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「デュランダル陛下。小麦が足りない件ですが……」
次の日の夕方、執務室を尋ねたらデュランダルが一人で残業していた。
「なんだ? 何かいい方法が見つかったのか?」
「はい。今お忙しければ改めますが……」
「いや、いい。もう終わりだ。少し待っていてくれ」
五分ほど後処理をしているのを待ってから話しはじめた。
「マルコー国から輸入しませんか?」
「マルコーだと?」
「はい。あちらはそろそろ帝国からの支配を抜け出したいと思っているのですよね? ならば、我が国へ取り込んで小麦の生産を元に戻すのです。これを見てください」
資料を指し示す。
昨日の夜図書館で調べたものだ。
「マルコー国は十数年前まで質の良い小麦の生産国でした。ですが、小麦が取れすぎて値が下がるのを防ぐため帝国が生産を停めています。そのせいで産業がなくなったマルコーは貧困にあえぎ我が国へと手を伸ばしてきているようです」
「そうなのか。それは……調査をしてくれたんだな。ありがとう」
「いえ。わたしにはそれしか取り柄がありません。ですので我が国に取込み、小麦を生産させればうちにとってもマルコーにとってもいい形になります」
「よし、ならば早急にメルディスに帝国よりマルコー国の譲渡を進めてもらおう」
「はい」
これで小麦の件はうまくいくだろう。
小麦を生産するにはキルギアは寒すぎるのだ。南方で生産するしかない。自国で生産できれば関税もかからないし、マルコーはほぼ自国になることは決まってるのだから……。
「それでは失礼します」
部屋を辞そうと思ったのだが……。
「待て。夕食を一緒にどうだ? まだだろう?」
「はい。まだですが……」
「ホールに用意させよう。たまにはゆっくり食べないか? キルギアワインも出そう」
「そうですね。そう言われるとワインに引きずられそうになりますわ」
「ならばそうしよう」
「やはりキルギアワインはのどごしがとてもよくておいしいです」
どうやら自分はこのワインが好きらしい。
お酒はいける口だったが、ほとんどオルベリアでは飲んだためしはなかったから知らなかった。
ワインがこんなにおいしいものだとは。
「とても幸せそうに飲むのだな。はは。好きなんだな。キルギアワインが」
デュランダルが笑っている。
最初出会ったときは表情のない人だと思った。
感情を表に出さない人なのだと。
おそらく王だからだろう。
帝王教育は感情を表にださないようにしつけるのだ。
だけど、今はとてもよく表情を出す。
こんなに表情豊かな人だったなんて……。




