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「待ってくれ。あれはただの物語ではないのか? 聖王が魔王を倒すというのは」
『われらもわからぬ。だが、お前が聖王であることは事実だ。なぜならわれらはみなお前が聖王であることを知っているからだ』
意味の分からない理由だ。
「俺は自分が聖王などと思えない。そんな器の人間ではない」
『そうか。だが、今日その契約を交わせないというのなら、この娘を返すことはできない』
「なんだとっ!」
なんという卑劣な交渉術。
こんなことができるのか魔獣は。
『おっと、われらはこの娘を殺すつもりはない。ただ、お前と交渉したかったから連れてきただけだ。契約に応じてくれぬか』
魔獣が下手に出ている。
契約するしかないのか。
シェリアの命には代えられない。
「では、先にシェリアを返してもらおう。それなら契約する。魔王でも何でも倒せばいいのだろう?」
『わかった。信用している』
シェリアの体が浮き、デュランダルの足元にすっと寝かされた。
体のぬくもりを確認し、デュランダルはホワイトサーベルへと目を向けた。
「契約はどうすればいい?」
『お前の魔剣を出せ』
常に腰に帯刀している魔剣。子どものころから同じものを使っていた。毎日手入れを欠かせたことはない。
すっと鞘から太刀を抜く。
綺麗に磨き上げられた刀身がキラリと碧く光った。
デュランダルの魔力を帯びている証拠だ。
え? ここでは魔力は使えないのでは?
『驚いたか? お前が聖王たるゆえんだ。その刀身にわれらの力を注ぎこむ。その娘の横に置くのだ』
半信半疑ながらも魔獣の言うとおりにする。
『われがその刀身にわれの血を落とすゆえ同時にお前の血を落とすのだ』
「わかった」
ホワイトサーベルが小刀をぽとりと落としたので、ホワイトサーベルの合図で自らの左手の小指に傷をつけるとしたたる血を魔剣の刀身へぽたりと落とした。
ホワイトサーベルも同じように前足の一部を傷つけ血を落とす。
そうすると魔剣がすさまじく光り、そして魔剣の先から碧い光が天に向かって一筋伸びた。
上空を見上げるといつの間にかもう暗くなっていた冬至の夜に聖王を示す刻印『青の王冠』が現れ、そしてそのままその刻印はデュランダルのもとへと落ちてきて、右腕の上腕へと刻印された。
「うっ」
一瞬ちくっと腕が熱くなった気がしたがそれだけであわてて魔剣を見ると前よりも一層碧さが増し光り輝いていた。
「なんだ?」




