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「俺はお前をナダルの王にしたい。ユーリーンを殺せ。この薬なら確実に殺せる」
「本当か?」
今ニジェールは反旗を翻すには危険すぎた。
やれるとすればユーリーンが自ら病死か事故死でもしてくれることくらいだが、それはなかなか無理だと思っていたのだが、キルギアの薬なら魔術で生成されているからばれないだろう。
「どうすればいい?」
「あら、ただでもらえると思ってるの?約束は口だけじゃ頼りないのよ。契約書にサインをしてもらうわ」
「お前が王になればキルギアを攻めることはしないという契約書だ。魔術がかかっている。破れば死ぬぞ」
びくっとニジェールは肩を震わせたが、じっくりとその契約書を読んでからニジェールは頷いた。
「わ、わかった」
そして震える手で署名した。
「俺はナダルと戦争をしたいわけじゃない。キルギアを守れたらそれでいい。それ以上を望みはしない。ではこの薬をやろう。この薬の中にユーリーンの髪を一本入れるんだ。解けるまで一日置く。その後、毎日一滴ずつ食事に混ぜろ。
必ず一年の間に発狂して死ぬ」
「ああ。なんとか潜入させよう」
秘密の会合を終えた後は秘密裏にその場所を出ると二人は今度は王都にとんだ。
ニジェールには薬を渡したが、あの臆病者が行動にすぐ移せるかというと微妙だった。
だからこっちで先手を打つのだ。
ユーリーン王も実はかなりの臆病者で、兄を殺したはいいものの、悪霊を恐れ、毎日のように祈祷師に祈祷させ、自分の周りを清めている。
恐れるなら殺さなければいいものをと思うが、そのあたりはよくわからない。
だからそれを利用するのだ。
もっともっと恐れればいい。
二人はその日のうちに王都まで移動魔術で飛び、夜遅くにユーリーン王の部屋に侵入した。
部屋の中はかなり厳重に警備が施されており、ベッドの真上に祈祷師が書いたであろうお札が張られている。
本当に恐れているのだ。兄の霊を。
あきれ顔で顔を見合わせていると女を連れてユーリーンが入ってきた。
とても若い女だ。
「あっ……おやめくださいませ。王様」
カナリアのような声で女が言うと、ユーリーンはにやにやと笑いながら女の豊満な胸に顔をうずめている。
「もうすぐ魔獣の国も手に入る。国王の評判が悪いらしいからな。これで帝国をけん制できる」
くっくっくっと狂気を含んだような笑い声を立てた。
「魔獣を支配できたらもっとお前を満足させてやろうぞ」
さらにまた狂気の笑い声をあげながら、女の胸を揉みしだいているのを見ておぞましいと思っていると、今だとデュランダルが合図をしてきた。
シェリアは頷くと意を決して声を出した。




