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「お母様なの?」
信じられない面持ちで自分に瓜二つの女性を見ているロレッタをシェリアは後ろから支えていた。
ロレッタに話したとき、どうしたらいいかわからないとロレッタは言った。
だからシェリアは自分なら会うだろうと言ったところ、ロレッタも会うと言ったのだ。
◇
ロレッタは城から去っていった母の姿を今でも覚えていた。
城の窓から馬車に乗り込む母が見えた。
そしてその母をエスコートする知らない男性の姿も。
城はバタバタしていたし、侍女たちは見ていなかっただろう。だが自分ははっきりと見ていた。
母は自分を裏切ったのだ。
それを知っていた。
「ロレッタ……」
デボラは涙を流して床にへばりつくように地下牢の鉄格子を握り締めている。
「ごめんね…仕方なかったの。わたしには魔力がないからここにいたら確実に殺されることがわかっていたから」
「わたしは殺されてもいいと思ったんでしょう?」
ロレッタにも魔力がない。それは知っていたはずだ。
「それはわかってる。ダメな母だということは。けれど、ダンテ領に入ったらずっと思い出すのはあなたのことばかりだった。あなたを捨てたことをずっと後悔していたの」
「もういいわ。行きましょう。ディアン」
そういうとロレッタはすでに踵を返していたが、歩いている間、地下牢の中からはずっとデボラの泣き叫ぶ声が聞こえていた。
ロレッタの瞳から一筋の涙が流れていることにシェリアは気づいた。
「ロレッタ殿下……」
「お母様がわたしを捨てたことは知っていたの。けれど、本当はうそなんじゃないかってずっと思ってた。ただ、あのときの男がお母様を連れ去っただけでお母様はここにいたかったんじゃないかって。でもそんなお母様じゃなかったってわかった。それがわかったからもういいの」
地下牢からでると、シェリアはロレッタを抱きしめた。
そしたらロレッタは声をあげて泣き出した。
「ディア……ンは……どこ……にも……いかな……いわよね」
嗚咽で声が出ない。
「はい。行きませんよ。ロレッタ殿下の教育係ですもの」
「う。う……ん。もっと……がんばるから……ぜったい……みすて……ないで」
「がんばってもがんばらなくてもわたしはここにいますよ。ロレッタ殿下」
背をさすりながらシェリアはその日、ずっとロレッタと一緒にいた。




