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「陛下。冬至祭には陛下おひとりが行かれますか?」
「ああ。そうだな」
執務中だったデュランダルは顔をあげた。ラインハルトが眉間にしわを寄せながら神殿からの書状を確認している。
キルギアでは毎年冬至の日に王族は(もともとは公爵)大神殿へと参拝するしきたりがある。
冬はとても日が短く、冬至に至っては昼間の五時間くらいしか太陽を見ることができないが、その太陽に感謝し針葉樹林と魔獣そして魔獣の犠牲になった人々に祈りをささげるのだ。
王族が行くことになるため、本来であればロレッタも連れて行かなければならない。
だが、兄の死去以来、ロレッタは城から出していない。生きているということを知られたくなかったし、生まれてすぐの検査で魔力を持たないことはわかっていたので魔獣に出会ったら怖いというのもあったからだ。
だが、もう生きていることは知られているし、逆に堂々としたほうがいいのかもしれない。魔獣に関しては冬至の祭では警備が厳重になるからあまり心配することはない。
「ロレッタも行かせよう」
「本当ですか?よろしいのですか?」
「ああ。もう生きていることは知られているからそろそろちょっとずつ外に出していこう」
ロレッタも息がつまるだろう。
「はい。では準備します」
「よろしく頼む」
◇
ところがロレッタは駄々をこねだした。
「わたしはディアンと一緒じゃないと行かないわ」
「ですが、王女殿下。冬至祭は王族だけと決まっていますので……」
「いやです。ただでさえ最近は陛下がディアンをひとりじめなさっているのよ。わたしにもディアンを分けてほしいわ」
「殿下」
侍女長のマリアはもうお手上げだと思った。
「あ、待って。いいことを思いついた。わたしが陛下に手紙を書くわ」
『親愛なる陛下へ
もうすぐ冬至祭ですね。今年からわたくしも冬至祭に参加できるとマリアから聞きました。
参加できるのでとてもうれしいです。
ただし条件があります。
ディアンといっしょにいきたいです。
ディアンはわたしの教育係です。ディアンに教育してもらったことがちゃんとできているか確認をしてもらいたいです。
どうか陛下おねがいします。
あなたのめい ロレッタより』
その手紙を受け取ったデュランダルはロレッタがようやくこんなに文章を書けるようになったことを喜ぶとともに、シェリアを参加させざるを得ないなと心を決めた。
「マリア。ディアンを参加させるしかない。当日はロレッタの侍女として参加させてほしい。彼女には俺からいう」
「わかりました」
もちろんそのあとデュランダルはきちんとロレッタに返事を書いた。
ほめる言葉も忘れずに……。
◇
「かまいませんよ」
侍女として参加してほしいというと、すぐに了承してくれた。
王女という身分を持っていたことのある女性を侍女にするなどあまりにひどい話だと思ったが、あっさりと返事は返ってきた。
「ロレッタ殿下が立派に冬至祭を勤め上げるように今日から力をいれますわ。冬至祭のことを調べなくっちゃ。今から図書館へ行ってきますわ」
「あ、ああ」
王宮図書館へはシェリアは常に顔を出しているようだ。
本当に勉強熱心でびっくりする。
あれだけ熱心に調べて勉強したから今のシェリアがあるのだろうが…
なのに、兄と婚約者に裏切られ、他国に売られたのだ。
シェリアの心情はどうだったのかと思うと本当に胸が痛む。
ナダルで初めて会ったあの時自分は真摯に接することができていたのだろうかと今更ながらデュランダルは思った。




