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「ねえ。最後に教えて。あなたの雇い主は誰なの?」
「はぁ? そんなこと聞いてどうする?」
男は自分のベルトを外すのに必死らしい。
「なんとなく死ぬ前に知りたいと思って……」
そう言った時だ。
ベルトをはずしていた男が突然ドサッとベッドの下に落ちていった。
え?
「あー。悪いな。雇い主が誰かわからなかった」
は?
黒づくめの男が落ちたその後ろからさらに違う男が現れた。
この男も黒づくめだ。
何なの?三人目の男?
「えっと、それはまぁいいんですが……」
さっきとちがって敬語になってしまうのはこの男が放つオーラのせいかもしれなかった。
あるいは短時間の間に二人も自分のすぐ横で身罷ってしまったので感覚がおかしくなってしまったのかもしれない。
だが明らかにこの男はさっきの男と違う高貴なオーラを放っている。
そして自分に対する殺気はない。
「いいのか。そうか。ならばよかった。で?どうする?ここにはすぐに国王の弟が確認にやってくるぞ」
「え?」
あまりの怒涛劇に何が何やらわからなかったが、どうやら考えなければならないようだ。
もしかしたらこれからの立ち居振る舞い如何によっては助かるかもしれないということなのか?
「えーっとそうですね。でもわたしの屍がないと結局殺しにやってくると思うので……」
どうしたものかと思案していると、男が扉の前から女の屍を運んできた。
ナダルの侍女服を着ている。
「この女はこの男の仲間だ。君を殺すまで、この部屋に誰も近づけないように見張っていたやつだ。この女を君の身代わりにここにおいていけばいい。この女と服を交換しろ」
「え? 今ですか?」
ここですっ裸になって着替えろと?
「早くしろ」
そういうと男は後ろを向いた。
どうやらデリカシーはあるらしい。
仕方なく、死んでいる女の侍女服を脱がせ、自分のナイトドレスと交換した。
「着替えました」
「よし」
男が振り向く。
と同時に、ぐいっとシェリアはその男に引き寄せられ、男が突如パチンと指を鳴らすと突然ぐわんと世界が回転した。
「何っ?」
視界がぐわんぐわんと周りまるで体が上下左右高速回転しているような気持ち悪さがシェリアを襲う。
そして気が付くとナダル宮殿の上空に浮かんでいた。
「ええっ?!」
思わず声が出る。
「魔術師?」
「ああ。そんなところだ」
暗くてよく見えないが涼しげな顔をしているに違いない。
移動魔術を扱うなんてかなり上級魔術師だ。
しかも下に見える宮殿のシェリアがいた場所から火が上がっている。
燃やしてしまって、三人が誰なのかわからないようにするためだろう。
火も操れるのか。
これでシェリアは死んだことになるだろう。
「問題なさそうだ。とりあえず俺と行くか?」
こんな空中でそれ以外に選択肢はないのに聞くのか?と思いながら、首を縦に振る。
「俺につかまっておけ。今度こそ吐くことになるからな」
そう言うと、またぐわんと強烈な歪みが生じ、シェリアは何が何だかわからなくなった。




