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ナダルの王都からは前回と同じように移動魔術で関所まで、関所からは馬車でと移動した。

今ようやくキルギア国内に入って馬車の中だ。


それにしても……とシェリアを見る。

今は分厚いコートにつつまれているが、ナダルのあの民族衣装は何なのだ。

何を考えて女性にあんなものを着せている。


「あれでユーリーンがくたばってくれたらいいのですが……」


「そうだな。あれだけ脅せばもう同盟は結ぶまい」


「まぁでもまた結ぶようなそぶりを見せればもう一度亡霊になればいいだけ……」


「ダメだ。もう二度とやらないぞ。こんなこと」


かなりいらだっている。

なぜなんだ。


「は、はい。すみません。難しい魔術を使わせてしまい申し訳あり……」


「そういうことを言ってるんじゃない」


「はぁ」


「あんなはしたない服を……男の目にさらしたくないだけだ」


ぷいっと横を向いてしまった。


シェリアは困った顔をしてうつむいている。


だけど、シェリアが、ほかでもないシェリアが、あんな格好を人前に、しかもあの鬼畜の前にさらすなどあってはならないことだ。

ああ、むかつく。


無性に腹がたつデュランダルは、なぜなのか自分の感情を理解できないでいた。


とにかく腹が立つのだ。


と、ピクッとデュランダルの肌に反応があった。


「シェリア。魔獣だ。近くにいる」


「え?」


キルギアに入って魔獣に一度も出会わずに王都に戻れた前回のほうがめずらしい。

今回のように出会うのが普通だ。


魔力の強さを見るに低級だろう。


「馬車の中にいろ」


自分であれば魔剣でひとつきだ。

だが、シェリアが背筋を伸ばした


「いいえ。一緒に外にでます」


「何を言ってる?」


「この目で見たいのです。自分の国にいる魔獣というものがどういうものなのか」


「なめた者は魔獣にやられるぞ。それは教えただろう?」


「わかっています。ですが、今は陛下と一緒にいます。あなたならわたしを守ってくださるでしょう? ですから今しか確認する機会はありません」


しっかりというと、馬車からとともに降りてきた。


「いいか。ディアン。俺の背中の後ろから離れるな。相手は一体だけとは限らない。必ず俺がいいというまで気を抜くな」


「はい」


相手は左の方向からやってきた。低級魔獣のディノウルスだ。トカゲのような形のもので大きさは七歳の子どもくらいの大きさだ。


左に向いて剣をかまえるととびかかってきたディノウルスの首にすっと魔剣を這わせる。


「ぎゃ——!」と断末魔が聞こえ、血が飛び散り、魔獣は霧散した。


返り血はシェリアにも飛び散ったが、魔獣の霧散とともに血も霧散していく。


「ディアン。あと三体いる。お前たち、そっちを頼む」


一緒に来ていた部下に一体ずつをまかせ、デュランダルは一番大きな一体に太刀を浴びせる。


また断末魔とともにディノウルスは消えた。


「よし」


部下のほうの一体も霧散したようだ。


「跡形もなくなるのですね」


シェリアが背後で緊張を解く気配がする。


「ああ。魔獣は人々の感情の遺物だといわれている。苦悩や恨みなどの負の感情からできているらしい。だから倒せば跡形もなくなる」


「そうですか。そんなことは魔獣図鑑には載ってないことですね。世間の人々は誤解しています。魔獣は怖いものだとしか教えられませんから」


「そうだな。だがそれはキルギアの知恵でもある。魔獣の生態はこの地方でのみ語り継がれるものだ。他の地の者に魔獣の掌握方法を気取られないようにするためだろうな」


「なるほど。魔獣がただただ怖いだけでしたが、なんとなく……そうでもなくなりました」


「はは。だが……」


「わかっています。侮りませんから大丈夫です」


それでも魔力を持たないシェリアを一人で行動させるのは怖かった。

この先ずっと城に閉じ込めておけるわけでもないのに…


「帰ろうか。城に」


「はい」

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