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「はぁ————」
ため息をはく。
「どうされたのです? 陛下」
ラインハルトが書類から顔をあげて不思議そうにデュランダルを見ている。
ダンテ子爵領は家門全員処刑となり、ダンテ領は国有地となり、ナダルはニジェールが王として即位し、誓約書もあるためこれでナダルからの脅威は完全に断ち切れた。王どうしの殺戮が激しいナダルではニジェールがずっと政権を握るとは限らないため政権が変わったらどうなるかわからないから、もっとキルギアの国力は強化する必要はあるが、すんでのところはナダルを脅威としてとらえる必要はなくなった。
一方マルコー国が帝国からの承認を得て、キルギアへ統合されマルコー領となったためメルディスを今そちらへ派遣中。
ようやくデュランダル王の治世も方向性が整ってきて、足場をかためつつあり、何もため息をつくほどのことはないはずである。
「いや、なんというか。俺はどうしようもないな」
「は?」
自分の頭をポコッとグーで殴った国王をラインハルトはへんなものでも食べたのかと怪訝に見つめる。
そしてはっと気づいた。
(もしやディアン様のことか?)
「陛下。もしかして恋にお悩みですか?」
「え?なぜわかる?」
よく考えてみたら、少年のころにあのとんでもない魔性の女に初恋をしてから、戦いばかりをされていたから女性との関係は皆無といっていいに近い。
おそらくはじめてだと思えるような大人の恋にとまどっていらっしゃるのでは?
「陛下の不得意分野ではありませんか? 大人の恋愛は」
「うっ……お前。言いすぎだぞ」
「何かあったのですか?」
「いや、その、なかなか先に進めなくてだな……」
デュランダルはシェリアがせっかく胸に飛び込んできてくれたのに、抱きしめたままで終わってしまったのだと説明した。
「は? このいくじなし」
「なっ!」
ラインハルトは容赦がない。
これでも結婚するまでも何人も女性を泣かせた男だ。大人の恋愛は何度もしてきたつもりだ。
こと恋愛にかんしてはお子ちゃま同様のこの陛下という男と恋愛しているディアン様が気の毒だ。
「それでも男ですか? 女性から胸に飛び込ませるなど、通常は男性がいざなうものです。いいですか? 次はきちんと自分から肩を抱き、顔をこちらに傾かせてキスをするのです。いいですね。キスですよ」
「キス……だと?」
「そうですよ。何ならその先まで」
「そんなことをできるわけが……」
「しなければ子どもはできませんからね。陛下はどうなりたいのです? ディアン様と恋愛したいだけですか?それとも……」
「俺は……! ディアンと、け、結婚を視野に入れている」
前途多難だなとラインハルトは思った。
ディアン様への気持ちは本物らしいが、これではなかなか先に進めそうにない。
「陛下。この一年でディアン様と身体の関係までもっていってください。そうしなければ年齢的なことを考えても、ディアン様が気の毒です。わかりましたか?」
「一年か……」
「そうだ。もうすぐ夏の舞踏会があります。ディアン様のことをもう誘われたのでしょうね。顔が出せないのはわかっていますが、陛下にパートナーがいないと、老臣どもがうるさく女性をすすめてまいります。ディアン様を変装させてでもパートナーにしてくださいね」
「そ、そうだな。まずは夏の舞踏会からか」
「はい。あたりまえです」
「うむ。ディアンを誘おう」
あやしいと思いながらもラインハルトは静かに見守ることにした。




