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どこかの丘の上だろうか。遠くのほうに光の集合体が見えるのであちらが王都だろう。

反対側に見えるのが真っ暗なのであれが魔獣の森か。


「ここがキルギアの王都だ。君にも見ておいてほしかった。キルギアの民になるのだろう?」


「はい。もうなったつもりです」


「ふふ」


笑った。

最近とてもデュランダルが笑う顔に出会う気がする。


「ラインハルトが言っていた。君が話しているときにキルギアのことをわが国といったのを聞いたそうだ。それからラインハルトは君を認めたようだ」


え? 我が国なんて言ったのだろうか?

まったく記憶にはない。


「そんな言い方をしていたなんて我ながらびっくりです。言葉は心を反映するというのは本当なのかもしれないですね」


「我が国と思ってくれているならあの森のことも知っていなければならない。あれが魔獣の森だ。あそこは魔獣の住処だ」


デュランダルは前方の真っ暗な場所を指さした。


「はい。資料は読みましたが、目にしたのははじめてです」


「魔獣を見たことはあるか?」


「ありません。見てみたいとも思いますが、少し怖いです」


「魔獣は…世間一般には知能が低いといわれているが、実はそんなことはなくあの森を守っているんだ」


「え?」


魔獣に知能がある?


「あの森は彼らが守るべきものがあるからあそこに住んでいる。基本的に人を自ら傷つけることはしない。あの森を荒らされたら怒って人々を傷つける。低級魔獣は別だ。奴らは動きたいように動き、出会った生き物を気が向けば傷つける。だが中級以上の魔獣はむやみやたらと人間を攻撃はしないんだ。他の国では知能が低いといわれる低級魔獣の噂だけが広まっているんだ。中級以上は頻繁に人の前には現れないからな」


「そうなんですね。知らないことばかりです」


魔獣はこの国独特のものだ。

ほかの国にはめったに出没しない。

だから、噂だけが先行しているのだろう。


「覚えておいてくれ。魔獣に出会ったらまずそいつが低級かどうか判断し、低級であればすぐに俺を呼べ」


そして耳たぶをすっと触られた。


「ピアス?ですか」


「ああ。ロレッタにもつけさせるがこのピアスを触れば俺にわかるようにしてある。必ず呼ぶんだぞ。いいな」


「はい」


低級魔獣と中級魔獣か…

明日の王女との授業は魔獣図鑑にしなければならない。

わたしももう一度見直さなければ。



それにしても


「とても美しい景色です。本当にあの森に魔獣がいるのかと…星が綺麗すぎて…」


「ああ……北の大地は空気が澄んでいるからな」


デュランダルはそのまま森の方へしばらく視線を向けていた。


「そろそろ戻るか。髪の色を戻したほうがいい」


「はい」



そして馬車の中へ入って聞かされて驚いた。


髪色や瞳の色を変える魔術をずっと行使したままにすると頭痛や体調不良が起きると言う。

だいたいは24時間が限度だが、人によったら8時間くらいしたら頭痛が始まる人もいるらしい。


魔術についてはわからないことばかりだ。


「だが君は大丈夫そうだな。俺の魔力が体に合うのかもしれない」


「合う合わないがあるのですか?」


「そうだ。合わないと最初から頭痛がしたりする」


「へえ」


それにしても今日は楽しかった。久々の外だったからかな。


「陛下。楽しかったです。今日はありがとうございました。いい休暇になりました」


座ったままだがお辞儀をするとデュランダルはまたふふっと笑った。


「よかった、また企画しよう」


「嬉しいです」


すごい笑うわね…今日の陛下は。

あ、そうだ。


「陛下。申し上げておくことがありまして…」


「なんだ?」


「もうすぐ王女殿下が陛下にお手紙を書かれると思います」


どうか真摯に読んであげてほしいと言おうとしたが杞憂だったようだ。


「本当か? それはすごい。十歳なのに何の教育もされていなくて最初は驚いたんだ。俺は兄が死んではじめてロレッタに会ったからな。だが、シェリアに頼んで正解だったよ。……楽しみにしている」


嬉しそうに言う。


「わたしから事前に聞いたことは内緒でお願いしますね」


「わかっている」


「あと、王女殿下に遊び友達を見つけてあげられないでしょうか?」


「幼馴染ということか」


「あの年でおひとりで過ごすのはとてもつらいでしょう。陛下の側近の方のご令嬢などで歳が近い方がおられませんでしょうか?」


「そうだな……」


顎に手を置いて考えていたが、


「よし、考えてみよう」


「はい。よろしくお願いします」


そのまま会話はつきず、気づけば王城に到着していた。


物足りない気がする。

もっと話していたい。


そう思ったけれど、シェリアは大きくお辞儀した。


「今日はありがとうございました。楽しかったです」


「ああ。また行こう」


デュランダルは笑みを浮かべて去っていった。

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