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「目が覚めたか」
どれくらい経ったのか、シェリアは助けてくれた男とともに小さな部屋の中にいた。
清潔感はあるが粗末なベッドが二つ並んでおり、シェリアはベッド脇にあるソファの上で寝転がされている。
「着替えろ。その服は血がついている」
町娘が着るようなワンピースだ。
ここに来る間に魔力でどこかの店のものを適当に拝借してきたのかも知れない。
あ、と足首を確認する。
「どうした?」
「いいえ。母の形見なのです。落としていなくてよかったと思って……」
細い足首にそれはきつくまきついている。
ほっとして、着替えるためにその分厚い服を手に取った。
本当は湯に入りたかったがそんな贅沢は言ってられないようだ。
シェリアは男が後ろを向いている間に急いで着替えた。
「着替えました」
「よし」
男がこっちを向き直って初めてまともに男と向き合っておどろいた。
男がかなりのイケメンだったからだ。
青みがかったシルバーのサラサラの髪にアーモンド形の瞳の下には碧い三白眼がこちらを見ている。
鼻梁は高く、その肌色はシェリアよりさらに白い。
どうやら北方の人間のようだ。
体躯はいかにも軍人風で背が高く足も長く、細いががっしりとしており黒づくめの軍服に長い太刀を帯刀していた。
着替えてようやく落ち着いた気がしたのでピシッと背筋を張って男に向き直る。
「助けていただきありがとうございます。ご存知かも知れませんが、オルベリア王国の王女、シェリア・ディアン・オルベリアです」
深々と頭を下げた。
「ああ。俺はデュランダル・カルヴァイン・キルギアだ」
キルギア?
そうか。あの魔獣と魔力の国だ。
元々はオルベリア王国の隣にある大国リストリア帝国の北方領地だったところがキルギア公国として百年ほど前に独立した国。最近力をつけて王国になったはずだ。
確か国王がつい一年ほど前に変わったはず。その国王の名がデュランダルだった。
「キルギアのデュランダル国王陛下であらせられましたか。知らぬこととはいえ、ご無礼を……」
「俺も君のことを知らなかったのだから気にする必要はない。それでどうするんだ? これから」
これまでも思っていたが、淡々と話す人だ。
あまり感情を顔に出さないというか、もしかしたら感情自体があまりないような…
今までは暗闇だったので表情はわからなかったが、あらためて表情を見ても、会話をしても無表情に近い。
「そうですね。まず聞きたいのですが、ここはどこですか?」
部屋の中ではあるが肌に感じる気温から察するに、さきほどの場所、ナダル王国の王都より大分北に来ている気がする。
ナダル王国は南北に巨大だ。北の方はキルギア王国と隣接していたはず。
その近くまで来ているのだろうか?
「ナダルとキルギアの国境の関所付近だ。追手がいたら困るので今いるのは平民が泊まるような安いホテルだが、まぁ完膚なきまでに焼き尽くしたのでばれることはないだろう。だがここにずっといるわけにはいかない。今日の夜には関所に入ってキルギアに入国するつもりだ。行くところがないなら一緒に連れていくが……」
そうか、もう一日経っているのか。
あまりのことにさすがに疲れたようだ。
長いこと眠っていたらしい。
「一日経っているのであれば昨日の事件はどうなって? このホテルは新聞などあるのでしょうか?」
「ああ、それなら……」
パチンと指を鳴らすと、部屋の扉が開き、黒ずくめの男が入ってきた。
新聞をデュランダルに手渡し、また部屋を出ていく。
「安心しろ。俺の部下だ。新聞だ。見るか?ちゃんと死んだことになっている」
受け取って確認すると新聞の一面には国王殺害のニュースがでかでかと報じられている。




