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「俺は、小さいころシリア王国へ半年ほど母の静養につきあって出向いていたことがあって、その際、デボラ妃とは知り合いだった」
もしかして…
一瞬浮かべたデュランダルの苦悩の表情をシェリアは見逃さなかった。
「陛下はデボラ妃がお好きだったのですね」
「え?」
驚いて目を丸くしている。
「シェリア……」
「わかります。わたしだってダニエルをかつては好きだったのです。人を好きになる気持ち。そしてその人がかつての人とはちがって今裏切り者になり果てた時の気持ち……」
声がつまってしまう。
「シェリア……」
ああ。なんか感情がぐちゃぐちゃだ。
ダニエルへの憎しみと、そして陛下とそのデボラという女性への嫉妬で…
ああ、わたしは陛下のことが……好きだったのだ。
こんなにも。
デボラという女性にこんなに嫉妬するほどに。
「いや、好きだったのは認める」
はっきり言われるとぐさっとまた胸に突き刺さる。
だが、はっきり言われたほうがいい。
「だが、それは少年のころのことだ。兄の結婚相手としてデボラ妃が来た時には少し泣いたがな……」
もしかしたら陛下が表情を隠していたのはそのせいなのかもしれないと思った。
兄の結婚相手を好きだとお兄様にばれないように必死で隠したのではないだろうか?
陛下はお兄様が大好きだったから……。
「今デボラ妃は一体何を求めておられるのです? 陛下に」
今回の件は一家全滅にすると陛下は言っておられる。ならばデボラ妃も同じはず。
そんなデボラ妃が今更何を言ってきたのだろう?
「ロレッタに会わせろと」
ぐっと唇をかみしめている。
「わたしを好きだったあなたならそれくらいしてくれるだろうと言われた。デボラ妃は兄を裏切ったことはダンテが認めているからもう情状酌量の余地はないが、最後に会わせるべきかと……俺は、ロレッタの気持ちを考えると簡単に会わせるなんて……」
子どもを捨てて城を出ておいてよくそんなことが……
しかも10歳になったロレッタが何の教育もされていなかったところを見ると、もともと子どもに関心があったとは思えない。
ロレッタがどれだけ愛情に飢えていたか……
信じられない。
「陛下、もしよろしければ一度デボラ妃にあわせてもらうことはできますか?」
「シェリアがか?」
「はい」
「いいだろう。ただし、今のデボラ妃は危険だから俺と一緒にと言う条件だ」
「わかりました」




