃紺のサテンなどはいかがでしょう?今帝国ではサテンが流行りですし、濃紺であればお二人の髪色のどちらにも映えます」
「それにしよう」
おおむね決まってきた。
と、そこへラインハルトがやってきた。
「陛下。至急の案件で申し訳ございません。メルディスが帰ってきました」
「そうか。何かあったのか?」
「それが……」
言いにくそうにしたのでデュランダルは切り上げることにした。
「ではよろしく頼むぞ」
「はっ」
◇
メルディスの顔をみればマルコー領の首尾はうまくいったことはわかった。
「順調なんだな」
「はい」
落ち着いて答える。
「マルコー国の元首だったヤリスが小麦の生産再開に関して大喜びで、領主となった今、ようやく小麦の生産ができるとやる気満々です。ただ……」
ただ?
何やら不穏な顔になる。
「何か気になることでも?」
「ヤリスの部下として働いていた男がいまして」
言いにくそうに少し視線をそらせた。
「どうやらオルベリアから亡命してきたようなんです」
「亡命? ということは貴族か?」
「はい」
オルベリアは平民は他国への移動を禁じていない。とすれば、オルベリアでの地位があやうくなった貴族としか考えられない。
「リーグと名乗っております」
「なんだと?」
「ダニエル・リーグと」
声がでなくなってしまった。




