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「陛下。本当に大丈夫なんですか?あの……ディアン様にあそこまで任せて?」


午後からの執務を終えたところでたまらずと言った具合にラインハルトが声をあげた。


文官たちはもう帰ってしまっている。今日も残業をさせてしまった。


「ああ。問題ない。事実、ロレッタともうまくやっているじゃないか?」


誰にもなつかなかったロレッタがシェリアには懐いているのだ。

教育も受けるようになったらしく、先日から一緒に食事をしているがかなりうまくフォークとナイフを使いこなせるようになっており驚かされた。


「それに彼女のここでの仕事を見ればわかるだろう? 早さから正確さまで誰にも引けを取らない」


彼女の手腕には驚かされるばかりだ。

賢い女だとは思ったがあそこまでとは…

よくオルベリアが手放したものだ。


「ですが……あの姑息な国オルベリアの王女ですよ」


オルベリアは先王のころものすごく姑息で、国同士の約束事も平気でやぶるようなそんな国王だったと聞く。


「ああ。だが彼女はもう死んだことになっていて行く場所がないんだ。ここに骨を埋める意外に生きる道はない。それに彼女は姑息ではない」


「そうですね。申し訳ありません」


しゅんとして俯く。


自分を思って言ってくれているのだ。

だからラインハルトは間違っていない。


「ラインハルト。今日も遅くまで悪かったな。夫人にもよろしく伝えてくれ」


「は、はいっ!」


ラインハルトが帰るとデュランダルは執務室でその長い足を伸ばし、ふうっと一息ついた。


何から何までやることも考えることもいっぱいだ。


魔獣狩りと東の国境の戦争に明け暮れていた自分の魔導騎士としての人生に突然終止符を打たなければならなくなったのはちょうど一年前、東の国境を攻めてきたカルザス王国に勝利した瞬間だった。


その一年前に公国から王国となったキルギアの初代国王である兄が死んだという報せが届いたのだ。


国王と言ってもまだ王国になったばかりの不安定な小さな国。

国王がずっと城に詰めていられるほどの安定感はない。

今回も兄はナダルとの協議のために王都を開けていた。


ナダルが交渉を求めてきたからだ。

ナダルの北部に最近魔獣が出没し始めたため、魔獣狩りを任せる代わりにナダルのフォシル燃料の流通量を増やすという協議だ。


キルギアは最近帝国から抜けた属国を何国か領土として吸収しておりフォシル燃料はいくらあってもありすぎることはないのだ。


だからと信用したのが運の尽きだった。


あのナダルを簡単に信じてはいけなかった。

どうやら兄を殺して国を混乱させ、キルギア自体を奪おうという魂胆だったようだ。

魔獣という危険がある地域ではあるが、最近ギルギアの針葉樹林の下に魔晶石鉱山があることがわかりそれが喉から手が出るほど欲しかったらしい。

だが、魔獣がそれを守っている。世間は魔獣には知能がないと思っているが違う。

彼らは魔晶石のありかを知っていてそれを守っている。

人間はそのおこぼれをもらえるに過ぎない。

その魔獣を怒らせたらどうなるかなんてあの平和ボケしたナダル王には通じなかったようだ。


得てして兄は殺された。

しかもナダル軍か攻め込んできた。


デュランダルは悲しむ暇もないままにナダル軍と戦わなければならず、当然魔獣にやられて撤退することになったナダルが去った後は国王として即位し、バタバタとしている間に一年が経過してしまった。


だが、ナダル王を許せるわけがない。

大好きだった兄を……だまして殺した。


許せない。


そうして、ラインハルトに国を任せ、ナダルに秘密裏に入国したわけだ。


近々、オルベリア王国という小国から王女を迎えるという。

その初夜を狙えば始末するのは容易い。


というわけで初夜の夜に花嫁の部屋に忍び込んだ。


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