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「あの……ひとつよろしいでしょうか?」
シェリアが口を開いた。
「なんだ。ディアン。言ってみろ」
「おそらくですが、ナダルの狙いは、リストリア帝国ではないでしょうか?」
「帝国を?」
「はい。帝国が唯一恐れる国がキルギアです」
「帝国が?」
デュランダル含め、三人ともその考えはなかったようだ。
だが、オルベリアというほかの国で国政を担っていたからこそわかること。
「帝国には魔獣を掌握するすべがありません。今まで属国だったキルギアの王国としての独立を認めたのも、キルギアを恐れているからです。魔獣をあやつるキルギアは帝国にとっては脅威なのです。事実、北方の属国は小国ばかりではありますがシリア王国はじめ、他二国が取り込まれましたし、先日カルザス王国との戦いにも勝利し、領地は拡大する一方です。何百年も栄華を誇る帝国ではありますが、その唯一の脅威をナダルは手に入れたいのでは?」
三人はじっとその話に耳を傾けている。
彼らは多大な魔力を擁しており、魔獣と共存するという少し現実とかけ離れた場所で生活しているから、魔力をもたない人間同士の姑息な争いの話になると少し疎いようだ。
「ナダルにはお金が有り余るほどあります。そしてフォシル燃料をもとにおどせば世界はすべてナダルの言いなりです。ですが帝国だけはナダルはどうしようもない。帝国はフォシル燃料を自国で産出できますから。ナダルから見て帝国をはさんだ向かいにあるオルベリアに同盟をもちかけたのも帝国に対する包囲網を築きたかったからに違いありません。おそらくナダルは帝国から大陸の主導権を奪いたいのです」
三人とデュランダルは押し黙っていた。
「そうかもしれない。我々は、あまりに世界とかけ離れた場所にいる。だから、世界情勢に疎い。それは事実として受け止める必要がある」
そのせいで兄は死んだのだとデュランダルは思った。
人を疑ったり信じたりというような小さな感情の流れにキルギア人はなかなかついていけない。ある意味感情がとてもわかりやすく単純なのだろう。
シェリアがいてくれてよかった。
「だからこそシェリアのような人物が我が国には必要なのだ。シェリアの言う通りだ」
デュランダルがまっすぐにシェリアを見てシェリアに頭をさげた。
「シェリア。ありがとう。キルギアに来てくれて」
「陛下っ!おやめください。わたしはそんなこと」
だが、ほかの三人も続いて頭をさげていく。
「オルベリア王女、シェリア殿下。我が国の国民となってくださり、感謝いたします」
まぁ、そんな……。
あまりのことに驚きしかない。




