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王城の地下牢という場所に初めて入った。
そこは薄暗く陰気な場所で、かなり寒く凍り付いている。
血の匂いが充満しており、ずっといると気分が悪くなるような場所だった。
王城の地下にこんな場所があったなんて全く知らなかった。
驚きだ。
そんな地下牢の最奥部のダンテ子爵の横の牢にデボラ妃は投獄されていた。
デュランダルとともにデボラ妃の牢の前に立つと、牢の中は魔力で人が死なない程度にあっためてあるのか、木でできたかたいベッドの上で寝転がっていた、デボラ妃は気配に反応し、むくっと身体を起こした。
うねるような強烈な色のオレンジの髪だ。染めているのだろうか?
美しい人だとシェリアは思った。
ロレッタの顔立ちは間違いなく母親似だ。
綺麗な二重の少し釣り目の黄色の瞳をした派手な顔立ちだ。唇は厚くぽってりとしている。
少し気になるのはそばかすくらいだろうか。
そういえばロレッタにもそばかすがある。
デュランダルを見てからシェリアに視線を移し、ニヤッと笑う。
「この女性がロレッタを育ててくれてるっていう人ね」
「そうです。彼女はロレッタの教育係でかなりの成果をあげてくれました。ロレッタは彼女のおかげで成長しました」
デュランダルは淡々と答えた。
以前のデュランダルにもどったみたいに表情をなくしている。
「へぇ。感謝してるわ。あなた、名前は?」
「ディアンです」
「そう。ディアン。デュランのことも助けてくれたようね」
さっきからニヤニヤと奇妙な笑みを浮かべて話すこの女性にシェリアは虫唾が走っていた。
イライラする。
だいたいどうしてデュランダルに敬語を使わないのかしら?
「失礼ですが、申し上げてもよろしいでしょうか? デュランダル陛下に敬意をお示しください」
きつくそう言うと彼女は眉をひそめ、眉根にしわを寄せる。
「デュランダル陛下はここでは最高権威をお持ちの方。その方になれなれしく話しかけるのはおかしいと思われないのですか? あなたはもはや王妃という身分ではないのですよ?」
「あら、食いつくのね」
そしてクスクス笑う。
「デュラン。あなたの飼い犬はしつけがなってないようね」
は? 何なのこの人。
飼い犬って何?
いくら身分のないわたしに対してといっても失礼にもほどが……。
「デボラ殿。飼い犬とはどういう意味だ?」
心の奥でむっとしていたらデュランダルが突然怒りのオーラをまとい、デボラ妃につかみかかるかのように言ったのだ。
驚いて横を見ると目の中にメラメラと炎がゆれているように見える。
「な、何よ。あなたの家臣なんだから飼い犬でしょう?」
「ディアンの言うとおりだ。あなたはわたしに敬語を使うべきだ。わたしはこの国の国王。引き換えあなたは罪人だ。この国を捨てた罪人を裁く権利はわたしにある」
目で射殺せるかのごときオーラにニヤニヤしていたデボラは顔色が変わり怖気図いている。
「捨てた? 捨てたんじゃないわよ。仕方なく城を出たのよ。わたしだってロレッタを置いていくのは気が引けたわ。けれどあの時は仕方なかったの」
あわてて言うデボラにデュランダルは言い放つ。
「あなたは兄が殺された時、次にわが身が危ないと感じた。ダンテ子爵が一緒に来ませんかとのばした手を躊躇なくとったのはあなただ」
「な、なによ。そんな証拠」
「ダンテ子爵はすでに白状している。あなたが兄を裏切ったことは明白だ」
そうだったのかとシェリアは思った。
だから情状酌量の余地はないと……
「今、決めた。あなたにロレッタを会わせるかどうかはロレッタに決めさせる。ディアン。君がロレッタに話してくれないか?」
「わたしが?」
「ああ。ロレッタが一番信用しているのはお前だ。罪人となった母親に会いたいかどうかをロレッタに話してほしい」
「わかりました」
「何よっ! なぜその女に決めさせるのっ? わたしは彼女の母よ。会いたくてもずっと会いにこれなかったのに、死ぬ前に会えないなんてひどすぎるわよ」
喚き散らすデボラを尻目にデュランダルはシェリアの背中を押し、地下牢を後にした。




