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「ディアン。ちょっといいか?」
「はい」
何日か前からデュランダルがそわそわしているように思えてならない。
今日も夕方そわそわしながらシェリアの部屋の前でデュランダルが待っていた。
「なんでしょう?」
待っていても何も話さないので、部屋に入れることにした。
「どうぞ。お入りください」
「あ、ああ」
部屋のリビングのソファに座ってもらってお茶を淹れる。
とぽとぽとお湯を注ぎ、デュランダルの前に置くと、そわそわしたまま一口飲んだ。
「もうすぐ……その……」
と、そこへ大急ぎでメリッサが部屋に入ってきた。
「申し訳ありません。遅くなりました」
ディアンがさきほどお茶を淹れてもらおうとメリッサを呼んだが反応がなかったので自分で入れたのだ。
「いいわ。お茶はもういれたから。気にしないで」
そう言ってデュランダルを見るが下を向いたままだ。
そのうち、
「いや、また出直す。悪かったな。邪魔をして」
というと部屋を出て行ってしまった。
何?
いったい何があったの?
その次の日、シェリアが書類整理をしているとラインハルトが話しかけてきた。
「舞踏会のお話、陛下はされましたか?」
「え?」
顔を上げると、執務室には二人だけだった。
「舞踏会?」
「やはり、緊張して話すどころではないのか? いや、あのですね。我が国では夏に大規模な舞踏会があるのですよ。それにディアン様をお誘いするとおっしゃっているのですが、なかなかできないでいらっしゃる」
「まぁ」
それであんなに昨日は……。
好きだと言った時はあんなに積極的だったのに、いざ胸に飛び込んだらこんなになるのね。陛下っておもしろい。
「くすっ」とシェリアは心の中で笑った。
「閣下。ありがとうございます。陛下にうまく話してみますわ」
「はい。すみません。わが主君ながらあまりの奥手ぶりに……謝るしかありません」
「いいえ。とても陛下らしいですもの。いいじゃありませんか」
その日の夜、シェリアはデュランダルの部屋に押し掛けることにした。
「陛下。わたしに何かお話があるのではないですか?」
メリッサに言って、デュランダルの侍女にこの前同様シャンパンとクラッカーを用意しておいてもらい、侍女が用意して下がった時点で話し始めた。
「え? シェリア。いや…あの」
「どうしてそんなに戸惑われるのですか?」
「いや……」
「わたしのことが嫌いなのですか?」
「そんなわけないだろう? 何をいってる。大好きだ」
くすっと笑う。
「わたしはそれでいいんです」
「え?」
「無理にどうしたらいいのかとか考えなくても、自然な陛下でいいんです。抱きしめるのが怖いならわたしから抱き着きますから大丈夫」
そしてシェリアはデュランダルの胸に飛び込んだ。
「ほら、自然と両手は後ろにまわったでしょう? それでいいのです。わたしを好きと思っていて下さればそれで」
「シェリア。不器用でごめん」
「いいえ。不器用なのは最初から知っています。けれど、その分、感情がわかりやすくてとても好きです」
デュランダルに抱きしめられたまましばらく暖かさを感じていた。
「あったかい。シェリア。そしてキスしたくなった。キスしてもいいか?」
「はい」
デュランダルはシェリアの顎をくいっとあげると、ゆっくりと唇を重ねた。
すごく静かなキスだった。
「シェリア。こんな俺だが、君を舞踏会のパートナーに誘いたい。一緒に出てくれるだろうか?」
「はい。喜んで」
シェリアがにっこり笑うと、デュランダルはまた唇を重ねた。
今度はもっと長く……深く……。




