4
「だが、どうやら俺が聖王らしい」
「え?」
シェリアが目を丸くしている。
「ロレッタが聖女で、俺が聖王。だとあのホワイトサーベルは言ったな」
「本当だったんですか? その童話が」
「いや、わからないさ。まるで夢みたいなことが針葉樹林で起きたんだからな」
「…………」
「君をさらったホワイトサーベルはロレッタを使って針葉樹林に俺をよこしたかった。だから君をさらったらしい」
今思えば俺を確実に連れ出すためにシェリアをさらったのだ。狡猾なやつだ。
「ロレッタは今まで城から出したことがなかったが、どうやら魔獣はロレッタをずっと監視していたようで、城から出た昨日を確実に狙ったようだ。そしてそばにいたシェリアをさらい、俺を針葉樹林に導くことに成功した」
「では、ロレッタ殿下は魔獣の言葉がわかるというのですか?」
「ああ。意味の分からない言葉を話していたな。魔獣と」
「なんと、まぁ」
口を手で押さえている。
俺もいまだに信じられない。
そこからは森の中で起こったことを正確に話した。
自分の右上腕に刻印された聖王のしるしについても。
いつの間にか着替えさせれていたらしいナイトウェアをめくり、右腕の刻印を見せた。
碧くぼうっと光っている。
「さわっても?」
「ああ」
シェリアの指の感覚を感じると、刻印は熱を帯びた。
「何か熱い感じがしますね」
「常に熱を帯びているな」
「陛下が聖王……ということは魔王も現れるかもしれないということですか?」
「わからない。ただ、わかっているのは俺は変わらないということだ」
シェリアをまっすぐ見つめる。
「俺は、俺だ。デュランダル・カルヴァイン・キルギアという一人の人間だ。キルギアを愛し、そして一人の女性を助けたかったただの男だよ」
「陛下?」
シェリアが不思議そうな顔をする。
今しかないと思った。
「シェリア。好きだ」
シェリアは少しだけ目を大きく見開いた。
「愛している。君を」
「陛下……」
シェリアはまっすぐにデュランダルを見ていた。
そして少しして視線をそらせた。
「わたしなど取るに足りない人間です。陛下にはもっと相応しい方が……」
「何を言っている。君は自分の価値を過小評価しすぎだ。君がいなければこの国はもうすでに回らなくなっている。取るに足りないなどと誰も言わないぞ」
「…………」
シェリアは無言で目を逸らしていた。
もしかしたらそれは口実で、ただ単に俺が嫌なだけなのか?
そう思うとめげそうになった。
いずれにしてもこれ以上今は言っても無駄だ。
「だが、どうか知っておいてほしい。俺にはシェリアが必要だと。キルギアの王としても、そして一人の男としてもだ」
両肩を掴んでこちらを向かせる。
「絶対に自分を卑下するな。君はとても素晴らしい女性だ」
「陛下……」
最後には自分目をみてくれた。
そのエメラルドの宝石のような瞳に自分をもっと映して欲しい、そして俺を必要としてくれ。
そう思った。




