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「こっちです」
ロレッタを自分の前に乗せ馬を走らせ針葉樹林へと入る。
するとロレッタはすいすいと行く方向を伝えてくる。
「どうしてわかるのだ?」
針葉樹林の中では魔術は使えない。
魔獣の聖地なので人間の魔術は吸収されてしまうのだ。
「ホワイトサーベルの声が聞こえるんです。次は右とか左とかまっすぐとか」
「へぇ」
こんな奥地まで入ったことはない。
魔獣のにおいが充満している。
おそろしい数の魔獣がいるはずだが、誰も攻撃はしてこない。
殺意も感じない。
ロレッタがいるからだろうか?
なんという能力だ。
聖女とは。
キルギア王国では王族貴族はもちろん、平民も生まれたらすぐに神殿に行って魔力量を測定する。
ロレッタはゼロだった。
母親に似たのだろうと兄が落胆していたが、まさか聖女だったとは。
ロレッタの声にいざなわれて、20分ほど馬で走ったところでロレッタがストップをかけた。
「ここにいるはず」
そこはおおきなくぼみになっていてそこだけ針葉樹が生えていない。
その場所を見ると、うっすらと姿が現れた。
どうやら透過していたらしい。
その姿はまさに荘厳だった。
大きさは小さな城といってもいいくらいで、銀色に輝くきれいな毛並みに利発そうなネコ科の顔、そして美しいブルーの瞳がこちらを見据えていた。
『ホワイトサーベル。来たわよ』
馬から降り、ロレッタを下ろすと、ロレッタが不思議な言葉をホワイトサーベルに向けて話し始めて驚いた。
なんだ?
『よく来てくれた。お前が大事にしている者はそこにいると伝えてくれ。心配するな。生きている。無事だ。殺すつもりはないと』
すーっとホワイトサーベルの後ろの高台になっている部分にシェリアが眠っているのが見える。
髪色も瞳の色も元に戻っている。
デュランダルのかけた魔術はホワイトサーベルが解いたのだろう。
「シェリア!」
「陛下。シェリアはそこにいる。無事だし、殺すつもりはないって」
「そ、そうか」
ほっと胸をなでおろす。
だが、何をしたいのだ。ホワイトサーベルは。
『世界が混乱に陥る前にお前と契約を交わしたかった。だが、お前が聖女を閉じ込めたままにしていたからなかなかうまくいかなかった。聖女を今日城から出してくれたことを感謝している』
ロレッタはそのまま伝えた。
(不思議な気分だった。魔獣など見たこともなかったが、不思議とすっと言葉が体に入ってきたし、言葉を話すこともできた)
『お前と契約を交わす前に言わなければならないことがある』
「なんだ?」
『われらを守ってくれてありがとう。お前たちがいなければわれらはこの地に根を下ろし、住処とすることはできない。みな感謝している』
魔獣から礼をいわれるとは思わなかった。
だからほかの魔獣も自分を攻撃してこなかったのか。
「いや、だが俺たちも自分の暮らしを守るために低級魔獣を殺傷している。それに関してはすまない」
『きちんと鎮魂祭を毎年執り行ってくれている。それでいい』
変な気分だ。
魔獣と話をするとは。
『ところで本題に入ろう。契約を交わしたい。われらはお前を聖王として世界を守ってもらいたい』
は?




