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そうなのか……。知らなかった。
魔獣には今まで生きてきて出くわしたことはない。
ただただ、知能の低い、動物と同じような形をした魔術を扱う獣で人間に危害を加えたり殺したりするということしか知らない。
でもキルギアに生きるということは魔獣と共生するということなのだわ。
「君には知っておいてほしいのだが、実はロレッタにも魔力がないんだ」
「え? 陛下の血をひかなかったのですか?」
「ああ。そのようだ。兄には魔力があったが、王妃のほうに魔力がなかったからだろうか?」
「え? 兄?」
「ああ。兄の妻は帝国の属国であるシリア王国から迎えたからな」
待って。何を言ってるの?陛下は
「あの……つかぬことをお伺いしますが、ロレッタ王女殿下は陛下の娘さんですよね?」
「ああ。そうだ。先王である俺の兄の実娘だ」
「——ええ? ええええっ!!!」
あまりのことにおいしいサンドイッチを落とすところだった。
「陛下の娘さんではなかったんですか? つまり、あなたのです」
「俺? 俺には娘などいない」
ゴホゴホとむせこんでいる。
「結婚していないのにどうして娘ができるんだ?」
「いやですから、王妃がどこにいらっしゃるのかと思っていたんです。てっきりお亡くなりになったか、逃げられたのかと……」
「俺は、戦争に明け暮れていたんだ。結婚などしている暇はなかった」
「そうだったんですね」
言いながらほっとしている自分がいる。
この感情は何なのだろう?
陛下が結婚していなくて、ロレッタが陛下の実娘じゃなくてよかったと思ってるなんて……。
「でも、ということはロレッタ殿下はご両親を亡くされているということですか?」
あんなに小さいときに両親を亡くしているなんて。つらかったろう。
「ああ。そうだな。本人は城にいたから何も知らないが……本人には父は死んだとだけ伝えてある」
「そうですか……」
ますますちゃんと面倒を見てあげないと。
「よし、次の食べ物だ。甘いものを食べたくないか?」
「あ、賛成です。あまくてあったかいもの」
「よし、探すぞ」
それから二人で屋台をそぞろ歩いて、満腹になって馬車のところまで戻ってきた。
そのまま、満腹のおなかをかかえて、馬車に揺られていると眠たくなってくるものだ。
馬車の揺れのせいもあってウトウトと船をこぎ始める。
はっと気づいたときには馬車の天井が見えていて、驚いてシェリアは飛び起きた。
「も、申し訳ありません」
「ああ。起きたのか。別によかったぞ。疲れているんだろう?」
「そ、そんなわけには……。陛下の膝の上など……」
「別にかまわん。それより着いたようだ」
あたりはもう暗くなっていたが、馬車からデュランダルに従って降りると、満面の星空が広がっていた。
「うわ———」
思わず声が出る。
「どこですか? なんですかこれ? 魔法の世界みたい」
「残念だが魔法でもここまで綺麗にはつくれないな」




