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冬至祭。
当日は正午に大神殿参拝が行われる。
午前中の日が昇り始めた時間帯に大神殿へ向けて出発するのだ。
「わぁ」
ロレッタは外の景色に嬉しそうにほほんでいる。
「これが外の世界」
「そうですよ。ロレッタ殿下」
今日は侍女の服装で髪色と瞳の色は目立たぬ茶色に変えて参加中だ。
「こんなに雪が積もっていたなんて知らなかった」
城の中は魔術で雪を溶かしていたし、城の外も馬車が走る道路は魔術で雪を溶かしている。
だが、景色はすべて自然のまま。
雪が三メートルや五メートル積もっている場所もある。
壮観な冬景色とはこのことだろう。
ロレッタはずっと馬車の窓を開けて外を見ていたが、すぐに大神殿に到着した。
冬至祭はおごそかに行われた。
大神官の祝詞にのっとり、王族も祝詞を述べるだけのものだ。
簡単な儀式ではあるが、弔いの意味がこもった儀式なのだからいろんな人や魔獣の魂を思って祝詞を述べるようシェリアはロレッタにアドバイスしていた。
シェリアは後ろに控えロレッタを見守ったが、きちんと王族としての祝詞を心をこめてデュランダルとともに述べていた。
成長がうれしい。
自分の教えにこたえてくれたのもあるが、何よりロレッタ自身がやる気になったからここまで成長できた。
先日は手紙をもらったのだとデュランダルが見せてくれた。
たどたどしい筆跡ではあるが、きれいな線で描かれたその文章は文法も間違っておらず、手紙の形式もきちんと守られており、すばらしいものだった。
「こんな手紙をもらって君を連れていきたいというのを許せないわけがないだろう?」
やはりデュランダルはロレッタを愛している。
姪というより娘のように。
デュランダルの心の奥はとても優しい。
祝詞が終わり、冬至祭が終わった。
わずか数十分の短いものだが、心安らかに魔獣と犠牲になった人々が眠ることを祈ろうとシェリアも手を合わせてから、そっと神殿の扉を開けて外に出た時だ。
目の前にとても大きなトラがいた。
いや、トラなど見たこともないのだが、図鑑で見たトラとそっくりなのだからトラだろう。
けれどトラってこんなに大きかったかしら?
そう思った時にはトラがシェリアのほうへ顔を近づけてきて、そしてパクリとシェリアを咥えた。
その時思った。
これはトラじゃなかった。魔獣だった。
あわてて耳たぶにあるピアスを触ったがもうその時には咥えられていた。
大神殿の扉を開き、ロレッタが出てきた。
「ディアン! どうたった? わたしの祝詞……」
ロレッタが固まっている。
(ロレッタ殿下! 来てはいけない!)
そう叫ぼうと思うが叫べなかった。
そしてそのままシェリアの意識は途絶えた。




