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「ナダル王国とオルベリア王国の同盟は決裂したようです」


キルギアに戻って二週間後、ラインハルトが意気揚々と執務室に駆け込んできた。

先日調査させていた部下たちからはダンテ子爵が貴族たちにデュランダル討伐の声掛けをしたところ、貴族たちから総スカンを食らっていると報告を受けていたところだったので、二重にいい報告だ。


「よし!」


ギルティが拳を持ち上げている。


「さらにナダルのユーリーン王は最近寝室に篭りきりになっているともっぱらの噂。除霊を祈祷師に頼み、寝室にお札を山のように貼り付けているようで部下からの不信感につながっているそうです」


「やりましたね。ディアン様」


メルディスも手を叩いた。


「ユーリーンの憔悴ぶりからいくとそろそろ薬をニジェールが盛っているのかもしれないですね。ねぇ陛下?」


シェリアも嬉しそうにしている。


だが、自分一人がなぜか変な気分だった。

信用している部下がみなシェリアと笑っている光景がなんだかふに落ちずイライラするのだ。


なんなんだ。この気分は。


そんな気分のまま、午後の執務に入った。


「なぁ。ラインハルト。おれはどうしてイライラしているんだ?」


「は?」


書類から目を上げ、不思議そうにデュランダルを見上げる。


「今朝のナダルの報告は喜ばしいことのはずなのに、何かモヤモヤすると言うか……引っ掛かりがあって……」


「陛下?」


「こう……なんだ?イライラする」


ラインハルトは今朝の執務室の光景を思い浮かべてみた。


自分がナダルのユーリーン王のことを報告したら、確かに殿下だけがムスッとしていたなと……。


そしてその視線の先には……。


「陛下。それは恋です」


「は?恋?」


目を大きくして驚いている。


思えば、最近の陛下は表情が豊かになった。とラインハルトは思った。

昔を思い出すくらいに。


子どものころはギルティとメルディスと陛下と自分の四人で笑い転げたものだ。

それがいつのころからか陛下は笑わなくなった。


王族としての教育によるものというのもあるだろうが、自分たちの間では笑っていてほしかった。

だが、ずっと無表情だったのが最近…


「陛下はご存じですか?最近よく笑われているのを」


「笑う?」


「はい。笑うだけでなく、怒ったり悲しんだり、そんな表情を顔に出されているのですよ」


「え?」


王族が顔に感情を出してはいけない。

そう教育され、そして…


「俺が笑っているのか…」


ふっと自分のほほが緩んだのをそのときデュランダルは自覚した。


ああ。本当に笑っている。


「ははは」


思わず声を出して笑ってしまった。

いつから忘れていたのか。笑うことを…。


あの女性に裏切られたと思った時から…俺は笑わなくなっていた。


恋も封印していた。


だから忘れていた。

恋するということを。


「恋なのか?」


「ええ。ディアン様、いえ、シェリア様はすばらしい女性ですからね。僕たちも独身であれば……」


「は? 何を言ってる?」


ぎょっとして噛みついてしまった。


「え?いや、僕は妻一筋ですからそんなことは一切思っていませんよ。もちろん。ほかの二人は知りませんがね……」


しどろもどろに言い訳するラインハルトをしり目にデュランダルは思った。


そうか、俺は嫉妬していたのか。こいつらがシェリアと笑いあっていることに。


はは。


もうあきらめていた恋をするとは……。


俺が……恋か……。


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