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「そうですね。知らなかった。自分がお酒を飲めるなんて」
「そうなのか?」
「はい。オルベリアではそんな暇がなかったのです。国を立て直すのに必死でしたから」
「君がやり遂げたのだろう? オルベリアの再建を。見ていればわかる」
「はい。ですから仕事に関しては自信があります。小さいころから勉強だけは怠りませんでした」
こんなに自分のことを話すのは初めてだ。
酔っぱらっているのだろうか?
けれど、たぶん試したかったのだ。
こんな境遇を知ってもわたしを好きといってくれるのかどうかを……。
「わたしは妾腹の王女で、母は物心ついたときにはもうおりませんでした。追放されてそのあと亡くなったそうです。小さいころから母にそっくりな容姿をけなされて育ちました。髪色は光りすぎて目がちかちかする。胸は大きすぎて気持ち悪い。だからがんばったんです。勉強を。学ぶことはずっと好きでしたから。けれど、父は…わたしががんばっても当たり前のように扱って、一度もほめてもくれなかった。そして兄の補佐にちょうどよいといい、兄の補佐をやらされて後で考えてみれば利用されていただけでした。婚約者は公爵家の次男でした。小さいころからよく一緒に遊んでいました。けれど、それもにせものの関係でした。彼は妹のアリアを好きだったんです。わたしが邪魔だった。だから同じように邪魔だった兄と共謀しオルベリアから追いやり婚礼の夜に殺した」
自嘲の笑みが漏れる。
「こんな誰にも愛されたことのないわたしです。だから陛下が好きになってくださるような女ではないのです」
ワインのせいだ。
アルコールが脳を支配したせいでこんな荒らかな声を上げてしまう。
だけど止められなかった。
顔をあげてデュランダルを見た。
きっと軽蔑しているはずだ。
こんな女だったのかと……。
だけど
「なんという!」
怒っている。
怒っていた。
なぜ?
「俺はシェリアが今まで送ってきた人生に怒りを覚える。なんという父親だ。なんという兄と妹だ。なんという婚約者だ。そんな奴らは君の価値を何もわかっていない」
「陛下?」
「価値というのは国家の財産としての君の価値というのもあるが、それだけではない。君には俺が生きるための価値がある」
「それは……」
ギルティが言っていたことだ。
「俺は君がいるから生きるのだ。今日の君を見たい。声を聴きたい。君と目が合わないか? 君と話せないか? 君がどこにいるのか? 常に君を探している。俺の人生において君が必要だからだ」
「本当にわたしを好きだとおっしゃるのですか?」
「ああ。そうだ」
堂々と…そしてシェリアの目を見て言ってのけた。
「好きに決まっている」
「どうして? こんなわたしを?」
「どうしてだろうな? わからない。愛に理由などないだろう? 好きになった。ただそれだけだ。気づけば好きになっていた。この手を伸ばして君を手に入れたい。そしてずっと離したくない。そういう感情を持つことに理由はない。俺は機微な感情を理解できる人間ではない。おそらく魔力をもっているせいで人との交渉をしなくても生きていけるからだろう。キルギアの良さでもあり悪さでもある。そんな中に人の感情の機微を理解できる女性が現れた。そして見た目は俺の好みだ。そんな女性を好きにならないわけがない」
「デュランダル陛下……」
じっとまっすぐシェリアを見ている。
そこに嘘はない。
もともと嘘などない人だ。
本当にわたしを好きなのね。
「わかりました。陛下を信用します」
「では!」
「少しずつですが、陛下に寄り添ってみたいと……思います」
「本当なんだな。ああ。シェリア」
「はい」
にっこり笑うと、デュランダルの目に涙が光った。
え?
さすがに涙を見たのははじめてだ。
「うれしいよ。シェリア」
そこまで思ってもらっているなんて……。
この人を信用できないわけがなかったのだ。
少し心が穏やかになった気がした。




